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夢の中  作者: 星凪 怜
9/12

出逢い③

レストランは『ハワイフェア』らしく、メニューは、ハワイらしいメニュー…

と言っても、ハワイには言った事無いけれど…


『おすすめを』

彼が言う。

『承知いたしました』


私は、とりあえず、ナイフとフォークは使える。

それだけでも助かる。


『名前…聞いてもいいかな?』

彼が、小さな声で言った。

『小野…みゆき…です』

『みゆきさん…可愛い名前だね。

僕は…知ってるよね』

『はい。ピアニストのSHIKIさん…ですよね』

『そう。でも、本名は、櫻井佳樹(さくらいよしき)。28歳』

『28?もっと若いかと思っていました』

彼は、クスッと笑った。

笑顔が綺麗。


料理が運ばれてきた。

ハワイフェアだからなのか、ハイビスカスの花が添えられている。

『綺麗…』

見とれてしまった。

多分、人生で最初で最後の帝国ホテルランチ。

『食べましょう』

『はい』


私達は、色々な話をした。

音楽、歌舞伎、能、絵画…趣味は同じだったけれど、彼の方が詳しくて、私は『そうなんですか?』ばかり言っていた気がする。


食べ終えて、紅茶が運ばれてきた。

『また…会えますか?』

『…』

返事が出来なかった。

素敵な人だけど…会ったばかりだし…

『僕は、顔が知られてるから、ホテルから出られません』

そう言って彼は、ポケットからメモ帳を出して電話番号を書き始めた。

『待ってるから』

私は、それをしばらく見て…

『スマホ、持ってきてますか?』

『スマホ?持ってきてるけど…』

『フリフリしましょう!』

自分のテンションに驚きながらも、彼とライン友達になった。

『大胆だね』

また、素敵な笑顔になる彼。



それから、毎日ラインをし、毎日ディナーに誘われた。

私と彼の距離が縮まるのは早かった。

でも大人の関係にはならなかった。

男と女…と言うより、人と人っていうような関係。


そうして、私は彼と一緒にいる事を選んだ。

アパートを出て、仕事を辞めて、帝国ホテルに引っ越した。

彼の部屋は、スイート。

私はホテルでの同棲生活を始めた。


『セレブだなあ…』

帝国ホテルに来てから、口ぐせになってしまった。


彼には、執事のようなマネージャーがついている。

毎朝、予定を言いに来る。


私がホテルに引っ越してきた事は、初めは驚いていたけれど、今は、普通に接してくれる。


彼は、私と出会ったコンサートの後、2回のコンサートをし

3回、有名人、セレブとのパーティーに行った。

彼は私を誘ったけれど、マネージャーさんに止められた。

『国内では、マスコミに気を付けなければいけません』


彼は、渋々、ひとりで行ったが、すぐに帰って来た。

『今まで、パーティーは楽しかったけれど、今は、みゆきがいないと寂しい』

そう言って、捨て犬のような目をする。


何も予定の無い日は、歌舞伎を観たり、美術館に行った。

マスコミ対策として、行き帰りは別。

歌舞伎の時は、偶然隣になったふりをし、気がつかなかった事にする。

美術館は、彼と付かず離れずの距離で観賞した。


こんな毎日で、有名人との付き合いが難しい事が分かってきた。

そうして本人も大変だということも。


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