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夢の中  作者: 星凪 怜
7/12

出逢い①

青い空に、青い海。

海辺のホテル。

テラスから見える砂浜は、プライベートビーチ。


海風が、さわさわとカーテンを揺らす。

その度に、潮の香りが部屋に満ちる。


私は、ベッドに座って、潮風を感じていた。

彼は、ベッドの中で、丸くなって眠っている。


昨夜はマリーンのライブ。

ライブ後に、スタッフさん達と、ホテルのバーで飲んでいた。


部屋に戻ろうとした私を、彼は引き止めた。

『ここにいて。見える所に』

初めは、彼の近くに座っていたけれど、なんとなく居心地が悪くなり、隅の席に移動した。


彼はお酒に弱い。

お酒より、おしゃべりするタイプ。


彼はマリーンやスタッフと楽しげに笑っている。

軽く酔ったままで、バーのピアノを弾くこともある。


部屋に戻りたいな。

私の英語力は、幼児並みだし…


深夜を過ぎた頃、ようやく皆が部屋に戻り始めた。

『どうして隅にいたの?探したよ』

と、子供のように聞く彼。

『英語…分からないし…』

『そんな事?大丈夫だよ。聞いていれば自然と分かるようになるから』

彼は、私の頭を撫でた。


私のバッグから、カードキーを出して、ドアを開ける。

彼は、真っ直ぐにベッドに向かい、倒れるように眠ってしまった。

『おやすみ…』

微かな声が聞こえた。

『おやすみなさい』

私は、そう言って、シャワーを浴びて、冷蔵庫から、ミネラルウォーターを出して飲んだ。



これは…夢。

だって、私なんかが彼と付き合っている事自体、嘘のような気がする。


彼と出会ったのは、数年前。

友達に誘われたコンサートだった。


『イケメンピアニストを見に行かない?』

『聴きに行く。じゃないの?』

『クラシックだよ。眠くなるし~。でも、ピアニストは超イケメンなの。

取引先に頼んで取ってもらったチケットだよ!

タダなんだから』

そんな訳で、友達とコンサートに行った。


本当にイケメンらしく、あちこちから

『キュン死するよ~』

『そこらの男性なんて雑草』

『私もピアノを再開しようかな』

などと聞こえてくる。


貼ってあるポスターには、彼の手もとしかない。

グッズのCDにも、後ろ姿や手もとだけ。


顔出し不可?

そんな事を考えながら、席についた。



『…ヤバい。本当にイケメン』

演奏中に呟いてしまった。

『しーっ!』

隣のおばさんに睨まれた。


コンサートが終わったとたん、友達が聞いてきた。

『どうだった?本当にイケメンだったでしょ』

『うん。イケメンの中のイケメン?』

『彼を見た人は、彼氏が出来なくなるらしいよ』

『どうして?』

『他の男性が人に見えなくなるから笑』

この言葉を聞いて笑ってしまった。


『じゃ、またね~』

ホールの前で、友達と別れた。


駅までの道を歩いていると、声をかけられた。

『すみません、帝国ホテルはどう行けばいいですか?』

『帝国ホテル…?』

新手のナンパ?

そう思いながらも

『歩いて行くんですか?電車かタクシーの方が…』

と言うと、彼はもう、タクシーを止めていた。


『お礼に、何かおごらせて下さい』

半ば強引にタクシーに拉致された。



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