入院
友達とコーヒー屋さんに行ってから半月が過ぎた頃、また台風が発生した。
『え~。またぁ?』
自分の体調に不安を感じる。
そうして、その感じは的中…と言うより、思ってもいなかった不調になった。
台風は明日の午後に近づくらしい。
朝から雨。
少し体がダルいけれど、とりあえず動ける。
夜になって雨が強くなってきた。
気持ちがザワザワして眠れないので、睡眠導入剤を飲む。
深夜3時頃に目が覚めた。
雨は強くなっている。
ふと
『この雨の中、車で海に突っ込んだら死ねるかな?』
と思いが浮かび、同時に、自分の考えにハッとした。
そうして、また怖い考えが浮かんでくる。
『この部屋に火をつけようか』
『飛び降りたら痛いよな…』
自分の中の、別の自分が、狂ったように笑っている。
死を望んでいる、もう一人の狂気な自分。
まるで死神。
『思っても、死ぬ勇気…無いんだよ…』
つぶやくと、真っ赤なオーラに包まれた、もう一人の自分は、私を睨み付けて、また誘う。
『薬…全部飲んでみたら?』
『首を吊ったら逝けるよ』
また狂ったように笑う。
私は
『痛いのも苦しいのも嫌。戻ってこられないのも嫌』
強く言うと、もう一人の自分は、スッと消えた。
次の診察日に、この話をした。
『入院…しますか?』
『入院?』
『本気で死ぬとは思いませんが、万が一という心配もありますからね』
もう一人の自分のせいだ。
いや、もう一人の自分じゃなく、自分の気持ちなんだ。
私は、入院の準備のために、一旦部屋に戻り、友達にラインを入れた。
そうして病院に戻り、入院した。
日数は未定。
もしかしたら、休職中、ずっと入院になるかもしれない。と言われた。
コンサート…行けないかもな。
外出許可…出るかなあ?
病室は4人部屋。
昼間だけど、皆、寝ている。
『昼夜逆転の患者さんもいるから、もし不都合があったら言ってね。部屋を変えるから』
背の高い看護師さんが言った。
『はい』
私は、窓際のベッド。
病院の駐車場と、ショッピングモールが見える。遠くには高速道路が見える。
東側だから、夕焼けは見られないけれど、朝焼けを見ることができる。
夜には、高速道路を走る、車のライトが見える。
『なんかホテルみたい』
夜に、窓のカーテンを閉めるときに、自分の所だけ、少し開けておいた。
ベッドに横になったまま、橋や高速道路を通る車のライトを眺める。
頭の中には、中島みゆきさんの曲が流れている。
入院初日は、ゆっくり眠れた。
深夜に、誰かの足音を聞いた気がするけど…その人が、昼夜逆転の人かな?
入院3日目。初めての日曜日。
友達がお見舞いに来てくれた。
『大丈夫?』
『なんとかね』
『一階のスタバに行く?』
『部屋を出ていいの?』
『看護師さんに言ってく』
私達は、一階のスタバに入った。
スタバの外には、いくつかのテーブルがあり、病院じゃない雰囲気を出している。
同じ階のレストランは、オーガニックレストランらしい。
『こんなスタバに入ったのは初めて』
『私も。診察日は、自販機で買ってたから』
そこで、友達に、もう一人の自分の話をした。
『ヤバくない?』
『うん。気圧のせいで、自律神経ボロボロだよ』
『ゆっくり休むんだよ。スタバ代、おごるから』
友達は笑顔で言った。
『ありがとう』
温かいコーヒーが美味しい。




