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其の零 地獄への送り人
ここは――、平安時代によく似た文化を持つ、宸世と呼ばれる世界。
中でも一番の特徴として挙げられるのが、不可思議で強大な能力を持った化け物が数多く存在しており、人間社会においても認知されている事であろうか。[もののけ]と呼ばれる彼らは、良きにしろ悪きにしろ、人々の生活に多大な影響を及ぼしてきた。
そして――、いつの時代も、はたまた異世界であるここでも、悪行は尽きる事がない。むしろ、強力な[もののけ]達が絡んでいる分、質が悪いのである。
所詮、この宸世も弱肉強食。か弱き者は、ただただ食い物にされて泣き寝入りするしか、術は無いのだろうか。今日もまた――、晴らせぬ恨みを抱きながら、死んでゆく。
しかし――、悪が栄えた試しはない。地獄への送り賃は、恨み次第。
闇夜にうごめき、悪を絶つ。
そんな彼らを――、おくりびと――、と呼ぶ。