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少し忙しかったため、読み直しをしていません。
誤字脱字、人名間違いが散見されるかも……。
申し訳ありません。
「ところでアリス様。そちらの方は? 人族ですよね?」
先ほどまでアリスと話していた兵士が、真剣な眼差しでセフィを見つめてくる。威圧感すら覚えるその視線に居心地の悪さを感じていると、アリスがそっとセフィを隠すように動いた。
「私の大切な友達です。ギルドマスターからは許可をもらっています」
「なんと! お友達ですか!」
「はい。そうですけど?」
「…………。いたんですね、お友達」
「いい加減怒りますよ?」
アリスがこの兵士に対して気を許しているのは会話を聞いているだけでよく分かる。兵士はおどけたように肩をすくめ、アリスはあからさまにため息をついた。
「では改めまして、魔王様がお待ちです。どうぞこちらへ」
開門! と兵士が叫ぶと、ゆっくりと門が開き始める。ついに魔族の国だ。セフィは緊張しながら門が開くのを待つ。やがて門が大きく開かれて、その街並みを見て、
「始まりの街とあまり変わらないね……」
「そうですね」
魔族の街といっても、始まりの街と大きく変わるところはなかった。街そのものの雰囲気が暗いといったこともない。もう夜遅いというのに、いくつか開いている商店からは声が漏れ聞こえてくる。その声も、人のそれと大差なかった。
「さあ、どうぞ」
兵士の先導に従い、アリスと共に歩いて行く。遠くに見える城へと向かう。
魔王城へと。
・・・・・
ここに来るのは三度目だ。最初は魔族の城と聞いて萎縮していたものだったが、いざ魔王本人と会ってみると、人族の王とそれほど変わらなかった。むしろ魔王の方が気さくだったと思う。だがそれは会ってみて初めて分かることだ。
振り返ると、表情を硬くしたセフィが、城を見上げて呆然と立ち尽くしていた。こういった城は始まりの街にはないので、物珍しさもあるだろう。だがやはり、魔王と会うとなると緊張すると思う。セフィの目には、どこか怯えの色があるような気がした。
「アリス。戦いになったりなんて、しないよね?」
セフィの問いに、アリスは微笑んで頷いた。
「あり得ません。魔王様はとても優しい人ですよ」
「ふうん……。それはそれで、期待を裏切られるような気もするね」
どこか複雑そうな表情で、セフィはそう小さくつぶやいた。
兵士に従い、セフィと共に城の中へと入る。高級品だと分かる調度品が飾られている廊下を進み、階段を上り、奥へと進む。普段ならこの城で働く者もいるのだが、今は夜遅い時間のためか、見回りの兵士しかいない。
やがて、二人は一際大きな扉の前まで案内された。
「もしかしなくても、謁見の間ってやつ?」
「はい。もしかしなくても謁見の間です」
こくり、とセフィの喉が鳴った。やはり緊張しているのか、表情は先ほどよりも強張っているのが分かる。そのセフィの手を握ると、セフィは驚いたように目を瞠った。
「大丈夫ですよ。魔王様は優しい人ですから」
「それはさっきも聞いたけどね……。そんなにひどい顔してたかな」
セフィは、情けないなと苦笑すると、両手で頬を叩いた。驚くアリスへとセフィが笑顔を迎えてくる。
「大丈夫。行こうか」
「はい」
アリスも笑顔を返して、扉へと向き直った。
扉がゆっくりと開かれる。少しずつ、奥の部屋が見えるようになっていく。
そこはとても広い部屋だ。以前見た村の広場よりも広く、天井も高い。クルーゼが最大まで巨大化することも可能だろう。部屋の奥には豪奢ないすがあり、大柄な男が一人、そこに座っていた。黒を基調した服で、金の刺繍が施されている。髪は長い銀髪で、額には小さな傷があった。
「あの人が、魔王様?」
セフィが聞いて、アリスが頷く。
「はい。ちなみに額にも目があります」
「へえ……。心の中が読めたり?」
「いえ、ただの目だそうです」
「あ、そう」
何故だろう。セフィが肩を落としている。アリスは首を傾げながらも、謁見の間を進む。中程まで歩いたところで、いすに座る男が目を開いた。じろりと、アリスたちを睨み付けてくる。アリスはその場で立ち止まると、片膝をついた。遅れてセフィも、慌てたように片膝をつく。
「遅かったな」
魔王の声。とても低く威圧感があるが、不思議と不快ではない声。アリスは丁寧に頭を下げた。
「申し訳ございません。ですが……」
「分かっている。約束は明日の朝までに、だったからな。責めているわけではない」
魔王が立ち上がり、こちらへと歩いてくる。アリスが黙って待っていると、魔王はアリスの目の前で立ち止まった。立て、という魔王の言葉に従い、立ち上がる。魔王はアリスを一瞥すると、すぐに隣のセフィへと視線を移した。興味深そうに、セフィを見つめている。
「ふむ。クロダから聞いているぞ。確か、セフィと言ったな」
「あ、はい……。冒険者のセフィといいます。よろしくお願いします」
セフィが頭を下げると、魔王は薄く笑って手を振った。
「良い。楽にしているがいい。俺もクロダと似たような立場だからな」
アリスにはよく意味が分からなかったが、どうやらセフィには通じたらしく、目を見開いて固まっていた。何かしらの組織のまとめ役という意味合いだろうか。しかしどうも、別の意味があるような気がする。所詮ただの勘ではあるが。
「クルーゼも元気そうだな」
未だアリスの頭に上にいるクルーゼへと魔王が言うと、クルーゼは薄く目を開けて、しかし何の反応も示さずにまた目を閉じた。失礼な反応だと本来なら憤るところだが、魔王は苦笑するだけだ。
「さて、ここで話をしていると疲れるだろう。場所を移そう」
お前は下がれ、と魔王がセフィたちの向こう側へと言う。扉の側で控えていた案内役の兵士は恭しく頭を下げると、静かに退室して扉を閉めた。完全に扉が閉まったことを確認してから、魔王は踵を返した。歩き出した魔王にアリスとセフィが続く。
「えっと……。どこに行くの?」
小声で問いかけてきたセフィに、アリスはすぐに答えた。
「魔王様の私室です」
「なんで!?」
「誰の目もなく気安く話せるだろう?」
会話が聞こえていたのだろう、魔王が言う。笑いを堪えているようで、小さく震えていた。
「いやいや、アリスはともかく、どう考えても私は不審人物ですよね? 怪しいでしょう?」
「クロダが認めているのなら問題ないだろう」
「あー……。え? 魔王様ってあっちの人ですか?」
壁|w・)ちょっとお仕事がばたばたしているので、月曜も休むかもしれません。




