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AIアリスの旅記録  作者: 龍翠
第四話
37/51

 ろぐあうと、というものはよく分からないが、とにかくミカを最後まで探さなかったことに変わりはない。アリスはさらに口を開こうとして、


「アリスお姉ちゃん。もういいよ」


 他でもないミカに止められた。ミカを見てみれば、クルーゼを抱きしめながら眉尻を下げて、しかしそれでも微笑んでいた。


「こうしてお兄ちゃんに会えたから、私はそれでいいよ。それに、アリスお姉ちゃんともお友達になれたし」


 だから十分、とミカは微笑む。心が広いな、と感心しながら、アリスはミカの頭を撫でた。ミカは嬉しそうに笑いながらそれを受け入れる。妹ができたみたいで、やっぱりかわいい。ミカの頭を撫でながら、アリスはクールに向き直った。


「クールさん」

「はい!」


 クールがびくりと体を震わせ、姿勢を正す。何をそんなに怯えているのだろうか。


「ミカちゃんがこう言っているので、私からはこれ以上は何も言いません。ですが、ちゃんと一緒にいてあげてください。寂しくさせちゃだめですよ」


 所詮、アリスは部外者だ。強制することなどできない。それでも、肉親が側にいるなら、やはり一緒にいた方がいいと思う。

 クールは、分かった、と神妙な面持ちで頷いた。




 ワープポータルで帰っていくクールとミカを見送って、アリスはようやく一息ついた。随分と時間を使ってしまった。早く仕事に戻らなければならない。

 ちなみにミカにも指輪を渡してある。そろそろ数が少なくなってきたので、また作らなければならないだろう。そう考えながら、アリスはダンジョンの入口となっている建物の中に戻った。

 片付けを終えたセフィがアリスを待ってくれていた。お疲れ、とアリスへと微笑んでくる。その笑顔を見て、セフィのことを長い時間拘束していたことに気づき、慌てて頭を下げた。


「すみません、セフィさん。すっかり長い時間手伝ってもらってしまって……」

「気にしなくていいよ? 好きで一緒に来ただけだしね。なかなか楽しかったし」


 おいで、とセフィが手を前に出すと、クルーゼがセフィの胸に飛び込んだ。かわいいなあ、とクルーゼの頭を撫でるセフィ。クルーゼも嫌そうな素振りは見せず、どこか嬉しそうに受け入れていた。


「それにしても、アリスがここまで怒るとは思わなかったよ。いやあ、珍しいものが見れたね」


 いたずらっぽく笑うセフィ。アリスは今までの振る舞いを思い出して、顔が熱くなってきた。確かに、今思い返せば正気を疑うことをしていた気がする。始まりの街で待っていた時はともかく、ここに来てからは少しやりすぎたと思う。クルーゼにも働いてもらったので、何かご馳走を用意しなければならないだろう。クルーゼの好きなお肉でも用意しようか。


「付き合わせてしまってすみません」


 目の前に友人に頭を下げると、セフィは気にしすぎだよと手を振った。


「あそこまで怒ったのが意外だっただけだからね」

「そんなに意外でした?」

「うん。アリスは怒らないと思っていたから」


 どんな聖人君子に思われていたのだろうか。自分だって怒る時はやはり怒る。それに、アリスにとって家族というのは特別なものだ。肉親がいるのなら、大切にしてほしいと思う。

 そういったことを言うと、セフィは何故か複雑そうな表情を浮かべた。


「いやあ、耳に痛いね……。私も気をつけないと」

「セフィさんなら大丈夫でしょう。ロゼさんとも仲が良いみたいですし」

「あー……。まあ、ね……。色々あるんだよ」


 眉尻を下げた弱り切った笑みを見て、アリスはこの話題は避けた方がよさそうだと判断した。一見仲がよさそうに見えるセフィとロゼだが、当事者にしか分からない事情もあるのだろう。こればかりは、アリスが首を突っ込んでいい話ではなさそうだ。


「何か協力できることがあれば言ってくださいね」


 それだけ言っておくと、セフィは目を見開き、ありがと、と頷いた。


「アリスはこの後どうするの?」

「そうですね……。時間もありませんし、このまま次の街に向かいます。幸い、ここからは近いですから」

「そっか……。せっかくだから一緒に遊びたかったけど、仕方ないね。また次の機会に」


 アリスとしてもとても残念だ。せっかく時間が合ったというのに、喫茶店で過ごしただけだった。次こそは一緒に遊びたいと思う。


「それじゃあ、アリス。気をつけてね。また始まりの街に来る時はちゃんと連絡してね。待ってるから」

「はい。もちろんです!」


 セフィからクルーゼを受け取る。いつの間にかクルーゼは眠っていた。本当によく寝るな、と思いながら、セフィは一先ずその場を後にする。少し離れたところでクルーゼを起こすことにしよう。

 アリスはセフィに見送られながら、次の街に向かって出発した。


   ・・・・・


 アリスを見送ったセフィはゆっくりため息をついた。アリスの怒りの原因はよく分かる。そして同時に、とても耳が痛いことだった。妹とよくここに一緒にログインするが、学校ではまだ誰とも話せていないようだ。このままではいけない、とは思うが、セフィにはどうしていいのか分からない。

 焦ってはならないとは分かってはいる。だがやはり、心配なものは心配だ。もう少し、妹としっかりと話をしておいた方がいいだろう。自分にとってはたった一人の妹なのだから。

 セフィはそんなことを考えながら、メニューを開いてログアウトを押す。

 そうして次の瞬間には、セフィの姿はこの世界から消え失せていた。


壁|w・)お説教キャンセル。あまりだらだらと書きたくないな、と。

第四話はこれにて終わりです。

次回はこっそり掲示板に再チャレンジ、です。


あと、次の第五話が最後となります。

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