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※昨日は帰宅が遅れたため、読み直しを全くしていません。
誤字脱字、キャラ名間違いがかなりあるかと思います。
時間ができしだい、修正します。
なお、この文章は修正が終わり次第、削除いたします。
このゲームでは、ダンジョンの最深部は例外なく分厚い扉に閉ざされている。遺跡などといった屋外のようなダンジョンであってもそうであり、このダンジョンも例に漏れず、セフィたちの目の前には分厚い扉があった。
ここに来るまでだいたい三十分ほどだっただろうか。普通ならもっと時間がかかっただろう。これも目の前で、小さい姿に戻ってふわふわと浮かぶクルーゼ様のおかげだ。
「ありがたやありがたや」
そう言ってセフィがクルーゼ様を拝む。困惑するような気配を見せるクルーゼ様に、レクスやロゼが悪のりといった感じで続いて拝んだ。何かの遊ぶだとでも思ったのか、ミカまで手を合わせている。拝まれているクルーゼ様はどこか慌てるようにくるくると部屋を飛び回った。
その様子を見ていたアリスは楽しげに笑みを零しながら、セフィへと言った。
「セフィさん。くーちゃんがやめてくれって言ってますよ」
「いやいや、クルーゼ様には感謝しかありませんので。ありがたやありがたや」
「まあこのダンジョンをこんな簡単に踏破することなんて普通はできないからな。ありがたや」
「いい経験をさせてもらった。ちょっとしたパワーレベリング。ありがたや」
「やめてあげなさいよ。クルーゼ様が困っているでしょう。ありがたや」
「ありがたやありがたやー!」
なおも全員で手を合わせ、頭を下げる。クルーゼ様は慌てるようにセフィの前に下りてくると、涙目でこちらを見つめてきた。かわいい、と思いながらも、クルーゼ様のレベルを確認する。八百。何故上がる。
「そんな目で見られても。ねえ、クルーゼ様。通じるか分からないけど、私の今のレベルは二十ちょっと。クルーゼ様のレベルは八百。ここまでは分かる?」
クルーゼ様が首を傾げる。まあ理解できていなくても問題はない。セフィは笑顔で言った。
「今のクルーゼ様が尻尾を一振りするだけで、ここにいる人は例外なく即死します。敬わずにどうしろと」
なんと、といった感じでクルーゼ様が驚きを体で表現した。それがとても可愛らしい。しかし見た目で誤魔化されてはいけない。尻尾を一振りといったが、軽いデコピンのようなじゃれ合いでもこちらは死にかねない。
クルーゼ様はうるうると瞳を潤ませてこちらを上目遣いに見上げてきた。
「あはは。冗談だよくーちゃん。ごめんね」
さすがにこれ以上は拗ねられそうだ、と判断してくーちゃんを抱き寄せる。くーちゃんはほっとしたような安堵の表情、のようなものになり、勘弁してよと言いたげに小さな手を軽く振った。
衝撃。続けて轟音。次の瞬間にはセフィの体は壁にめり込んでいた。
「…………」
空気が凍るというものはこういうことを言うのだろう。全員が頬を引きつらせながらくーちゃんを見る。くーちゃんは手を振った動きのまま固まっていた。
当然ゲームなので痛みはない。正確に言えば、ちくっとしたちょっとした痛みはあるのだが、その程度は。セフィは自分のHPの表示を確認する。残り一割を切っていることは予想通りと言うべきか、むしろこの程度で済んで良かったと思うべきか。
「くーちゃん」
アリスの冷たい声が響く。びくっとくーちゃんは体を震わせると、恐る恐るとアリスへと振り返る。アリスの絶対零度の視線を受けたくーちゃんは、慌てたようにセフィの元へと飛び、その場で土下座のような姿勢を取った。その動きもかわいいとは思うが、むしろその行動の意味を知っているのだろうか。人間くさい動きだ。
「あはは。大丈夫大丈夫。怒ってないよ」
もう一度、くーちゃんを抱き寄せる。くーちゃんは安堵の吐息をつき、セフィに甘えてきた。ふと表示を見ると、レベルが三十にまで落ちている。どうやら体の大きさはあまり関係なく、本人の意志で調整できるらしい。存在そのものがチートのような気がしてきた。
「ごめんなさい、セフィさん」
「いやいや、気にしなくていいよ、アリス。いい経験だよ」
ゲームだから許されることだけど、と心の中だけで付け加える。ロゼからの回復魔法を受けながら、それよりも、と続ける。
「ふざけるのはここまでにして、そろそろ入らない? ボス戦の最中みたいだけど、今更気にしないでしょ」
扉の奥からは、微かに衝撃音などが聞こえてきている。そのことからこのダンジョンのボスと誰か、おそらくはクールを含むパーティが戦っているのだろう。本来ならこの扉はシステムに守られているため乱入などできないが、アリスとくーちゃんなら問題なく開けられるかもしれない。
「クールって人は自業自得だと、他の人にはせっかくのボス戦を邪魔するのは申し訳ないね」
ロゼの呟きに、確かに、とレクスが頷いた。
「でもまあ、恨むならクールをってことで。全ては小さい妹を放置したあいつが悪い」
「そうね。私たちは何も悪くない。便乗しただけだし」
それでいいのか、と思わなくもないが、ローズの言うことにも一理ある。アリスとくーちゃんが行動を起こした以上、結果は変わらない。セフィたちは本当についてきただけだ。最初は手伝うつもりだったが、今ではもう野次馬と変わらない。そう思うと情けなくなるが、気にしたら負けだ。
「行きましょうか。くーちゃん」
アリスが呼ぶと、くーちゃんはセフィの手から離れた。そして巨大化、アリスが乗る時と尾内z程度の大きさになる。くーちゃんは大きく息を吸い込んだ。
ブレスかな、とセフィが思った直後、くーちゃんが巨大な火球を吐き出した。多芸だな、という感想は火球が扉に直撃し、轟音を響かせたと同時に霧散した。それどころではない。
「なんか大惨事になりそうだな!」
「汚物はしょう……」
「やめなさい」
レクス、ロゼ、ローズののんきな声が届く。ミカはきらきらとした瞳で目の前の光景を見つめていた。この子の将来が少し不安だ。
立ちこめる奮迅が少しずつ収まっていく。ようやく部屋の中が見えるようになってきた。
とても広い部屋だった。学校の校庭ほどの広さがある部屋だ。部屋の壁には松明があり、部屋を照らしていた。どう見ても明るさの大して松明の量が足りていないが、そこはゲームのお約束、だろう。
恐らくはボスだろう魔物が一匹。女の姿をした魔物で、名称はサキュバスクイーン。妖艶な姿をしており、際どいドレスを着ているが、その手には死神を思わせるような巨大な鎌が握られていた。そんなサキュバスクイーンは呆然とした様子でこちらを見ている。
その奥には五人組のパーティがいた。男三人、女二人のパーティだ。
呆然としている五人と一匹を前にして、アリスが言った。
「クールさんという方はどなたですか?」
「あ、俺、だけど……」
恐る恐るといった様子で青い鎧の少年が手を上げる。
「お兄ちゃん!」
「え、あ……? ミカ? 何でここに?」
あ、何だろう。アリスの地雷を踏み抜いた気がする。
セフィはそっとアリスの横顔を窺う。ぴくぴくと頬が動いているのが気のせいではないはずだ。触らぬ神になんとやら、セフィは静かに後ろに下がった。
「カアアアア!」
サキュバスクイーンが叫び始めた。人の姿をしていても、喋るわけではないらしい。サキュバスクイーンは新たに現れた自分たちを、特にアリスの方を驚異と見たのか、アリスを睨み付けていた。その視線を遮るように動くのは、我らがくーちゃんだ。
今のくーちゃんは小さい姿だ。だからサキュバスクイーンも侮っているのだろう。その笑顔はどこか小馬鹿にするようなものだった。もしレベルを見ることができれば、自身の十倍のレベルに逃げる判断ができたはずだろうに。
くーちゃんは器用に腕、といっていいのだろうか? を組んでサキュバスクイーンを見据えていた。その様子もとてもかわいい。
壁|w・)超お遊び回、でした。




