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AIアリスの旅記録  作者: 龍翠
第四話
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「ミカちゃん」


 アリスが唖然としているミカへと声をかける。はい! とミカは元気よく返事をした。


「お兄ちゃんに、会いにいこっか」

「行けるの?」

「場所が分かるのなら、ね。……セフィさん」

「はい! 何でしょうかアリス様!」

「え? あの、どうしたんですか?」


 セフィの返事に、アリスは少し驚いているようだった。セフィが言う。


「いや、何でも……。それで?」

「えっとですね。冒険者さんの魔法……。ワープポータル、でしたっけ? あれでダンジョンまで行けませんか?」

「うん。行けるけど」


 例え本来ならまだ解放されていない場所だろうが、今のセフィなら関係のないことだ。セフィの答えを聞いたアリスは、良かったと柔らかく微笑んだ。とても可愛らしい笑顔に、機嫌なおったのかな、と内心で安堵したところで、


「クールさんのところに行きたいので連れて行ってください」


 お願いという形ではあるが有無を言わさぬ声だった。否とは言えない。言えばどうなるか分からない。いや、言ったとしても問題はないだろうが、きっととても悲しそうにするだろうことは分かる。ならばセフィの答えは一つだ。


「いいよ。任せて。すぐに行く?」

「はい。あ、戦闘などは気にしなくて大丈夫なので」

「いや、手伝えるところまでは手伝うよ。まあ戦闘関係のスキルは上げてないから、あまり戦えないけど……」


 今思えば、一応ではあるが剣士として始めたのに、以前に剣を握ったのはいつだっただろうか。エンチャントばかりしている気がする。いっそのこと魔法使いになった方がいいような気がしてくる。


「せっかくだし、俺も手伝おうか」


 そう言ったのはレクスだ。いつの間にか腰に剣を吊っている。レクスも今ではすっかり生産職のプレイヤーだが、こちらは元はトッププレイヤーだ。間違い無くセフィよりも頼りになるだろう。


「おもしろそうね。同行するわ」

「どうせ暇だし、私も行く」


 ローズとロゼも来るらしい。二人とも、トッププレイヤーには及ばずとも、剣士と魔法使いだ。十分に戦力になる


「って、あれ? もしかして一番の足手まといって私……?」


 アリスはあのチートとも言える短剣がある。ミカはどちらかといえば依頼者なので数に数えるべきではない。そう考えると……。


「セフィさん?」

「あ、ごめん。何でも無いよ」


 私は何も考えていない。考える必要もない。セフィは乾いた笑みを浮かべながら、アリスと共にワープポータルへと向かった。




 クールが攻略中というダンジョンは、広大な砂漠の地下に広がるダンジョンだ。ダンジョンの入口は砂漠のど真ん中にあり、石造りの小さな建物がぽつんと建っている。ここが砂漠でなければ普通の民家にも見える小さな建物だ。中は家具も何もなく、地下へと続く階段しかない。

 セフィたちはその階段を前にして、それぞれ準備をする。もっとも、大した準備ではない。装備を変えるだけだ。それも、メニュー画面を少し操作するだけで終わってしまう。


「不思議な魔法ですね」


 その様子をアリスが興味深そうに見つめていた。どうやらNPCは、プレイヤーのメニューを使う機能は魔法として認識しているらしい。説明も難しいので、わざわざ訂正する人もいない。


「でも戦う必要はないですよ。任せてください」

「いやいや、そんなわけにはいかないでしょ。ここは難しい場所だし……」


 それでも、大丈夫ですとアリスは言う。怪訝に思っていると、アリスはリュックを足下に下ろして、中に手を突っ込んだ。そうして取り出されたのは、見覚えのあるもの。

 くーちゃんだ。

 鼻提灯なんて漫画なようなものを作りながら眠っている。今日は見ていないと思ってはいたが、ミカがいるためだと思っていた。まさか単純に眠っているだけだったとは。


「かわいい!」


 ミカが興奮してアリスへと駆け寄る。微笑むアリスが持つくーちゃんを、ミカはおそるおそると撫でた。その途端に、くーちゃんが目を開く。ミカは驚いたように固まった。


「くーちゃん。お休みしていたのにおこしてごめんね。ちょっと手伝ってもらってもいいかな?」


 くーちゃんは眠たそうに目を細めていたが、やがて大きな欠伸をするとふわりと浮かび上がった。用件は何? といった様子でアリスの方を見ている。


「このダンジョンにクールさんっていう人がいるらしいの。その人のところに行きたいから、戦いは任せてもいいかな?」


 アリスがそう聞くと、くーちゃんは任せておけとばかりに頷いた。早速とばかりに地下への階段を下りていく。アリスが慌ててそれを追っていった。


「あれがくーちゃんなのね。強そうには見えないけど」

「すぐに分かるよ、きっと」


 ローズの呟きに、セフィは少し遠い目をしながら答えた。

 全員で地下へと下りる。そうして最初に目にしたものは、人よりも少し大きい程度の大きさになったくーちゃんだった。それを見て、ロゼが眉をひそめた。


「どうしたの、ロゼ?」

「レベルが五百になってる。大きさとは必ずしも一致しないのか。まあ、百も五百も変わらないけど」

「くーちゃん。よろしく」


 アリスの声が聞こえたかと思うと、くーちゃんが歩き始める。もちろんダンジョンなので本来なら敵の魔物が出てきてもおかしくないのだが、そんな心配は必要なかった。

 魔物は出現と同時に屠られていく。目の前に魔物が出てきても、くーちゃんの攻撃で群れごと消し飛ぶ。工夫も戦略も何もない。レベル差に物を言わせた蹂躙だ。


「これは、本当に俺たち必要なかったかな」


 そう言うレクスの目の前で、また魔物の群れが消し飛ぶ。ほとんどの群れはくーちゃんの適当なブレス一発だ。アリスの護衛の名は伊達では無い、ということか。


「アリスお姉ちゃん! すごい!」

「すごいのはくーちゃんだよ。褒めてあげてね」

「うん! くーちゃんすごい!」


 ミカに褒められたくーちゃんが、照れたようにはにかんだ、ようだった。セフィも何となくだがくーちゃんの表情の変化が少しは分かるようになっている。アリスほどではないが。

 そんな微笑ましい三人のやり取り。その中でくーちゃんのブレスによって消し飛ばされていく者たち。相手になっていない。歯牙にも掛けられていない。本来なら自分たちにとっては驚異であるはずの魔物たちは、フィールドの雑魚と変わらない扱いだ。


「さすがに魔物たちに同情してしまうわね……」

「同意する」


 頬を引きつらせながらのローズに、ロゼが頷いた。セフィとしても同じ気持ちだ。プレイヤーだけの来訪なら、まだ活躍の場があっただろうに。

 その後も、くーちゃん、いや、クルーゼ様による蹂躙はダンジョンの最深部にたどり着くまで続いた。


壁|w・)くーちゃん無双。

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