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AIアリスの旅記録  作者: 龍翠
第四話
32/51

 セフィとロゼがそんな掛け合いをしているが、アリスとしてはやはり落ち着かない。そんなアリスの浮かない表情に気づいたのだろう、セフィは気にしなくていいのに、と苦笑しながら、立ち上がった。


「アリス。本当に気にしなくていいよ。私がそれなりに稼げているのも、孤児院でエンチャントを学べたからだし。それもアリスの繋がりがあってこそ、だったからね。これぐらいはさせて」

「ですけど……」


 そうは言われても、アリスはほとんど何もしていない。最初に会った時にご飯を作ったぐらいだ。最近はむしろもらってばかりなので、余計に気になってしまう。


「じゃあ、代わりに……」


 セフィの声に顔を上げるが、すでにセフィの姿はなくなっていた。ロゼとローズはどこか呆れているように見える。首を傾げるアリスの後ろから、セフィが抱きついてきた。


「わ! セフィさん!?」

「ふふふ。アリスの親友の特権だね。アリスあったかい」

「もう……」


 色々と言いたいことはあるが、セフィがこれで満足をするなら大人しくしておこう。そう思っていると、ミカが勢いよく立ち上がった。


「アリスお姉ちゃんは私のお姉ちゃんだもん!」


 そう言ってアリスの腕を掴んでくる。


「うんうん。ミカのお姉ちゃんだよ。そして私の親友でもある!」

「つまり、どういうこと?」

「私に甘えてもいいんだよ!」

「わーい! セフィお姉ちゃん!」


 全くもって意味が分からない。アリスを間に挟んで騒ぐ女二人。自分にどのような反応を求めているのだろうか。ロゼかローズに助けを求めたくても、二人は我関せずとそっぽを向いていた。

 やがてケーキが運ばれてきて、ようやくアリスとミカは自分の席に戻った。


「あの、本当にいいんですか?」

「くどいよアリス。それとも、私におごられたくないってことかな? それは地味に傷つくよ?」

「あ、いえ、そんなことないです……。いただきます」


 上目遣いにそんなことを言うのは卑怯だと思う。アリスは素直に礼を言って、ケーキを食べ始めた。




 全員がケーキに舌鼓を打ち、幸福感に浸っていると、


「お、セフィさん。あと、もしかしてアリスさんか?」


 そんな男の声が通りから聞こえてきた。聞き覚えのある声に顔を向けると、以前北の方で出会った冒険者のレクスだった。


「おお。レクス、久しぶりだね」


 セフィがひらひらと手を振る。どうやらセフィとレクスは知り合いらしい。そのことに驚いていると、セフィが言った。


「以前、私がエンチャントしたちょっとした道具を買ってくれたんだよ。その後も同じ商品をたまに売ってるし、お互いに生産職ってことで覚えちゃった」


 おいでおいで、とセフィがレクスへと手招きする。レクスはしばらく悩んでいたようだったが、それじゃあ遠慮無く、と庭に入った。


「何の集まりなんだ?」

「迷子の護衛の集まり?」

「迷子?」


 この子、とセフィがミカを示す。ミカはすぐに誰かの後ろに隠れる、とそう思っていたのだが、予想に反してミカはじっとレクスのことを見つめていた。


「迷子って……。ミカじゃないか。クールはどうしたんだ?」

「レクスお兄ちゃん?」


 その言葉に、アリスたち四人が固まった。動きを止めた四人を置いて、レクスとミカの会話が続く。


「ミカも買ってもらったんだな。クールとログインするのは初めてか?」

「うん……。気づいたら、お兄ちゃんがいなくて、それで私……」

「あの馬鹿……。大丈夫だ。すぐに見つかるさ」


 レクスがミカの頭を優しく撫でる。ミカはくすぐったそうにしながらも、それを受け入れていた。


「レクスさん、ミカちゃんのこと、知ってるんですか?」


 皆を代表して、というつもりはないが、アリスがレクスに問うと、レクスは頷いた。


「ああ。ミカの兄、クールとは幼馴染みなんだ。だからミカも知ってる」

「そうなんですね! それじゃあもう安心……」


 ですね、とは続けられなかった。気づけば、ミカがじっとアリスのことを見つめていた。どうしたのかと考え、そしてすぐに思い当たった。きっとミカは、自分がどこかに行くとでも思っているのだろう。


「ミカちゃん、ここまでいたから、お兄ちゃんが見つかるまでは一緒に待つよ」


 そう優しく声を掛ければ、予想通りのようでミカは安堵したように微笑んだ。こちらへと歩いてきて、アリスへと抱きついてくる。


「アリスお姉ちゃん、大好き!」

「あはは……」


 なぜこれほど無条件に慕ってくれるかは分からないが、悪い気はしない。むしろかわいく思えてきてしまう。ミカを撫でながら頬を緩めるアリスを周囲の人が生暖かく見守っているのだが、アリスは全く気が付かなかった。


   ・・・・・


 アリスの膝の上に座り、二個目のケーキを少しずつ食べるミカ。セフィとレクスはそんな二人を守りながら、いつの間にかちょっとした商談を始めている。レクスが欲しいエンチャントの道具を伝え、セフィがそれについて何かを言っている、という様子だ。

 その四人を、ロゼとローズは一歩引いたところで見守っていた。ローズはちらりとロゼの様子を窺う。いつもの無表情だが、どこか緊張している様子ではある。これだけ人が集まると、やはり何か思うところがあるのだろう。


 ローズはセフィの友人だ。ロゼがどういった状態になっているかも知っている。ローズはいじめにこそ参加していなかったが、助けなかった事実は変わらない。だから、自分が未だ警戒されていることも分かっている。


「ねえ、ロゼ」


 ローズが声をかけると、ロゼは小さく体を震わせ、こちらへと視線を向けてきた。リアルではともかく、ここでは一応会話は成り立つ。もっとも、心を開いてくれているわけではない、というのは十分に分かる程度だ。


「掲示板は見てる?」


 ローズが聞いて、ロゼはセフィたちへと視線を戻しながら頷いた。


「セフィはあまり見ていないけど、私はよく見てる」

「それじゃあ……」

「言いたいことは、分かる」


 そう、とローズもセフィたちを見る。セフィと、アリスと、レクスをそれぞれ見る。知っている人が見れば驚く光景だろう。


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