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AIアリスの旅記録  作者: 龍翠
第三話 友達
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 セフィはカウンターの右隅、本来は素材の買い取りを担当している受付の方へと向かう。ここだけはいつも暇そうだ。というのも、素材はクエストに必要だったりと何かしらの使い道があることが多いので、売る人が少ないためだ。

 セフィが買い取りの受付に近づくと、担当の女が笑顔を浮かべた。


「いらっしゃい、セフィさん。アリスから手紙が来てるわよ」

「本当!?」


 ぱっと顔を輝かせるセフィ。ロゼの生暖かい視線を感じるが、気にせずに手紙を受け取る。茶色のシンプルな封筒に便せんが入ったものだ。早速封を開けて手紙を読む。挨拶と、近況、そして四日後に始まりの街に戻るということが書かれていた。


「四日後だって」

「じゃあ、明日だね」


 ロゼの言う通り、現実世界では翌日ということになる。セフィは少し考える。ロゼの言う通り、ここでは四日あっても現実世界では一日しかない。実際にゲームをできる時間はさらに少なくなるだろう。つまりは時間がない。


「ロゼ」

「……嫌な予感がするけど、なに?」

「私明日は休む。残り四日で贈り物を用意する」


 ロゼの頬がわずかに引きつった。正気かこいつ、と思っているのを視線が物語っている。セフィはそっと視線を逸らして、言った。


「晩ご飯の時に、お父さんとお母さんには、言う。説得する」

「まあ……。私がどうこう言うことじゃない。がんばれ」


 ロゼは呆れたようにため息をつきながらも、そう言った。




 両親の説得は驚くほどあっけなく成功した。というのも、普段は我が儘を言わないのだから、今日ぐらいは許可してあげよう、とのことだった。これには菜月だけでなく頼んだ響子も唖然としたものだ。

 ともかく、両親から許可をもらえた。もちろん学校を休む許可も。これで心置きなく準備ができる。


「というわけで、明日は学校を休むから」

「どういうわけなのよ……」


 セフィとロゼの二人と一緒に街を歩くのは、赤を基調とした鎧を着込む女の戦士。ショートカットの髪も赤く、まさに赤一色だ。


「学校では適当に言っておいてね、エンジェル!」

「殺すわよ?」

「ごめんなさいローズ様」


 即座にその場で頭を下げる。ローズと呼ばれた少女はやれやれと頭を振りながらも、了解、と短く返した。


「それで? 短剣にエンチャントするんだっけ?」

「そうそう。何の短剣にしようかなって考えてるところ」

「じゃあこれなんかどう?」


 そう言ってローズが鞘に収まった短剣を差し出してきた。首を傾げながらも有り難く受け取り、その短剣を軽く叩く。名称は、鉄の短剣。そのままだなと思いながらステータスを見て、目を剥いた。


「なに、これ……」


 セフィの様子を訝しんだロゼがセフィの持つ短剣を軽く叩く。そしてすぐに、こちらも目を剥いた。

 固有名詞のない量産品にありそうな名称と違い、ステータスは飛び抜けていた。短剣なのに両手持ちの大剣よりも攻撃力が高い。意味が分からない。セフィが頬を引きつらせながらローズを見ると、少しだけ誇らしげに胸を張っていた。


「すごいでしょう。贈り物にするならこれ以上はないと思うわよ?」

「いやいや、すごいなんてものじゃないよ! なにこれ!?」

「プレイヤーメイドの品よ」

「いや、でもおかしいよ。何このステータス! まだ無理じゃないの?」


 このゲームには鍛冶というスキルがある。武具作成のスキルだ。そのスキルで作られた武具の方が、店売りよりも性能がいい。それぐらいはセフィでも知っているし、それ故にまだ早いとも思う。

 スキルで作られるアイテムの性能は、スキルのレベルに依存する。つまりはスキルのレベルが低いと、たいしたものは作れない。それを考えれば、この武器の性能はあり得ないほど高すぎる。公開されているレアドロップの武器よりも性能が高いとはどういうことか、と。


「ふふふ。では教えてあげましょう」


 ローズが訳知り顔で説明をし始める。セフィとロゼは大人しくそれを聞くことにした。

 アイテム作成の方法は、実は三種類ある。一つ目はスキルに完全に依存する方法。手に入れたレシピに従いアイテムを用意して、スキルを発動。瞬時にアイテムが作成される。セフィの知っている方法がこれだ。

 二つ目は、半自動。レシピに従いアイテムを用意して、そして実際に手作業で作る。もちろんスキルのアシストがあるのでそこまで難しいことではないが、ただし時間はそれ相応にかかる。現実と同じ行程を経て行われるらしい。その分、性能も良いのだとか。


「そして三つ目が、裏技の領域ね」

「ほうほう。で?」

「完全手動。スキルなんて知ったことか。自分の知識と経験を頼りに作る。これで作られた武器は性能が段違いになる。まあ、作れる人なんて限られる上に制限もあるけど」

「制限?」


 セフィは首を傾げながらも、手元の短剣に視線を落とした。確かにこれほどの武器が量産されると、ゲームバランスが崩壊しかねない。


「この方法で作られた武器にのみ、レベル制限がかかるのよ。ステータスをよく見て。書いてるでしょ?」

「あ、ほんとだ……。レベル制限五十って。誰も装備できないね」

「作った本人とNPCは問題ないらしいわよ。まあ正直なところ、ここまでくると趣味の領域ね」


 高い金額を支払って購入しても、装備できないのなら意味がない。確かに趣味と言えるだろう。もともと裏技のようなシステムのようだし、それで丁度いいのかもしれない。


「アリスさんにはそれをあげなさい。私も手に入れたものの使い道のないものだし、かといって捨てるのももったいないと思っていたのよ」

「ありがとう、ローズ。このお礼はいつか必ず!」

「そうね。いつかアリスさんを紹介してくれたら嬉しいかな。セフィがそこまで楽しそうにするなんて、少し気になるから」


 どこか真剣な表情でそう言うローズに、セフィはしっかりと頷いて了承した。

 狩りに行く、というローズと別れ、セフィとロゼは孤児院に戻った。生産スキルに完全手動なんて裏技があるのなら、エンチャントにもあるのでは、と思ったためだ。もしかすると、それが魔力関連の話なのかもしれない。


「ロゼは疲れたら休みなよ?」

「いい。付き合う」


 一人じゃ寂しいだろうし、というロゼに、セフィは苦笑しながらもありがとう、と言っておいた。

 戻ってきたセフィとロゼを、院長は少し驚きながらも快く迎え入れてくれた。そうして始まるエンチャント指導。相変わらず魔力がどうのこうのと意味が分からない。うんうん唸るセフィの隣では、ロゼもエンチャントの練習をしていた。攻撃魔法にも関係するかも、という考えらしい。


「この部屋ならずっと使っていてもいいから、がんばりな。何かあったら聞きに来るといいよ」


 そう言って院長が出て行った後も、セフィとロゼはひたすらに練習を重ねていた。


   ・・・・・


壁|w・)このお話の生産はこういう形になっています。

前話のレクスの家具作成が三つ目の裏技に当たります。

さて、次からアリス視点にようやく戻りますよー。


明日は日曜日なのでお休みです。次の更新は月曜予定です。

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