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Prologue

マハコンダインです。

TSに嵌まりすぎてついに自分で書いてしまいました。

ムシャクシャしてやった。反省はしていない。

 

  ――Virtual Reality――

それは仮想空間においてまるで現実であるかのように行動できる技術。

現実では起こりえない現象を現実として認識でき、

叶うことがなかった夢を現実となって体験できるのだ。


全人類にとって悲願でもあるこの技術を実現させようと、今もなお多くの科学者達が切磋琢磨し、研究している。



20XX年……

人々は皆、VR技術を夢見て研鑽したが、未だに実現はしていないとされている。


しかし、あるニュースが世界を騒がすことになる。

それは東京都にあるとても小さなゲーム会社からの情報だった。


『新作ゲームは待望のVR技術を用いたMMOとなりました。』


たった一行。

しかしそのゲーム会社のホームページに追加されたその一行には、『VR技術を用いたMMO』というワードを含んでいる。

それは数多のゲーマーの夢でもあるのだ。

ゲーマーがこの手の情報を逃すだろうか、いや逃すはずかない。

こうして最初は一部のSNSで話題になり、TVやインターネットを媒介に瞬く間に広がっていった。


当然、多くの人がこれについて疑った。

小さなゲーム会社ごときでは、最先端の技術を開発できる研究者も、膨大にいるであろう資金も持ち合わせていない。

特に大手のゲーム会社では、そのプライドもありこの情報を信じようとはしなかった。


一方、開発元のゲーム会社は、ホームページが炎上し大問題になりかけたにも関わらず一切の情報の開示をしなかった。

わかっている事は、VR技術を使っている事、MMOである事だけ。


そして、『VR技術を用いた』というワードは、ただそれを嘘だと笑い飛ばすにはいささか突飛すぎ、――心のどこかで真実であってほしいという期待も含まれているのかもしれないが――情報を開示しないという守秘的な態度から、これは本当なのではないか、という意見が出始めたのである。


結果としてその情報は海を超え、世界へと渡り、様々な企業や政府が注目するまさに全人類の注目の的となった。


噂に尾ひれはつきもので、今回も例に漏れず、というより通常以上に、噂は一人歩きをしつづけるのだった。


『VR技術は実は昔からあった。』

『実は巨大な組織からの援助があった。』

『VR技術には危険が伴う。』

etc.


一体どれが真実で、どれが嘘なのか、もはや誰にもわからない。



―――――



全世界待望の発売日当日――

東京都のあるゲームソフト販売店の前には長蛇の列があった。

その先頭には、笑みを隠そうとするも隠しきれず、地面を見ながらニヤニヤしている一人の青年がいた。


彼の名は小坂井 雨音あまね

髪は天然パーマでクルクルと巻いていて中性的な顔立ちで中の上ぐらいの容姿ではあるが、現在は目の下に濃い隈が浮かんでいる。見るも無残な状態だ。

というのも、彼はこの日のために一週間前から大学を休み、テントや寝袋を背負って並び続けているのだ。


(あぁ、長かった。やっとこの日がきた。わざわざ最も早く入荷して販売する店を探して並んだ甲斐があったよ。)


もはや雨音は歓喜の余り涙がこぼれそうであった。

その潤んだ目で震える雨音を見て周りの客がドン引きしているのは言うまでもないだろう。

雨音自身は全く気づいていない。


なぜ雨音はここまでして並んだのか。

それは至極簡単な事である。

雨音の趣味がゲームである事。たったそれだけなのだ。


他の人との違いを言うなれば、雨音に興味がある事がゲームしかないことであろうか。

本来、人間は様々な事に興味を持ち、好奇心を持つ。

しかし、雨音はゲーム一筋。ゲームLOVE。

世界の中心で愛を叫ぶほどに好きなのだ。

ゲームに狂っているとも言えるのかもしれない。


そんなゲーム愛好家である雨音は、過去いくつものゲームをプレイし、そこで数えきれないほどの実績や逸話を持っている。


『プレイ時間の鬼』、『努力の結晶』、『真のデバッカー』、『全ての最古参』などなど。


呼び名からもわかる通り、ゲームは発売日当日に始め、プレイ時間も長く、通常耐えられないようなデバッカー紛いの事をしてシステムの穴を見つけたり攻略の糸口を見つけたりして、トッププレイヤーに名を連ねるのだ。

そして、雨音の信じられない所はこの行為を幾つものゲームでやっている事だ。


雨音曰く、「どんなゲームにも良い所や悪い所があるが、それを全部知り尽くす事がそのゲームに対する一番の愛情表現だと僕は思うんだよ。」だとか。


雨音の愛情はもはや狂気といっても過言ではないが、その対象がゲームという無機物であった事はまだ幸いだったのかもしれない。




朝9時になり、いよいよ開店する。

雨音は待ちきれないのか販売準備をしている間に値段ぴったりのお金を用意していた。


「それではVRゲームの販売を開始致します。」


店長の掛け声と同時に雨音は店員にお金を渡した。

お金を数える時間も無駄にしたくないのか、「お金はぴったりです。」と雨音は店員を急かし、店員は雨音の鬼気迫る態度に苦笑いするしかなかった。


雨音は一辺50cmほどの立方体の箱を受け取り、他の物など見向きもせずに愛用の自転車にまたがり自宅へと急いだ。

まさか他の客が雨音程大きな箱を貰っていないとはこの時のアマネは知る由もなかったのだった。



幸い自宅は店から自転車で20分ほどの場所である。

雨音の御期待通り最速でプレイする事ができるのだ。

雨音は一人暮らしの自室へ駆け込み、早速箱を開けた。

中には無骨な作りのヘッドホンのような物体とPCに入れるゲームディスクが入っている。


「え~、何々。ヘッドギアをPCと接続後着用し、ゲームディスクを入れてくださいっと。」


PCを起動し、ヘッドギアとつないで頭に装着する。

ヘッドギアの無骨ながら鈍く光る金属光沢が、雨音の少年の心を掻き立てる。


「うほぉー!なんか近未来感が半端ない!」


まだ始めてもいないのに興奮状態の雨音は、説明書もじっくり読まずにゲームディスクをPCに入れた。


ヘッドギアが奇妙な音と共に起動する。

その音は、妙に心地よく眠気を誘う子守唄のようだった。


「なにこれ、めっちゃ眠い。列に並んだ疲労が溜まっているの……か………も………………。」


雨音の瞼は徐々に重くなっていき、ヘッドギアを装着し、PCを起動したまま眠りこけてしまうのだった。



―――――



一方、雨音は眠りにつきながらも意識は覚醒しているという奇妙な感覚に陥っていた。

眼前はどこまでも白く、突き当たりが見当たらない不思議な空間である。

声も出ず体も動かないこの奇妙な状態は雨音が寝てから30秒ほど続き、 『キャラメイクをしよう!』と書いた訳の分からない半透明な看板のような物が空中に浮かび上がる事でようやく雨音は何が起こったのかを理解した。


(もしかしてこれがVR技術を使ったゲームの中?)


雨音の意思とは関係なく半透明な看板が消え、目の前に先程まで着ていたジャージ姿の『もう一人の雨音』が現れ、右上にまるでゲームのような『もう一人の雨音』のステータスが表れた。


(なるほど!これでキャラを作っていくってわけか!自分が目の前にいるっていう感覚が気持ち悪いけど、これはこれでおもしろいな!)


ステータスには、名前、種族、性別、年齢、外見、職業、全てを細かく設定できるようだった。

選択はそうしたいと頭に思い浮かべるだけでその通りに変化していく、まさに簡単設計である。


(名前は『アマネ』で、種族は『ヒューマン』『ビースト』『エルフ』『ドワーフ』『ホビット』かぁ。どうしようかな。まあどうせ何回もやり直してやりこむんだけどね。)


雨音はこの類いのゲームをやる時、全ての種族を比べ検証するため、最初の種族選択にあまり拘りはないのだ。


(前のゲームは前衛やってた事が多かったから今回は後衛やろうかな。ってことで『エルフ』にしよう。)


目の前の『もう一人の雨音』の姿が、ジャージ姿はそのままに金髪碧眼イケメンのエルフに変化していく。

もはや『もう一人の雨音』とは呼べなくなるほどに面影がなくなった。


(うわぁ、自分の姿が変わるの見てて気分悪いな。)


妙にリアルなその様に若干の気持ち悪さを感じながら、雨音は次の項目に移った。次は性別である。


このゲームには性別も能力値に関係する。

男なら、筋力、体力が高く、女なら、知力、精神の値が高いのだ。

雨音は迷った末に女を選んだ。


(いや、後衛職やろうと思ってるからであって、別に女装癖があるだとか、ネカマプレイが好きだとかそういう訳じゃないんだよ?本当だよ?ほら、VRだからFPSって事じゃん?じゃあちょっと女性の視点からっていうのも新鮮かなって思った次第でして…………って何に言い訳してるんだ僕は……。)


思った以上に動揺している自分に若干項垂れながら、雨音は次を決めていく。


(年齢は14歳でいいか。後は外見だよな。見たところかなり細かい所まで弄れるようだし。前のゲームでは一時間掛けたけど、今回はどのぐらい掛かるやら。)


外見も能力値に関係するらしく、身長や体重にあわせて筋力や体力が変化する。

また、髪の長さによって精神の値が高くなるようだ。

これは古くから髪には魔力や霊力が溜まるという迷信からきているのかもしれない。

設定の作り込みに雨音は感嘆した。これほど外見が重要視されるゲームも多くはないのだ。


結局、二時間掛けてようやく外見が完成した。

髪色は薄赤色で、肩甲骨あたりまで届く髪をサイドテールで纏めて肩に流している。

瞳は茶色で目はくりくりとしていてあどけなさが残っているものの非常に整った顔立ちをしており、将来が楽しみだと言わしめるような容姿である。

身長は150cmと小さめで、胸は………。

雨音曰く、貧乳はステータスなんだとか。


(趣味全開でつくっちゃったなあ。思わずロリっぽくしちゃったよ。ほら、身長小さい子が強力な魔法撃つのってちょっと憧れるじゃん?だからロリっぽくしただけであって、断じてロリコンではないよ?こうギャップがいいというか……、意外な二面性というか……そう、ギャップ萌え?…………………って駄目じゃん!これじゃあロリコンじゃん!)


自ら墓穴を掘る雨音は、体が動かないせいか表情だけで悶えていた。

言うまでもなく顔は真っ赤である


外見を一区切りつけ、職業決めに移った。

このゲームの職業は、前衛か後衛かだけを選び、後はランダムで決定されるようだ。


雨音は迷いなく後衛を選ぶと、半透明な看板の文字が徐々に変わっていく。

そこには『召喚武具士』と表記されていた。


(ふーむ。聞いた事ないな。察するに武器を召喚したりするのか?)


雨音は説明書を読まずにゲームを始めてしまったために知らないが、実は『召喚武具士』については詳しく表記されていた。


――『召喚武具士』

精霊と契約することで、精霊を武器や鎧として召喚する者の事である。

前衛職であるかのように思えるが、武器は近距離、遠距離、どちらも含まれているため一概にどちらかとは言えないのだ。

また、契約できる精霊の格は、魔力量で決まるためどちらかというと後衛職として分類されている。


この事を知らない雨音は、ただ武器を色々使える職業としか考えておらず、後々困る事になるのだがこの時の雨音は初めての職業に唯々興奮するだけであった。



職業を決め終わり、ゲームお馴染みの最終警告が表示された。


『これでキャラメイクを終了しますか?』


当たり前のようにYESを選択する雨音。しかし、さらに警告文が写しだされる。


『以後、変更はできなくなります。本当によろしいですか?』


雨音は過保護な表示文に若干訝しみながらも、YESを選択した。


雨音の警戒をよそに一瞬視界がブラックアウトしただけで、さして何も起こらなかった。

というよりも、何か起こるはずなのに何も起こらないままであった。


バグだろうか、と雨音が疑い出した頃、眼前にバキリと、木が割れるような音とともに裂け目が生じた。

突然起きた変化であったためか雨音は裂けた空間に視線が釘付けとなる。


すると、ただでさえ真っ白な空間に、さらに全身が白い少女がその裂け目をまるでドアを開けるかのように空間を押し開けた。


少女の髪は白く、肩口くらいで切り揃えられており、瞳もまた少しくすんだ白色――遠くから見たら白目にみえるかもしれない――で、肌も黒子ひとつなく新雪のように真っ白、芸術家が作り出したかのように見事な黄金比でできた彫像のような顔立ちをしている。


雨音はあまりの美しさに思わず息を呑んだ。


口をポカンと開けアホ面を晒す雨音に真っ白少女は視線を合わせると、ジト目になって口を尖らせた。


「決めるの遅すぎるよ君。いったいどれだけ私が待ったと思っているんだい?もう食べる物も飲む物も無くなっちゃったじゃないか。」


真っ白少女の予想外の第一声に、雨音はさらにアホ面を晒すのだった。




名前 アマネ

種族 エルフ

性別 女

年齢 14歳

職業 召喚武具士LV1

筋力 2

体力 4

器用 7

知力 8

精神 8


能力値は一般的な人間の成人男性が筋力体力が5、器用知力精神が4が平均。

成人女性は逆に前者が4、後者が5が平均。

また、この値は全く戦闘の経験をしていないLV1の人間の平均値である。



ちなみに作者はロリコンではありません。違います。本当に違います。ロリは愛でるだけなんです。

バーサーカーの肩の上に居るイリ○スフィールとか好きだけど断じて違います。



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