恋に落ちた二人の話
君と出会った屋上で
何でもないくだらない話を今日も君とリピートする
そのまるで空想のような日常の終わりに
君は苦笑いしてそっと言う
「…今日も出来そうにないな」
何も気付けず「何?」と聞き返す鈍感な私
「何でもないよ」と笑みを浮かばせながらもどこか悲しげな表情をする君
そう、彼は恋に落ちていたんだ
そして、それに気付いた私も
恋に落ちた
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それが君が屋上から転落死した日の前日の話。
そしてその次の日、つまり君が転落した日の朝に私は君の手紙を受け取った。
下駄箱の中というあまりにもありきたりな形。
そして、取り留めのない文章。
でも、君の思いをありのまま綴ったその文章を読んだ時、私は物凄く嬉しかった。
そして、おかげで私も自分の思いに決心する事ができた。
私も君と同じ思いだったから。
だからこそ、君が死んだことを知ったとき、私は…
そうして今私は、君と出会った屋上で君の手紙を読んでいる。
君のいない屋上というのは何というか新鮮だ。
そして凄く寂しい。
でも、この手紙を読んでいるとまるで君がそこにいるかのように感じる。
いつもそうだったように。
『
屋上の君へ
気付けば君と屋上で出会って1ヶ月
いつからか僕は君と会うために屋上に来るようになっていたみたいだ
そう、元々の目的さえ忘れて
でも、もういいんだ
僕は僕の思いを突き通したいと思う
もし、君も同じ思いで屋上へ来ていたのなら、これから先もずっと僕と一緒にいてくれるかな?
焦らなくてもいい
ゆっくり自分の気持ちを見つめて考えて欲しい
こんな形だけど思いを伝えられて良かった
じゃ、また屋上で
今日こそは…必ず…
屋上の僕より
』
君と出会った屋上で
何でもないくだらない話を今日は一人リピートする
そのまるで日常のような空想の終わりに
君は苦笑いしてそっと言う
「…今日も出来そうにないな」
何も気付けず「何?」と聞き返す鈍感な私
「何でもないよ」と笑みを浮かばせながらもどこか悲しげな表情をする君
そう、彼は故意に落ちていたんだ
そして、それに気付いた私も
故意に落ちた
~恋に落ちた2人の話~