表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人の子供が使える魔法  作者: 黒飴につめ
第一章 子供の身内
6/7

第四話*研究者と王子と神官

ギドゥヴィ・カリュツ・セクト視点

――カリュツ王国第二皇太子

  王国騎士団団長兼第一小隊隊長

「入るぞ。」

 俺は一声かけて、静かに扉を開けた。

 中には白を基調とした質素な部屋が広がっている。俺は、ここの主――セルスに問いかけた。


「あの子供が目を覚ましたそうだな。」

「あれ、情報が早いね。アデュくんから聞いたのかい?」

「ああ。」


 あの討伐から、そして少女とすら言えない幼子を拾ってから、五日が経った。その間、アデュールは勤務時間外はずっと彼女の傍に居てやったらしい。


 ――団長、あの子が昨夜、目を覚ましたそうですよ。――

 今朝、そのアデュールが俺にどこかほっとした様子で報告してきたのだ。それも、もう十何年も付き合いのある俺ですらめったに見られないような、とても柔らかい表情で。思わず目を疑ってしまった。


「それで王子殿はに会いに来たのかい?」

「ああ。……待て、『彼』だと?」


 俺は一瞬流しかけてしまった言葉を反芻した。セリウスは面白そうにクスッと笑う。


「王子殿も騙されてたか……まあ、分からないよね。あの子、あんなに顔が綺麗なのに男の子なんだよ。」

「な……。」


 絶句した。柔らかく小さな体、長い髪、整った顔、白く透き通るような肌……。もしや男の子なのでは、なんて疑いもしなかった。

「会うのはいいけどその前に、王子殿にお願いがあるんだけど。」

 セルスは一つの条件を切り出した。




「……連れてきたぞ。」

 俺は再びセルスの部屋に来ていた。先ほどより少し疲れているのには少し訳があるのだが、果たして奴は気づいているのだろうか。


「こんにちは。」


 俺の後ろから入ってきたこの金髪の女性はクーリエ・ジズナー。王国でただ一人の【オーティカル】であり、僅か二年で神殿の副神官長に昇りつめたツワモノとして有名である。


 そんな彼女を俺が何故連れてきたのかと言うと、それがこの医者の出した、例の子供と会うための条件だったからだ。

「ああ、王子殿お疲れ様。巫女殿もいらっしゃい。」

「――セルス・モドン、その呼び方はやめて頂けるかしら。」

「呼び方? 『巫女殿』っていうこれかい? 事実じゃないか。」

「事実ではありません。私は神官であって巫女ではありません。」

「同じようなものだろう?」


 ……俺が聞いたところによると、セルスとクーリエ、そしてアデュールは学生時代に同期生であったらしい。その頃からずっとセルスとクーリエは仲が悪く、口喧嘩ばかりしていたとか。


 因みに同じ敷地内を移動しただけなのに俺がこんなにも疲れているのは、こいつらの仲の悪さが原因だった

りする。

 セルスの「条件」を話すとクーリエは「あんな似非医者の言うことなんて気にしなくていいのですよ、ギドゥヴィ様。」ととても黒……否、優しい笑顔で圧力をかけ……いやいや諭し出したのだ。そんな彼女を説得しここに来て貰うまで、どれだけの労力を費やしたことか。


 とりあえず俺は、子供に会うことを促した。しかし、部屋に向かう間も彼らの口論は止まらない。だんだん声も大きくなるし、暴言も増えてきた。というか、仮にも医師と神官であるはずの者が病院で罵声を撒き散らし、周りから引かれているって……この国は大丈夫なのだろうか。

 そろそろ俺が咎めようと思ったその時――


「おい。」


 ふと気がつくと俺の斜め前方、つまり俺の隣に並んで歩いているセリウス達の正面にアデュールがいた。

「お前ら毎度毎度うるさいぞ。ここは患者が寝ている部屋がたくさんあるだろうが。セリウスもそれは自分で一番分かってるだろ。クーリエだって。少しは考えろ。」

 アデュールの説教くさいセリフに、片や舌うちでもしそうな顔で(女がそんな顔をするな)、片や軽く引き攣った笑顔で(イラっときたけど言い返せなかったんだろう)黙り込んだ。


 そしてアデュールはこちらに向かって深々と頭を下げた。

「団長、見苦しいところをお見せしました。」

「ああ、いや……。」

 アデュールが謝る必要はないと思うのだが。


「というか、あれ、もしかして鍵閉まってる?」

「ああ。『ナウティア』が逃げないように掛けておいたんじゃないのか?」

「いや僕は掛けてない……本人が中から掛けたんじゃないかな? 待って、今開ける。」

 鍵をとりだしたセリウスと、会話しているアデュールに向かってクーリエが口をはさんだ。


「それはその子供の名前ですか? 『ナウティア』って……古代語で『ゼロ』という意味ですよね?」

「うん、そうだよ。」

 セリウスは簡潔に答えたが、それは一体何に対しての肯定なのか。

「まあ追々説明するから、とにかく開けるよ。」


 そう言って彼は扉の鍵を開けた。



ううん……一週間に二、三本を目指したいのですが……。

無理っぽい。(当たり前)


初めての女の人が出てきました。

彼女は【オーティカル】なので、金髪です。きっと綺麗です。


もう少し登場人物やら設定やら増えたら、それらをまとめたページも作る……かもしれません。


11/29 改行の位置、「セリウス」⇒「セルス」を変更しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ