6歳の璃子に課せられた心の重荷
母は、子供たちを集めて話し始める。「お父さんは、帰ってきません。…これからどうなるか、お母さんにもわかりません。」璃子には、悲しい気持ちは湧いてこなかった。ただ、母と一緒にいた祖母や祖父の顔色を見て、何か大変なことが起こったのだということはすぐにわかった。
「これからお父さんのことを聞かれたら、単身赴任にいっていると答えなさい。」その言葉を聞き、一生懸命(単身赴任、単身赴任…)心で繰り返し覚える努力を開始する。璃子にとって初めて聞く言葉で、言葉の意味も、そして何故そう答えないといけないのかもわからなかった。母に単身赴任の意味を聞くのは気が引けたので、兄と璃子は辞書で調べる。そして、母に一つだけ質問した。「お父さんはどこに単身赴任してるの?」「…名古屋…」「わかった、名古屋。名古屋に単身赴任してます…これでいい?」「うん、そうやね。」こんなスタートで、重荷は課せられた。
今まで嘘をついてはいけないと教えられてきたが、今日からは嘘をついていかなければならなくなったことに戸惑った。何があったかわからないが単身赴任が嘘であることはすぐにわかったから。
そしてすぐに、妹とまだ生まれない末っ子には、いつか上手に嘘がつけるように教えてあげないと…と、長女としての責任が芽生えた。6歳とは、こんなにしっかりしているのか。




