表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

第2話:王都目指して

 早朝に宿を出て、目的の街へと旅立った二人。


 だが、意外なことで『刻のやり直し』をする事態になった。──ヨーグがスプーンに捕らえられたのだ。


 ここで見捨てては、プリンは女王失格。仕方なしに、何度か『刻』をやり直して、ヨーグに妖精攫いの情報を流して、様子を見守った。


 結果、丸一日近く『刻』を巻き戻したのだけれど、プリンもヨーグもスプーンの魔の手から逃れられた。


 そうしてから、ようやく目的の街へと旅立てる。


 目指す街が『王都』と知ったのは、旅して三日ほど経った時のことだった。


 妖精とエルフの住む、『森の国』とは違い、華やかな街であるそうだ。


「でも、実際問題、武闘大会と魔闘大会が終わったら、即座に帰国しないとならないね」


「安心して子供を産む為だ。仕方ない」


 ジェリーとしては、プリンが身重の身で旅立つのは反対の意見だったのだが、プリンが強硬に旅に出ることを固持したのだ。


 ならば、女王がプリンを旅立たせるのはプリン可愛さ故の判断だった。可愛い子には旅をさせよ、と云う訳である。


 ヨーグによる暗殺と、スプーンに因る捕縛の両方から回避する上に、スプーンに因るヨーグの捕縛も阻まねばならない。


 実際、一日一回は『刻のやり直し』を行なったのだけれども、それだけで、一週間の旅路は体感一ヵ月の旅となった。


 特に、スプーンに因るヨーグの捕縛を阻むのが、大変で面倒で更に、ヨーグそのものも脅威なのだ。


 殺意と云う点に於いては、ヨーグが最も脅威なのだ。スプーンの場合、一度捕らえられても、逃げ出せれば『刻のやり直し』をしなくても済む。現実問題、逃げ出せる保証はないので『刻のやり直し』に頼っているが。


 一方で、休憩時間の一部を割いて、ジェリーは剣の修行を、プリンは魔法の修行を行なっていた。特にプリンは、虫網程度なら、焼き払って脱出する程度の、火魔法と魔法の結界の体得に成功した。だが、恐らく一度しか通用しない手段だろうと、それらの魔法は熟練度を上げる為に修行しているが、その存在を隠匿していた。


 そして、その結界を張る事で、ヨーグに因る暗殺を防げることも判明した。タイミングさえ分かっていれば、一回の『刻のやり直し』で防げるようになっていた。


 その一方で、ヨーグは吹き矢以外の暗殺方法を考えるようになっていた。


 ヨーグは、恐るべき手段を思いついた。『将を射んとする者はまず馬を射よ』と云う言葉に倣い、ジェリーの命をも狙うようになったのだ。


 より強い毒を、と求める中で、一度、ヨーグが毒の取り扱いを間違えて自身の死を招いた。プリンは妖精のシンパシーでヨーグの死を知り、その時は、原因が原因だけに、ジェリーとプリンには意味が分からず、十度以上も『刻』をやり直した。


 自業自得と思わないでもないが、プリンが女王になる為には、救える範囲内の妖精は救わなければ、女王失格と云うのだから、タチが悪い。


 別に、望んで女王になりたい訳では無かったが、『女王失格』の烙印を押されると云う恥をこそ、プリンは恐れていた。


 だが、ヨーグの死因が判った時、二人は毒の取り扱いを気をつけるよう、ヨーグに助言をしただけで、対策を特にしなかった。


 フェアリーの身長は、約十二センチ。一方のジェリーは百八十センチ。ジェリーを死に至らしめる毒は、匂いだけでヨーグには致死量として充分だった。ただそれだけの話である。


 結果、原因が判明してから三度に渡る強い警告をしたことで、ヨーグはその手段を断念してくれた。


 今回、『刻の繰り返し』から逃れたのは、それが原因であったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ