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プロローグ

 まず始めに、六周を要した。


 そして、七周目の二人は、決意を新たにフェアリー・クイーンへの謁見に再度向かった。


「いらっしゃい。──あら。既に『(とき)の加護』を得ているのね」


 フェアリー・クイーンたるプメルフ・エッグは二人にまず、そんな言葉を掛けた。


 この、プメルフ・エッグと云う女王が、七七歳にして、尚未だとびっきり美しい。金髪に、右目が紅、左目が碧と云うヘテロクロミアの美貌を誇っていた。


 一方、謁見に訪れた一方、プリン・エッグと云うフェアリーも、親であるプメルフ譲りのとびっきりの美貌を誇っていた。右目は翠、左目は蒼のヘテロクロミアで、髪は金色だ。しかも、未だ三歳 (人間換算で二十歳相当)という美しい盛りで、その奇貌を持ちながら、流石は『次期女王候補の筆頭』と言われるだけはある。


 もう一方はフェアリーではなく、エルフの男性、ジェリー・ゼラチンであり、彼も種族の特性に因り、美貌を誇っていた。実は、彼こそが、プリンが『次期女王候補の筆頭』と言われる所以であった。


 フェアリーは女性のみの単性種族。故に、子を授かるには人に化身し、主に人間の男性の精を受けなければならない。が、相手がエルフだと、状況が変わってくるのだ。


 エルフは性欲に乏しい。そして、その先祖を辿ればフェアリーと由来を同じくする種族であった。


 故に、エルフの子を授かったフェアリーは、次期の『女王候補』として、かなり強い権利を得る。同時に義務も。それは、必ずフェアリーとして生まれるその子供にも権利と義務が生じる。親は、子が成熟するまでの『お代理』でしかない。


 そんな二人に、六周前に、フェアリー・クイーンたるプメルフは『刻の加護』を与えていた。


 かなり強力な加護だった。プリンには特に『七時間の死に戻り』、加えることの、純粋なブドウ糖を摂取することでの『七時間の刻のやり直し』の加護を。ジェリーには、空砲の拳銃を撃つことでの『七時間の刻のやり直し』と云う加護が与えられていた。


 そして六回、プリンは暗殺された。七時間以内に。


 最初の三回は、回避を試みた。そして後の三回で、暗殺を仕掛けてくる相手を見極めた。


 犯人はフェアリーの中に居た。プリンも既知の相手だ。名を、ヨーグ・ルートと云う。次期女王の座を、強く望んでいる者だった。


 暗殺の手段は、吹き矢。どうやら、致死性の毒を塗っているらしかった。


 その話を聞いたプメルフは、王宮勤めの者に対して、ヨーグ・ルートの捕縛命令を下した。


「いえ、それを望んで対象を絞ったのではありません」


「では、二人で乗り越えられるような性質のものなの?」


「……追っ手に犠牲者が出かねません」


「成る程」


 下した命令は、実行に移される前に取り消された。


「──で?あと何周で切り抜けるつもりなのです?」


「出来れば、今周にて」


 相手が分かり、手段が分かり、タイミングもほぼ分かっている。


 ならば、今周で切り抜けるのは難しくない理屈だろう。そのタイミングより前に相手を発見していれば、比較的容易い。


 二人は、報告程度の謁見を終え、ヨーグとの対決の時に備えた。


 妖精の森を出た直後。ヨーグは、プリンの命を狙ってくる。


 一発目を回避出来る立ち回りは、既に心得ている。プリンがフェアリー形態で、ジェリーの左肩に乗ればいいのだ。


「ヨーグ!」


 その瞬間に、プリンはヨーグの名を叫んだ。ショックで硬直した姿を、プリンは発見した。


「もう当たってはやらないわ!」


 フェアリーには致死性の毒でも、エルフであるジェリーには効かない。全くの無毒と云う訳でもないが、ちょっと具合が悪くなる程度だ。


 然程多くの弾数を用意しているとも思えない。案の定、七発を放った時点でヨーグは動揺し、それでも隠し玉の一発位は持っているだろうと、警戒をしながらも二人はその場を立ち去る。


 二人はこれから、七週間で帰国する旅へと旅立つ。


 そして、当初は予定には無かったのだが、二人は護身の術を身に着ける為、ジェリーは武闘大会に、プリンは魔闘大会に出る覚悟を決めていた。


 それらの大会で二人とも優勝出来たら、十分な護身能力を得ていることだろう。


 ハネムーンの筈が、違う意味で浪漫を求める旅になりそうだった。

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