第十六章 ③新しい友人
稲佐の浜。
ふたりは花茣蓙に並んで座る。
静かに海を見つめている。
青年は流麗に語り出す。
「凛花さんが放つ瑞光オーラ。
恵利原の天の岩戸のオーロラペン。
これらは極光の原理で発光させています。
プラズマ粒子と磁場の関係です。
新時代は。
神々の任務のすべてがデータ化されています。
緻密にプログラミングされています」
「先進的プログラムとは驚きです。
つまり龍使いの任務も。
システムプログラムによるものなのですね。
『伝承』だと思っていました」
「瑞光オーラには『引力』が込められています。
龍使いと是・契約者が出会うことは偶然ではありません。
必然的に。
契約締結へと促されています。
これらも設定されています」
「引力……。
そうだったのですね。
だから行く先々で。
是・契約者との出会いがあるのですね」
「是・契約者は。
『誉』を手中にするわけですが……。
誉には『斥力』が込められています。
斥力作用によって互いを遠ざけ、跳ね返します」
「斥力……。
それで是契約者と再会しないのですか?
生活圏が重なっていても擦れ違うことすらない。
邂逅しないことが不思議でした」
「これは凛花さんを護るために。
龍神界が定めたものです」
「あのっ、それでも!
是・契約者と再会することは可能ですか?」
「いえ。基本的に再会は不可能です。
斥力に逆らってまで再会を目論んだ……。
その時点で『否の制裁』確定となります」
「……そう、ですよね……」
青年は小さく息を吐く。
「しかし例外として。
龍使いが強く再会を望んだ場合のみ。
可能かもしれません」
凛花は目を瞠る。
「例外があるのですね?
その場合、契約者は制裁されずに済みますか?」
「さあ? 知りません。
推測ですので断言できません。
しかしながら。
是・契約者が瑞光オーラを再度目にすることは危険です。
そこには何らかの『対策』が必要だといえるでしょう。
……この話はもうお終いにしましょう」
凛花は問う。
「あのっ!
ノアとコン太をご存じですか?」
「はい。とても仲睦まじい龍神カップルですね。
そして凛花さんのことを大切に想っています。
あなたは龍神界から家族として認められています。
さらにフィールリズムは最大値を振り切っています。
これは驚異なことです」
「……本当に。
すべてをご存じなのですね?
今さらですが……。
貴方はどなたさまでしょうか?
高貴なる御方であることは既に察しております。
非礼や無礼があったら申し訳ないです」
「ああ……、そんな堅苦しくならないでください。
うーん……。
イレーズの親友、ですかね?」
「イレーズさんの……。
では『魔導師四人衆』のおひとりですか?
四人衆は天才的カリスマ。
ハイスペック天上人だと。
コン太から聞いています」
「ハハ、残念!
ハズレです」
「わわっ、申し訳ありません!
思い込みで発言してしまいました」
青年は微笑む。
「ですが。
魔導師たちと親友であることには間違いありません。
そして今日からは。
凛花さんの友人でもありますよ?」
「私と友人になってくださるのですか?
わあ、どうしよう!
嬉しいですっ。
では友人として。
お名前を伺ってもよろしいですか?」
「うーん、そうですね……。
太郎(仮名)。
そう呼んでください」
「はいっ! 太郎さん。
よろしくお願いいたします」
「よろしく。凛花さん……」
これは出雲の御利益だろうか。
これは本物縁だろうか。
凛花に、新しい友人ができた。




