表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/142

第十三章 ② 凛花の質問

 人間はふたつの潜在(せんざい)リズムを保有している。

 ひとつは『グラビリズム』。運を引き寄せる力。

 もうひとつは『モアレリズム』。運を広げる力。

 是・契約者に選出される条件として。

 どちらかのリズムが最大値でなければならない。


 龍神界と契約が成立すれば。

 お墨付きの(あかし)(ほまれ)』が与えられる。

 そうして圧倒的成功者へと導かれていく。

 しかし。

 リズムを最大値まで引き上げられる人間は一割程度。

 さらに。

 リズム最大値をキープできるのは五百日前後。

 そのタイミングに。

 『龍使い』と出会わなければならない。

 その確率は限りなくゼロに等しい。


 自らが有する稀有(けう)なる才能に気づけぬ者。

 努力が及ばずリズムを最大値に引き上げられない者。

 その他、経済的事由(じゆう)

 出生地の事情など。

 環境不遇(ふぐう)による才能開花の困難者が多く存在している。

 それこそが歯がゆく(なげ)かわしい現実である。

 大抵の人間は『(ほまれ)』と無縁のまま生涯を終える。

 是・契約者が如何(いか)に幸運であるかを思い知る。


 赤煉瓦ベル。

 最強コンビは和気あいあい。

 ほのぼのティータイムの真っ最中だ。


 コン太はしみじみ語り出す。


 「人生ってさ。

 最大限の『努力』と空前絶後の『運』が必要なんだよ。

 だけどさ。

 是・契約者だからって良い奴ばかりとは限らないだろう? 

 いつの間にか高飛車になって。

 姑息で意地汚くなって。

 自分は特別だと勘違いして。

 『エラー人間』に(へん)じてしまう。

 人間の心は動くし変わる。 

 だから良い状態を持続して保つことが難しい。

 つくづく(むな)しい生き物だよな」


 ノアは首肯する。


 「嘘や裏切り。

 誤魔化しや言い訳。

 詐欺や搾取(さくしゅ)……。

 自利(じり)(まみ)れた人間ばかり。

 ときどき吐き気がするわ」


 ふたりはしかめっ(つら)をする。

 人間に対する嫌悪感(けんおかん)(あら)わにした。


 凛花は問う。


 「だけど。

 龍神は大嫌いなはずの人間のために働いている。

 護り、叶えている。

 それはどうして?」


 ニカーッ! 

 コン太は笑顔で答える。


 「未來王だよ!

 未來王から与えられた(たっと)き使命だからさ」


 「そういえば。

 トールパパと乱波(らっぱ)五大龍神も『未來王』って言っていた。

 もの凄い御方(おかた)なのね?」


 「そうさ!

 (たと)えようがないほどの(たっと)き御方なんだ」


 ノアが説明する。


 「瑞光オーラは龍神界から。

 フィールリズムは未來王から(たまわ)っているの。

 どちらも甚深(じんじん)崇高なるエネルギーよ」


 コン太は高速で頷く。


 「そもそも凛花を龍使いに取り立てたのは未來王だ。

 つまり要するに!

 凛花は未來王の弟子のひとりってわけ!」


 「そうだったんだ! 

 いつか直接お会いして、お礼を言いたいなあ」


 コン太は持論を展開する。


 「是・契約者はさ。

 陰の努力家で負けず嫌い。

 そして『揺るがぬ決意』を持っている。

 頑張り屋の類型(タイプ)が多い。

 彼ら(彼女ら)は夢を叶えるために。

 必死になって踏ん張っているんだ!

 もともと人間に備わっている能力に大差はない。

 辿(たど)経過(プロセス)によって。

 相違(ギャップ)(しょう)じているだけなんだ(と思う)」


 ノアが補足する。


 「確かにそうね。

 頭が柔らかくて先進的(イマドキ)な人間が多いわね。

 周囲と違った視点で物事を(とら)える力があるの。

 是・契約者を目指すなら。

 胆力は強く、視野は広くするの。

 そうすると。

 『絶対的引力』に当たる確率が高まると思うわ」


 コン太がまとめる。

 「そうして。

 絶対的引力に当たったら超ラッキー! 

 必然的に善なる未來に導かれて行くってわけさ」


 ティータイムを終えた。

 凛花が問いかける。


 「もしも……。

 もしもだけどね……? 

 龍使いが『()契約者』と再会したらどうなるの?」


 思いがけない質問だった。

 コン太は眉をひそめた。

 ノアが返答する。


 「それはね、良い結果にならないからよ?

 是・契約者が龍使いと再会することは危険なの。

 欲望が過剰増幅(かじょうぞうふく)して破裂してしまう……。

 そう()われている。

 だけど実証されていないから。

 真実は分からないのよ」


 凛花は一刹那(いっせつな)、絶句した。


 「…………。

 そっか……、わかった。

 変な質問してごめんね?」


 コン太とノアは怪訝(けげん)に顔を見合わせる。

 凛花は平静を装っている。

 しかし明らかに意気消沈していた。

 ふたりは凛花を励ます。


 「おいらたち『最強コンビ』の役割は『応援』さ!

 ひとりでも多くの人間が『(ほまれ)』を手中にできるように!

 頑張れ、頑張れ! ってさ」


 「是・契約者には共通点があると思うの。

 まずは卑屈(ひくつ)傲慢(ごうまん)から脱却する。

 そしてあと一歩の壁((から))を破るために必死に足掻(あが)く。 

 そんなタイミングに。

 龍使いと出会っている気がするの。

 これからも夢を叶える応援をしたいわね」


 「そうさ! 

 凛花は今まで通りでいい。

 飾らない心で任務を遂行(すいこう)する。

 それだけでノープロブレム!」


 「そっか……、そうだよね! 

 元気に任務を頑張らないとだねっ!」

 

 コン太が思いつく。


 「ああそうだ、良いことを教えてやる。

 その名は『本物縁(ほんものえにし)』!

 龍使いも『本物』とだけ。

 ご縁を結ぶことが許されているんだ」


 凛花は驚く。

 前のめりになる。


 「この先に。

 新たな(えにし)があるってこと?」


 「そっ! 

 もの凄く希少(きしょう)で限定的だけどさ」


 「出会うとわかるものなの?」


 「たぶん圧倒的引力で()せられて()かれるはずさ。

 何しろ『本物』だからねえ?

 日々に感性を磨いて視野と思考を広くする。

 そうすると。

 『本物縁(ほんものえにし)』に出会う確率が高まるんだ」


 「わあ、そうなんだ!

 もし出会えたら親友になれるかな?」


 「うっ? 

 ううーん…………。

 たぶんそれは。

 天文学的確率だと思うけど、ねえ?」


 「でもっ、それでもっ!

 確率ゼロじゃないんだよね?

 新たな友達ができるかも知れないんだよね?」


 ノアは微笑む。


 「ええ、もちろんよ。

 生きている限り『本物』に出会える可能性はあるわ。

 おばあちゃんになったって、ね?」


 「イヒヒッ! 

 もしも『本物』に出会えたならさ?

 そのときは勇気をふり絞って『友達』になってもらえばいい。

 おいらはこの先の未來が楽しみで(たま)らない。

 ゾクゾクワクワクして震えるほどだよ!

 だからこれからも一緒に遊ぼうねえ?」


 凛花は笑顔で頷く。


 「私ね、命尽きるまで龍使いの使命を(まっと)うする。

 そして大切な家族と一緒に生きていく。

 ずっとずっと一緒に遊ぼうね!」


 凛花は確信していた。

 神秘的直観(ハンチ)を得ていた。


 ……きっともうすぐ。

 新たな友人ができる……!

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ