そして、スピンオフ 秩父札所20番
秩父市野坂町。
西武秩父駅。
凛花とノア。
特急電車・ラビューを降りた。
凛花の心は浮き立つ。
大はしゃぎだ。
「わあっ、祭りの湯だって!
建物が素敵だねっ!
どうしよう……。
お土産も買いたいし……。
わらじかつ、豚みそ丼、お蕎麦もある!
どこで食べるか迷っちゃうっ」
くすり、
ノアは笑う。
凛花を諫める。
「ふふっ。
今日の目的……、
何だったかしら?」
「あっ……!
ビー玉交換っ」
小鹿野・栗尾線の西武バスに乗車した。
街並みを抜けて秩父橋を渡る。
『札所二十番入口』停留所で下車した。
目的地はもうすぐ。
ここから徒歩、数分だ。
秩父市寺尾。
秩父札所・二十番。
階段わきの駐車場で待ち合わせ。
コン太の到着を待っている。
駐車場に車が入って来た。
ピタリッ、
ふたりのすぐそばに停まった。
熊谷ナンバーのコンパクトカーだ。
親子だろうか……。
運転手は中年女性。
後部座席には若い男性と若い女性が乗っている。
そしてなぜか……。
助手席にはコン太が座っていた。
バタンッ、
車から降りてきた。
「イヒヒッ!
おまたせえっ」
凛花はわずかに戸惑う。
見知らぬ家族にご挨拶する。
「えっと……、始めまして。
凛花と申します。
コン太とお知り合いですか?」
ノアは少し考えこむ。
それから言葉を発する。
「……あら?
あなたたち……、
どこかで見たことあるわね?」
コン太が紹介する。
「こちらの三人は! 王の関係者だよ。
兜率天からの『サポートメンバー』だよ!」
ノアは閃く。
「あらあっ、カールン!
それから。
タンタン、リナリアねっ!」
コン太は凛花に耳打ちする。
「コショコショ、
この人たちはね……、未來王の……、
伯母と従兄妹……、
だけど前世の記憶は消されてて……、
今は親戚として……、
王の家族……、。
ちなみに。
サポートメンバーはさ……、
世界中に、……万人居るんだよ……」
凛花は感激する。
「わあっ!
太郎さんのご親戚なのですね!
お参り……、ご一緒しても宜しいですか?」
カールンは笑顔で頷く。
「札所二十番にはもう何十回も来ています。
毎回、ビー玉交換しています。
今日はちょうど帰省していたので。
息子と娘を連れてきました。
夫は仕事です」
ノアは尋ねる。
「ねえ、カールン……。
ほんとに全然、記憶無いの?
タンタンとリナリアも?」
こくり、
カールンは気まずげに頷いた。
「そうなんです。
何も覚えてなくて……。
ですが。
日常に不思議な出来事が起こります。
神秘的現象の遭遇確率……、
半端じゃないです」
コン太は笑う。
「イヒヒッ!
そりゃあ……、そうだろうねえ?
王に関わるってことは……!
エキサイティングになるよねえ?
面白い人生だねえ!
それじゃあ、そろそろ。
お参りにしゅっぱーつ!」
コン太とノアと凛花。
カールン家族。
札所二十番の階段を降りる。
まずは観音様に手を合わせる。
それから内田家当主にご挨拶した。
カールンは慣れたもの。
交換用のビー玉を持参していた。
竜胆色龍神宇音と龍玉交換する。
タンタン、リナリアも楽し気だ。
凛花とノアは百円で交換する。
どれにしようか……、迷う。
直感で決める。
小粒のビー玉を選んだ。
「ねえねえ、これなんだけど……、
ある人物からの差し入れです。
そうぞ!」
コン太は内田家当主に小箱を手渡した。
箱の中には。
たくさんの『ビー玉』が入っていた。
ノアは目を丸くする。
「これって……?
もしかして……?
ねえっ、凛花!
また近いうちに必ずっ!
『ビー玉交換』に来ましょうねっ」
凛花は即座に察する。
「うんっ!
できれば明日っ、すぐに来ようねっ」
秩父札所・二十番。
岩之上堂。
堂主・内田家。
山号は法王山。
本尊は聖観世音菩薩。
そして……。
どこかに竜胆色龍神ウオン。
運が良ければ。
座敷童に会えるかも……?
次回の。
『そして、スピンオフ』
それは箱根芦ノ湖・九頭龍神社……。