第三十三章 ③三六九の龍華会(目指すべきもの)
黄金結界上。
キラリッ!
ピカアアアアァッ……!
天日と幻日。
ふたつの太陽が輝きを増した。
神々は『未來の教示』を求める。
教戒指導を希う……。
龍華樹の下。
未來王は啓す。
「人間として。
太郎として。
人間界に暮らして二十年以上が経過いたしました。
日々に四人衆の協力を得ながら。
様々な人種類型の分析検証をしております。
残念なことに。
この地球は。
善人を装った悪人間が支配しています。
この現世は。
嫌忌類型が操縦しています。
それなのに大衆は。
この『不平等世界』に疑問すら抱いていませんでした。
危機感なく当たり前に受け入れていました。
それは何故だろう……?
疑問を抱きました。
その要因は『なにも知らない』ことにありました。
上っ面、軽薄、表面的……、
そんな『皮相的類型』。
そのあまりの多さに愕然としました」
凛花は声を上げる。
「皮相的類型から脱却するためには。
どうしたら良いのでしょうか?」
「人間が何より恐れなくてはならないのは。
『無知』です。
調べもせず。学びもせず。
第三者の言葉を鵜吞みにするから間違うのです。
教唆する者たちはターゲットに対して。
言葉巧みに懐に入り込み『弱点』を突きます。
被害者はおだてられ。唆され。
丸め込まれて『捨て駒』にされます。
洗脳・暴挙・呵責拷問など。
理不尽から遠ざかるには自己防衛しかありません。
不用意に。
生命までをも搾取されてはならないのです。
泥沼に嵌まって堕ちきってしまう前に。
まずは多方面から情報を得ることが肝要です。
ときに四大マスメディアの活用。
ときに文献書物に触れるなど。
多方面からの情報収集が不可欠です。
面倒がってスマホに依存する。
そんな安直手軽な日常では頭脳の衰えは加速します。
『安易なイマドキ』イコール『頭脳の退化』だと知るのです。
日本人は海外の方々と比べて。
危機意識が低い気がします」
「現状のままだと。
霊界に堕ちる方々が大多数の気がします……」
「そうかも知れません。
しかしながら。
然るべき処罰を受け、改悛の心が芽生えれば。
掬われる可能性はあります。
『神池の掬い』によって。
黄泉界へと転送されるかも知れません。
チャンスはわずかですがゼロではありません。
転生への一縷の望みが残されています。
ですから。
たとえ奈落に堕ちても希望を失わないでください。
とは言え……。
奮励しない者が掬われることはありません」
凛花は希う。
「神々から愛される人間になりたいです!
どうか……! ご教示願いますっ」
未來王は啓示する。
「知識を深めて……。
知見を広げて……。
『有智』になることです。
知恵の加増は人生を豊かにします。
日々に自らの潜在能力を高め。
見る目を養い。
適性判断できる類型へと『進化』するのです。
さらには。
周囲への配慮、バランス感覚が求められます。
この先の未來は。
『柔軟類型』の増加増殖を願います」
神々は一斉に肯う。
未來王は続ける。
「人間は『この世の果て』を生きています。
そして。
『この世の春』を謳歌しようと躍起になっています。
欲張って貪って。
取り合って争って。
そうして自滅しています。
過剰な自尊と闇雲な比較が。
適正感覚を狂わせているのです。
しかしその対極に。
恵まれない境遇や環境の中。
ひたむきに努力を重ねて奮闘している方々が居られます。
新時代の神々は生命体の『努力の結晶』に対して。
『付加価値』を与え『成果増幅』させることが可能です。
頑張っている方々を見つけたら。
是非とも積極的に応援してください。
惜しまず加点付与してください。
そうして爽快なる転換期へと善導してください。
できれば。
そっとさりげなく、お願いいたします」
神々は深遠に得心する。
一斉に肯った。
未來王は締めくくる。
「我らは新時代の魔導師です。
絶念せず。
投げ出さず。
相応世界を目指しましょう。
どうかどうか、お願いいたします……。
……ああ、すみません。
すでにタイムオーバーです。
それではまた。
サムデイッ」
シュンッ……!
未來王は消えた。
即刻。
ゲイルが右手を掲げた。
「刻下。
転瞬送信を受けとった。
未來王よりお言葉を賜った。
皆々、拝聴せよ」
ピシッ!
八百万の神々襟を正す。
一同、耳を傾ける。
シップが伝達する。
「では。
感応受信したままに述べる!
『……神々の皆さん。
途中退席してしまって申し訳ありません。
大学の講義が必修なので外せなくて……』
…………。
……え?」
シップは思わず口籠る。
こほん、
小さく咳払いした。
威儀を正して言葉を続ける。
「えー…………、
『本年のカミハカリは大変喜ばしく。
なかなか面白かったです。
なんとなく気分がいいので未來を演算してみました。
その結果。
意外と思いのほか。
良くもないけど、悪くもないみたいです。
ということで!
兜率天より。
天赦・恩赦・叶えの呪術……。
大盤振る舞いいたします!
神々の皆さんは叶え・掬い・癒しを!
万物に向けて存分にお与えください。
どうかこの贈物は。
ケチケチせずに付与してくださいね!
それではお元気で!』
…………?
以上……、である」
…………わ?
わあああああああっ……!
うおおおおおおおおおお……!
やったああああ……っ!
広大無辺なるご恩情に。
数多の神々から大歓声が上がった。




