第三十三章 ②三六九の龍華会(教示)
黄金結界上。
龍華樹の木の下。
表裏龍王が懇願する。
「未來王!
神界と魔界の霊獣について!
お聞かせ願います!」
……わあああああっ!
八百万の神々から歓声が上がった。
未來王は小さく息を吐く。
余儀なく頷いた。
「まずは基礎から始めます。
主に神界を棲み処にしているものを。
『神霊獣』と呼称します。
龍神や天馬。獅子や白虎。
五色鷹や鳳凰。麒麟や白象。
狛犬や牛羊。白獏や天狐。
銀狼や天猿など……。
実に多種多様です。
そして。
魔界を棲み処にしているものを。
『幻妖霊獣』と呼称します」
凛花は問う。
「幻妖霊獣……、ですか?」
「例えば。
不死鳥やユニコーン。
ロック鳥やグリフィンペガサス。
ああ、それから。
冥界には魔界龍神もたくさんいます。
ペルーダ、タランタシオ、ヴィーヴル、ウロボロスなど。
数多くの魔界ドラゴンが暮らしています」
「わあっ!
魔界ドラゴンですか?」
「そうです。
魔王の足元には通称『ファフ』。
ファフニール・ドラゴンが寝そべっています。
魔導師四人衆にもよく懐いています。
実に可愛いです」
「ですが。
冥界とか……。
魔界とか……。
少し怖いイメージがあります」
「ハハ、確かに?
神界の神霊獣よりも。
魔界の幻妖霊獣のほうが。
ほんの少し狂暴かもしれません。
ですが実のところ。
霊獣のすべては『魔界所属』です。
そしてイレーズと魔王が。
すべての霊獣を統括しています。
それが『カリスマ神霊獣使い』の所以です」
「新時代では。
すべての霊獣が仲間なのですね!」
「そういうことです。
旧体制では。
神界と魔界には境界がありました。
苛辣『棘結界』が張り巡らされていました。
しかし新時代となり。
刺々しい結界は完全撤去しました。
つまり現今。
神界と魔界には境界がありません。
霊獣たちは無境界空間を縦横無尽に駆け回っています。
ですからもしかすると。
バッタリ、
幻妖霊獣に会うことがあるかもしれません」
凛花は瞳を輝かす。
「いつか……、
幻妖霊獣たちにも会ってみたいです」
「いささか強面狂暴ではありますが。
どうにも憎めない可愛さがあります。
まあ不意に遭遇したとしても。
龍使いである凛花さんならば無難かと思います。
ですが基本的に。
幻妖霊獣と触れ合うことは危険です。
会ったらお終いかもしれません。
恐らくたぶんですが……」
凛花は姿勢を正す。
改まって問いかける。
「旧体制から新体制に……。
急激な移行による変化は。
霊獣たちにも影響が生じたのですか?」
シュパッ!
コン太が勢いよく挙手をした。
やにわに会話に割り込んだ。
「変化……?
大ありだよ!
変化……、しまくりだよっ」
コン太は興奮して喋る。
「霊獣は神々の眷属とか?
神々の使者とか?
良いように言われているけどさ?
そもそも旧体制では。
格下の奴隷扱いだったんだよ。
鞭打たれて。踏みつけられて。
威圧制圧されてさ?
まるでサーカス団の檻に閉じ込められている気分だった。
あげくに時として。
天敵だとか?
仇だとか?
悪者扱いされてさ……。
実のところ。
霊獣たちはメチャクチャ不満を募らせていたんだ。
時代遅れの旧体制……。
ほとほと嫌気がさしていたんだよ」
「奴隷……? 仇……?
そう、だったんだ……」
「イヒヒッ!
だけど遂に遂に!
ジャンジャカ、ジャカジャーンッ!
新時代が到来したってわけさ!
未來王は即座に。
古めかしい因習や固定観念を解き放った。
神仏と霊獣の主従関係を即刻廃止にした。
だから今じゃ、神も仏も! 天使も堕天使も!
天人も悪鬼も! 聖獣も魔獣も!
過去を水に流して『対等関係』になったんだ。
要するに、みんなみんな!
未來王の『仲間』であり『友達』ってわけさっ」
「うっ、わあっ!
なんて素敵なのっ……」
未來王は微笑む。
「人間は……。
なぜでしょうか……?
『霊獣』に対して、大変好意的だと感じます。
中でも『龍神信仰』は最たるものです。
人間が龍神を崇拝し敬う。
縁起物と慕い親近感を覚える。
これこそが。
『六世界一体』の裏付けかもしれません。
新時代において。
天界冥界は緊密に繋がっています。
連携し協働体制にあります。
すべての神々が友好関係にあるのです」
八百万の神々は大喝采を送る。
霊獣たちは歓呼する。
魔導師四人衆は愉快気に笑った。




