第三十二章 ③ネオフューチャー・ドラゴンゴッド(2)
黄金結界上。
雷紋は上機嫌だ。
しかし。
コン太の心情はややこしい。
「うーむむ……、
何だかおいら複雑な心境だよ。
愛するノアと結婚できる!
そりゃあ嬉しくって宿願成就さ?
だけどさ?
姫子の嫁ぎ先、すでに決まっているなんてさ?
寂しいような?
切ないような?
うーむむ……、ノアはどうだい?」
ノアは眉を下げる。
晴れやかに笑う。
「もうっ!
嬉しいに決まっているでしょう?
だってこの先の未來……。
コン太と永遠に一緒に居られるの。
そして愛の結晶を授かるの……。
それに雷紋なら。
掌中の珠として大切にしてくれるはず」
「ふーむ!
まあ確かにそうかもねえ?
なんだかんだ雷紋は良い奴だからねえ?
やっぱり最高に幸せだねえっ」
ノアは改まる。
雷紋に伝える。
「私はコン太と幸せになるわね。
そして元気な子を産んで大切に育てるわ。
雷紋はしっかり身を清めて!
『本物縁』を迎えてね?」
コン太は忠告する。
「浮気は断じて許さないからねえ?
制裁の覚悟、しておいてねえ?」
雷紋は即座に諾う。
しかしわずかに。
気まずい顔をする。
「コン太……、今更だが謝りたい。
我は幼い頃からノアが好きだった。
我には複数の妻が居て多くの子が居る。
だがそれでもずっと。
ノアを恋い慕っていた。
密やかに愛し続けていた……。
我を許してくれ。
済まなかった」
コン太はにんまりする。
「イヒヒッ!
実はさあ?
そんなのとっくに気づいてたよ?
だけどわざと知らん顔をしてたんだ。
だってさ?
最強モテ龍神が本気のライバルだったら……。
おいらはきっと負けていただろうからねえ?
雷紋が表王家の嫡男で助かったんだよ」
雷紋は龍眼をつり上げる。
コン太を怒鳴りつける。
「この愚か者っ!
どれほど強くコン太を想っているか……!
ノアの愛を見くびるなっ」
プイッ!
ノアは顔を背けて横を向く。
「私への愛情……、
その程度ってことね?
ガーッカリ!」
コン太は慌てふためく。
「うへえ?
うへえええええっ?
違うっ、違うよ!
ノアはおいらの宝だよ!
ノアがおいらのすべてだよっ!
後生だよっ!
許しておくれよおおおっ」
ノアは涙を湛えて笑う。
コン太を抱きしめた。
「もうっ、馬鹿ね……。
許してあげるっ」
「ワッ……!
ワオオオオオオォーーーンッ!
おいら幸せすぎて完敗だよっ!
今日は嬉しすぎて涙が止まんないよっ!
ワオオォォーーーーーーンッ」
コン太は喜悦の雄叫びをあげた。
ノアは柄にもなく号泣している。
雷紋は無邪気に笑って泣いている。
表裏の龍王夫妻は目を細める。
三尊の姿を見つめて咽び泣く。
……まるで幼子のようだ。
しかしこの三尊が軸となる。
龍神界は進化する!
洋洋たる未來に思いを馳せた。
ジワリ、ジワリ…………、
独身女龍神は狙いを定めていた。
竜胆色龍神宇音にロックオンした。
ウオンを取り囲む。
熱狂的な歓声を上げる。
熱烈求愛を開始した。
宇音は苦笑する。
危険を感じて後退る。
……ピュン!
尻込みして逃げ出した。
「宇音さまぁ!
お待ちになってぇ!」
どうやらこの先。
ウオンはモテモテ人生になりそうだ。
未來王は告げる。
「おそらく。
秩父札所二十番での『ビー玉交換』は引力が増大します。
『幸縁善縁・良友益友・好運人気運』など。
多くのご利益に恵まれることでしょう。
龍玉を八個集めて『ラージ』。
八十八個集めて『ヒュージ』。
八百八十八個集めて『インフィニティ∞』ですかね。
上々縁……。
手繰り寄せていただきたいですね」
神々は頷きあう。
拍手喝采をおくった。




