第三十二章 ②ネオフューチャー・ドラゴンゴッド(1)
黄金結界上。
スッ……!
魔導師四人衆は未來王の背後に並び立つ。
シップはため息を漏らす。
八百万の神々にくぎを刺す。
「皆々よ……。
我らは『太郎』と友人であり仲間である。
しかしながら。
本年本日。
『未來王』としての任務を兼ねている。
その旨、弁えよ」
「ははっ!」
神々は冷や汗をかく。
慌てて平身低頭してひれ伏す。
思いがけない未來王拝謁の好機を得た。
ついつい舞い上がってしまった。
未來王は謝意を述べる。
「燦紋、ユウイ、雷紋。
トール、ミュウズ、ノア。
そしてコン太。
乱波。宇音。
数多龍神たち……。
凛花さんを龍神界の家族に迎えてくださいましたこと。
深謝いたします」
龍蛇神王燦紋は叩頭する。
「貴きお言葉!
恐悦至極に存じます。
聡く純真な龍使い現出により。
多くの成功者が顕れております。
誠に喜ばしい限りにございます」
黄金龍王トールは首を垂れる。
「凛花は龍神界の宝です。
我ら龍神の家族です。
しかしまさか……。
カリスマ神霊獣使いのディアーになるとは!
思いもよりませんでした……」
フッ、
未來王は口角を上げる。
「龍神界と凛花さんの関係性。
それは神的愛です。
実に明媚です」
スッ、
未來王は雷紋を指さした。
「至極色龍神雷紋。
あなたに『お願い』があるのですが……」
雷紋は即座に応える。
「はっ!
何なりとお申し付けくださいっ」
王は静かに述べる。
「雷紋……、
貴方は表龍王家の嫡男です。
龍神界繁栄のために尽力しています。
しかし本意ではないですね。
裏腹なる日々。
さぞや苦痛だったことでしょう……」
「いっ、いえっ!
そんなことは…………」
「刻下、本日付にて。
複数愛者任務、満了といたします。
そして只今より。
恵利原の禊瀧にて。
『禊祓』に徹することを命じます。
禊祓完遂後。
『本物縁』の正妻を迎えます。
五十年後、ここ出雲にて。
盛大なる『婚礼の儀』を執行しましょう」
雷紋は戸惑う。
恭謙しつつ異議を唱える。
「勿体なきお言葉、誠に痛み入ります。
しかしながら!
我に正妻は不要です。
戴いたとて……。
我は一途になれません。
生涯ひとりを愛し通す自信など……。
微塵たりともございません」
未來王は肩をすぼめる。
「ハハ……、
そうでしょうか?」
「残念ながら。
我の心は死んでいます。
たとえどれほど魅惑的な女龍神だとしても……。
心魂深く揺さぶられることはないでしょう。
ましてや!
悠久の時間軸を寵愛し続けるなど!
到底、不可能かと存じます」
「うーん……。
ではクロス!
雷紋の五十年後、
予見透視してください」
クロスは肯う。
「諾っ!
……オオッ?
ヘエ……?
あららら……。
オイオイオイッ!
ククッ、クククッ!
誰の心が死んでるってェ?
正妻に骨抜きのメロメロじゃねえかっ!
デレデレニヤニヤ……、
立派な一途な男になってるゼ?」
「そんな、まさか?
我が……?」
雷紋は耳を疑う。
驚きを隠せない。
未來王は続ける。
龍神カップルに通告する。
「それから……。
コン太、ノア。
来春おふたりの『婚礼の儀』を挙行します。
表裏龍王の了承はすでに得ています」
表龍王・燦紋。
裏龍王・トール。
笑顔で肯った。
コン太とノアは驚愕する。
顔を見合わせ震え出す。
「ええっ?
うへっ? うへえ……?
うへええええっっ?!」
「う、うそ……。
私とコン太が結婚?
本当に……?」
未來王は微笑む。
「はい。すでに決定事項です。
あ、それから。
婚礼の儀の一年後。
ふたりのあいだに『龍の子』を授かります。
その旨……、
ご承知おきください」
ギョギョギョッ!
コン太は仰天してのけ反る。
「おっ、おいらとノアの?
龍の子……?
今から一年半後……、ですかい?」
「そうです。
是非とも元気な『姫子』をお願いします。
おふたりの子が五十年後。
雷紋の正妻となります」
雷紋は目を瞠る。
呆気にとられる。
「本当ですか?
ノアとコン太の『龍の子』が?
我の正妻になるのですか?」
「予見通りならばそうなります。
それはそれは美しい女龍神です。
母親によく似ています」
じわり、
雷紋の龍眼に涙が滲む。
「あっ、ありがとうございます!
我にとって……。
この上ない縁にございます。
本日より禊に入ります。
身も心も清めてまいります。
そして五十年後!
正妻を迎える準備、万全にいたします」
未來王は頷く。
言葉を続ける。
「五十年後。
雷紋の正妻はすぐに龍の子を授かります。
さらにその五十年後。
その姫子が。
藍方瑞龍ラン丸の正妻となります。
正妻二尊は万能龍神に追加認定する予定です。
つまり百年後。
八大万能龍神は。
十大万能龍神となるのです。
ラン丸は本物縁を得るまであと百年ほどです。
もうしばらくお待ちください」
フリフリッ!
ラン丸は尻尾を振ってほころんだ。
雷紋は泣いていた。
涙ながらに宣言する。
「五十年後。
迎える正妻を慈しみ。
愛し抜くこと、誓言いたします。
我の未來の時間軸は……!
幸甚の極みにございますっ……」
王は告げる。
「心新たに……、そして必ず!
恵利原での禊祓を貫徹してください。
禊の期間中も平常任務は継続です。
龍使い凛花さんに協力して。
多くの方々に『誉』を授けてください」
「はっ!
承知仕りました!
新時代を一層に励んでまいります!」




