第三十一章 ①天の組織図・オーガニゼーション 魔界
出雲大社・結界上。
魔導師は凛花を高く評価した。
シップは提案する。
「ふむ、なかなかのポテンシャルだな……。
では次の講義といこうか。
『天の組織図・六世界』について。
我々と対話方式で語ってみようか?
どうかな?」
「わあっ!
是非ともお願いいたします」
シップが先陣を切る。
「迎えた新時代。
宇宙は六つの『界』で構成されている。
天界三世界。(三界三世界)
冥界三世界。
併せて六世界と呼称する」
ゲイルが続ける。
「天界三世界とは……。
元素・無色界。
神界・色界。
人間界・欲界である。
冥界三世界とは……。
黄泉界。
魔界。
霊界である」
イレーズが解説する。
「六世界は遊星の集合体なんだ。
各界層ごとに細分化されたものが集まって組成されている。
死没後の行き先は。
数値データに則って自動的に振り分けられる。
到着地の選択肢はふたつ。
黄泉界。
もしくは霊界だ」
凛花は問う。
「皆が皆、冥界に?
天界(三界)には行けないのですか?」
ゲイルが応える。
「ひとまず。
さしあたっては黄泉界か霊界だ。
極々稀に。
天界へ行ける果報者も居なくは無い。
しかし六世界の仕組みは冷酷である。
確率はゼロに等しい。
ときに。
神々、天人天衆、魔神さえも裁かれる。
心が穢れれば奈落に堕ちる。
それゆえ。
誰一人として安泰はない」
シップは頷く。
「運が良ければ転生可能な黄泉界に……。
悪運尽きれば霊界に……。
それは未來王が判定する。
そして冥界王(魔王)が制裁する。
もちろん。
選ばれし者は別枠だ。
即座に兜率天に迎えられる」
凛花は素朴な疑問をぶつける。
「あの……?
魔界には魔法使いが棲んでいるのですか?」
シップは愉快気に笑う。
「おお、魔法使いか……。
なるほど。
ひょっとするとそうかも知れんなあ。
魔神たちは冥界のセレクションである。
つまり。
図抜けた逸材である。
そして魔王は。
呪術・妖術・幻術・神術を自在に操る。
四人衆と同様、極等級のエキスパートなのだよ」
凛花は問う。
「未來王が統治している限り。
六世界の均衡は保たれるのですか?」
シップは頷く。
「うむ、それは間違いない。
巷で。
悪魔魔王閻魔などと称され。
なぜか嫌われ者だが……。
魔王と未來王は親友である。
我らも魔王や魔神たちと親しいのだよ。
だから現今。
兜率天と魔界は友好的に繋がっている。
ゆえに。
未來王時代の六世界は安泰であるといえる」
イレーズが微笑む。
「ほんの少し気難しい魔王も。
ちょっとだけ残虐な魔神たちも。
それから妖精とか?
よくわかんないエイリアンとか?
幻妖霊獣とか?
凶暴な魔界モンスターだって……。
意外と憎めなくてカワイイよ?」
シップが笑う。
「そのとおりだ。
決して悪い連中ではない。
それどころか。
なかなかのグッドガイである」
ゲイルは冥界を説く。
「六世界最下層……。
それが奈落のどん底、霊界である。
霊界地獄とは。
望まなくとも誰もが行ける場所である。
圧倒的人口密度の最底辺到着地である。
愚人の心は卑しく浅ましい。
汚濁して穢れている。
それゆえ多くの過ちを犯す。
もちろん数値も底辺だ。
死没後は。
果ての果てまで真っ逆さまに堕ちていく……」
ニヤリ、
クロスは不気味な笑みを浮かべる。
「さらに悲しいお知らせだ。
生前やりたい放題だった悪行罪過は加増される。
魔王が六千億倍にするんだヨ!
それこそ!
自業自得だヨ、なァ?」
ゲイルは眉間にしわを寄せる。
「六千億倍の応報処罰刑を受ける者たち。
彼らは霊界地獄で鏡を見ることになる。
なぜなら。
周囲には自分そっくりの同類種しかいない。
そして同類種同士が。
お互いを呵責拷問し合うのだ。
嬲り嬲られ。
甚振り甚振られ。
ひたすらに暴行し合う……。
しかし逃げ道はない。
粉々に砕かれても再生してしまう。
そうしてまた終わりのないバイオレンス・ゲバルトが始まる。
千代に八千代に延々と虐遇をくり返す。
無間地獄とは……。
『死ねず終わらず』の苦しみを表している」
イレーズは冷笑する。
「同類種同士が勝手に盛り上がってさ?
勝手に責め苛み合ってくれるからさ?
余計な手間が掛からなくて助かるよ。
まさに生産性向上……、だよね?」
シップは息を吐きだす。
「拷問は生前の罪の重さに比例して……。
そう言いたいところだが違う。
空恐ろしいことに。
罪なき者に与えた苦患・殉難・冤罪。
それらは数値が六千億倍になる。
そして相応処罰が下されるのだ」
あっかんベー!
クロスは舌を出す。
「どこぞやのインチキはァ!
お布施やら?
お浄めやら?
先祖の因縁やら?
悪霊供養やら?
あげくに!
金を払えば偉~い聖者が助けてくれるってェ?
そこに縋れば幸せになれるってェ?
死没後は楽園に連れて行くってェエ?
ワァオッ!
残〜念ッ」




