全ての始まり
世界というのは未知で溢れている。今自分たちが生きている世界は必ずしも自分が思ってる常識だらけの世界だとは限らない。そう……常識はない――――――。
「行ってきます。」
「あっ、ちょっと待ってね。」
すると、母さんは、はいこれ、と僕になにか手渡してきた。
「これは?」
「御守りよ、あんた今日高校一回目のテストでしょ?今後の成績にも関わってくるんだから、頑張ってきなさい。」
なるほど、御守りか。なんだか大袈裟な気がするけど。まぁ、とりあえず貰っとくか。
「ありがと母さん、頑張ってくるから。行ってきます。」
母さんは、行ってらっしゃい、と笑顔で返す。
僕は玄関のドアを開けて家を出る。
日差しが暑い、もう6月後半に差し掛かり、真夏のような暑さが僕を包み込む。すると、
「おはよ、凜生くん!今日は暑いねぇ〜!」
そこには、僕の中学時代からの友達である松本澪が僕の顔を覗き込んでいた。
少し赤い髪にショートカットで、中学の頃から陸上部で活動していたからなのか、肌は少し焼けている。そしてスタイルも良くて、なにより、大きい…どことは言わないが……。そんな彼女は中学の頃は男子から人気で凄くモテていたらしい。今は高校入学早々、男子からも女子からも人気のある人物となっている。
が、僕にはなぜ彼女かそんなに人気なのかが理解出来ない。
「はぁ、おはよ。」
と澪の元気についていけずにため息混じりに返して、僕は少し首筋に汗をかきながら、歩き始める。
ちなみに僕は、神宮司凜生、高校一年生だ。高校は公立のTOP校、水生高等学校。中学ではあまり友達を作らず休み時間には本を読んだりしている典型的な陰キャだ。よく皆には、ガリ勉、生きてる屍など変な事まで言われてきた。まぁ、僕は気にしていないのだが。
「ねぇ凜生、聞いてる?」
と、澪の声で僕の意識が戻された。
「はいはい、聞いてる聞いてる〜。」
と僕は適当に返事をする。
「絶対に聞いてなかったでしょ〜!」
まいいけど、と澪は気にせず話を続け始めた。
家を出て15分位経ったころ、僕たちは大通りまで出てきていた。
この時間帯は、こんな暑い中汗を垂らしている社会人が沢山出勤しているからか歩道が狭く感じた。
僕が汗をタオルで拭っていた時
「ねぇ、凜生。あそこの公園いつ壊すのかな?まだ子供も沢山いるし、このままだと事故も減らないよね。」
と近くにある公園を見ながら訊いてきた。
あそこの大通りのすぐ横に少し大きい公園がある。そこは車が多く通る道路の近くにあるため、子供の事故が年に4、5件くらいあるらしい。だから、澪が言っていた通り近々ここを取り壊す予定らしい。
「確かに、いつ壊されるんだろうな。しかも、今日は少し子供の人数が多くないか?」
「ほんとにそれ。今すぐなにか起きても不思議じゃないよ。」
すると、澪のフラグのせいなのか、いきなり公園の外にボールが転がって行った。
ボールが出て数秒したあと、小さい子供がボールを追いかけて出てきた。
出てきたボールは止まることを知らないのか道路を突っ切っていく。子供もそれを追いかけて、道路へ出ようとした時。
子供の奥からものすごい勢いで走ってくるトラックが見えた。よく見ると、運転手は俯いていた。居眠り運転なのか………。
「澪、ちょっとこれ持ってて」
「えっ!?ちょっと!!凜生危ないって!!」
僕は澪の声を聞かず鞄を預け、ただ目の前の子供を助けるためだけに走った。
子供は、やっとボールに追いつき拾ったところで、僕はその子を抱えることに成功した。
そのまま、反対側の歩道に走ろうとした時―――、僕は足を挫いてしまった。そりゃそうだ約16年間僕はまともに走ったこともなかった。走り癖が付いていない僕がこうなるのは仕方ないことだった。
僕の横にはすぐトラックがきていた。このままじゃ、僕もこの子もタダじゃ済まない、最悪2人共――――――。僕は最後まで考えずに、その子を反対の―――、トラックに轢かれない方への軽く投げた。
すると、すぐに僕の右半身に強い衝撃が伝わった。
何が起こったのかと理解する時には―――僕は宙に浮いていた。いや、刎られたのだろう。
澪は僕に涙目で何が叫んでるように見えた。
あの子は無事かな……
僕は最後あの子どもを心配して―――、意識が閉じた。