〜神様からの恩恵が凄すぎるんだが〜
無自覚主人公。
死というものは誰にでも訪れる。死とは生きることと
唐突に何を言っているんだと思うかもしれない。だけど、許して欲しい。目の前にトラックが迫る中、平常心でいられる訳ないじゃないか!
今までの人生が走馬灯のように駆け巡るのをぼーっと眺める。
僕の名前は久保川阿澄。ごくごく普通な高校三年生だ。
僕の人生は特別何かがあった訳ではない平凡な人生だった。平凡な容姿に、学校のテストはいつも平均点。幼馴染に美少女やイケメンがいる訳でもなく、学校のクラスの中に妖怪が見える子がいるという非日常的な存在もいない。極々平凡に生きてきた。
このまま平凡に生きたくないと思ったのは今年の誕生日の時だった。その頃は異世界転生もののラノベにハマり、何か得を積めば転生するのに恩恵が貰えるかも知れない…その事に胸を高鳴らせ、手当たり次第人助けをしていた。今回のこともそうだ。バイトから家に帰ろうと信号待ちの途中、黒猫がトラックの前に急に飛び出したのだ。慌てて助けようと飛び出したらこの様だが、後悔はしていない。
「僕の人生って平凡な人生だったなぁ」
薄れゆく意識の中、そう呟き視界が真っ暗になった。
次目を覚ましたときは神様にでも会えるのだろうか…そんな馬鹿な話ないよなぁ。
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「…い!おい、起きろ!」
どこかで僕を呼ぶ人がいる…。五月蝿いなぁ、こっちはまだ眠たいんだ。段々、声が明瞭になり鈴のような声が僕に怒鳴ってくる。
「…!い!おい!もう朝の時間だぞ!レイ!師匠のいうことが聞けないのか馬鹿者!!もういい。お前の朝食も食べてやるからな」
なんだって?!…それは酷いんじゃないか?朝起きるの遅くなったぐらいで朝食抜きなのは。あれ?師匠…?って誰だ?
日本生まれで日本育ちに師匠という人はいなかった筈だが…。頭が割れるように痛い!!何かを忘れているような…なんだ?
「あーーー!!!!思い出した!」
「急にどうした!?」
起き抜けに叫び声を上げる僕に吃驚したのか、持っていたトーストを床に落としてしまう。
「僕のトーストがっ!!」
浮遊魔法を咄嗟にし、トーストをギリギリ床につく直前に止めた。
「ほっ…良かったな。トースト床に落ちなくて」
目を泳がせながら、師匠___であるアリアが胸を撫で下ろす。
長い耳がピクピク揺れる。
師匠はエルフだ。エルフの価値観が自分に合わないとエルフの里から飛び出し、旅先で僕と知り合ったのだ。僕は師匠の魔法に魅了され、駆け込み寺のように土下座で弟子にしてもらった。