「駅」下
最終話です。短いです。
ふと、電話が通じなくても、ショートメールが届いたりはしないか、と思い着いた。何十件、もしかしたら三桁の申し込みで、やっと貰った面接だ。窮状を訴えて、もしも無事に帰れたら、日時を変更して貰えないだろうか。
と言うか、連絡が着くくらいなら、鉄道会社に救助依頼をして貰おう。ダイヤを乱したら、物凄い額の賠償請求をするんだ。こっちが賠償金を取れるかもしれない。ニヤニヤしながら、ショートメールを打つ。
……待ってみた。当然だけど、返信はない。送れたかどうかも分からない。いや、エラーにならないってことは……どうなんだろう?
画面を眺めていて、何だか、見たことのある番号のような気がしてきた。
何処で見たんだろう…… ホームのベンチに仰向けになって、じっと見つめていると、まさか、と思い付いた。
手帳を引っ張り出す。スマホにメモるから、滅多に使わなくなった、数年前の物だ。
その一番後ろのページに、書きなぐった数字があった。やはり同じだ。
ちょっとヤバそうなバイトで、一度だけ電話したことのある番号。預かった電話で、俺は「息子」だと名乗った。
いつの間にか、夕闇が迫っていた。スマホに返信が届いた。
「お待ちしています」という文字を見つめながら俺は、近づく電車の音を聞いていた。
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