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第04話:交渉3

エリスとの話が続いています。

女になること、人生を捨てること。突拍子もない話が続き、杉山氏は理解に頭が追いついていないようです。でも、話は淡々と続きます。

 「アナザーズ」で、男の俺が女になる。いきなり言われて納得できるはずがない。なぜ女なんだ? 男のキャラがあるはずだ。男のキャラも現実にいるはずだ。」

「あなたの魂と心をキャラに移す過程で、同性同士だとお互いに反発しあってしまって移せないのです。女性から女性に移せることもあるけど、男性から男性の場合、例外なく失敗しています。私たちは、男性ホルモンが影響していると考えています。」

 さすがに納得するには時間がかかる。が、エリスは話を続ける。

「話を進めます。次に、期間と報酬と休暇について説明します。期間は現実時間で5年間、ゲームの中では6時間で1日が過ぎるので、ゲーム上では20年間。報酬は、あなたに直接支払われるのは、5年間で3000万円プラスあなたの望む報酬、さらにこちらから依頼する仕事をした場合は別途報酬を支払います。決まった休日はなくて、休暇の形を取ります。休暇は、現実時間で42時間ごとに6時間追加され、溜めることができます。何か質問はありますか?」

 そう言われて、俺は矢のように質問をぶつけた。

「俺が望む報酬というのは何だ?」

「最終的にあなた以外の方に渡る報酬です。借金の返済や家族への補償などです。あなた自身が得ることのできるお金は、あくまでも5年3000万円です。ちなみに、報酬とは、お金以外でも構いません。」

「勤務中は何をしていてもいいのなら、休暇に意味はないのではないか?」

「休暇中は、現実世界に"外出"することができます。これはあなたの新しい体にとってとても重要なことです。デジタルデータで作成された体は、通信が飛び交う現実世界では空襲に遭っているようなものなのです。時間をかけて体を慣らしていくことで、通信に左右されない体を作ることができるのです。」

「依頼される仕事とは何だ?」

「イベントで参加者を導くキャラを演じたり、敵キャラとして参加者の行く手を阻んだり、ルール違反者を調査したり、と、色々あります。」

「5年の契約が終わったら、俺はどうなるんだ?」

「基本的にあなたの自由です。ゲーム内で冒険なり生活なりを続けてもよし、現実社会に戻って女性として社会復帰するもよし、です。もちろん、現実社会に戻るときには戸籍も住居も提供します。」

「…話はだいたいわかったが、話がうますぎる気がする。なんの制限もなくこんなことをするのか?」

「もちろん制限はあります。あなたの仕事に関する情報は最重要機密事項です。また、現実世界への外出は1分単位で時間を指定してもらい、理由に関係なく帰還する時間に1分以上遅れると造反行為とみなされます。秘密の漏洩と遅刻は、端的に言えば"死刑"です。」

「秘密の漏洩はともかく、遅刻でも死刑になるのか? そもそも死刑ってなんだ?」

「秘密の漏洩に関しては、間接的に関わっただけでも処罰対象になります。現実世界に行ったときに情報を漏らそうとする方がいるため、時間には厳しくしています。むろん、現実世界でも漏洩に関しては監視されています。それだけ厳しくするかわりに、報酬も高額になっているはずです。死刑とは、簡単に言えば"消滅"です。あなたの魂と心を受け止める体を消去します。あなたは生きることも死ぬこともできず、どこかをさまよい続けます。どうなるかは、私たちにもわかりません。確実なのは、あなたの新しい人生を奪うということです。」

疑わしきは排除、というわけだ。

「もし、この仕事を引き受けたら、俺は、杉山満は、どうなるんだ?」

「あなたの体はこちらで処理します。現実世界では、何らかの形で死んだことになります。ご両親やご家族には、残念な結果になるでしょうね。生命保険はちゃんと成立するようにしますから、安心してください。」

 人生を捨てる、新しい人生、女としての人生、借金が帳消しになる、家族に金銭的迷惑をかけずにすむ。ゲームの中の時間とはいえ、20年はかなりの年月だ。いろんなことが頭をよぎる。

「まだ契約する意思があるなら、話を続けます。よろしいですか?」

 俺はうなずいた。

「では、あなたが望む金額を教えてください。最終的にあなた以外の方に渡るお金で、あなたが欲しいお金を教えてください。具体的な金額でなくても構いません。」

考えた末に、返事をした。

「俺が抱えている借金の全額、親類から借りているものも含めてだ。それと、家族にある程度の生活の補償をしてやりたい。」

 そういうと、エリスは、いつのまにか用意されたノートパソコンで計算をし始めた。

「借金は先ほど申し上げたとおり2348万円ですが、ご親族は消費者金融から借りてあなたに貸しています。その利子も必要ですね。ご家族への補償は、500万円ほどを奥様に差し上げます。合計3000万円です。いかがですか。」

俺の今の心配事は借金だけだ。それでいい、と即答した。

「わかりました。それでは、これから7日間の猶予を差し上げます。その間に、資産を処分したり、最後のお別れをしたり、契約するかどうかを検討したりてください。契約する気があるのなら、7日後、この時間、この場所に来てください。」

 エリスは、時間と場所が書かれたメモを渡して言った。

どうも長くなる傾向が抜けないようです。

この後は少し細切れにしていければと思います。

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