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第30話(epilogue3)(最終話):美鈴の生活

さて、ついに最終話です。

最終話は、新しい人生を歩みだした美鈴のお話です。

 こんにちは。美鈴です。

 美鈴としての新しい日々が始まりました。

 初日はお買い物を兼ねて街中を散策しました。

 まず管理局を探しました。管理局はセーブポイントにもなるので、街には原則存在しています。

 私の部屋があるアパートは街外れにあるみたいで、近くの方に場所を聞いて管理局に行きました。

 管理局は街を4分割する大通りの交差点から東に行ったところにありました。

 管理局は、外観も中身も、他の街にある管理局と変わりありません。

 街に来て間もないことから、管理局の方と直接対話する形をとってもらえました。


 私はここで、街の情報と地図を入手しました。

 この街は「ルリの街」といい、ルリさんというPC(※プレイヤーキャラ。通常ユーザー。)が作った街でした。人口(住民として存在する方)はルリさんと私を含めて25人いました。

 各々のコミュニケーションは自己責任ということで、誰がどこにいるのかは直接教えてもらえませんでした。

 街の全体図を頂いて、大きい道路と路地、公園、私のアパート、店舗の場所を確認しました。

 そこで1つ、見慣れない店舗があることに気がつきました。ドラッグストアです。

 街の東の端にあります。何が買えるのかを聞いたところ「生活用品全般」ということでした。このときは、その重要性を理解していませんでした。


 さっそく、そのドラッグストアに向かいます。

 私はそのとき街着で緑の七部袖ブラウスに、白と青の膝下までのスカートという恰好でした。

 メインストリートを歩いた第一印象は、ちょっと恥ずかしかったことでした。

 女性として初めての、しかも一人での外出。男性だった私が女性の服装を見られることがすごく恥ずかしかったのです。

 しかも、視覚的には、今まではやはり間接的な部分が否めませんでしたが、今、私の現実はここであるわけで、本当に直接、見て見られるという感覚を味わうことになりました。

 おかげで顔を真っ赤にして街めぐりをするはめになりました。

 そして、本当にこの世界が私にとってのリアルなのだと実感しました。本当はゲームの中なのに、風が吹き、木々がそよぎ、太陽が照りつける。風を涼しいと、光をまぶしいと感じ、木々の声を聴いているのです。すべての感覚が、リアルの頃と同じ、いえそれ以上になっていました。ここに住んでいるということを、改めて実感しました。


 ドラッグストアは3階建ての大きなビルになっていて、全部がドラッグストアの敷地でした。ドラッグストアというよりも何でも屋という感じがします。

 販売しているのは、生鮮をはじめとした食料品から、歯磨きや食器、女性には必要な様々な品、さらにはイスや机、洋服までが用意されていました。

 普通のPCは街での生活はあまり考える必要がありませんが、RPCである私はここが生活の場。リアルで買うべきものもここで買わなければなりません。

せっかく来たので、食料品、食器、清掃用具、その他を購入しました。料金はすべてカード払いです。たくさん買ってしまったので、自宅に届けるようお願いしました。


 私のアパートは街の北側、大通りから少し奥に入った場所にあります。

エントランスから入ると、住居者専用のボックスに、ドラッグストアで購入した品物が届けられていたので、それを受け取って部屋に持ち帰りました。

 その後数日は、衣服や冒険のための武器や道具などを買い揃えました。

 このゲームで魔法を覚えるための「魔導屋」にも行き、自分が使用できる魔法を確認のうえ、”移動”の魔法を覚えました。一度行った場所に行けるという魔法です。


 1週間が経った頃には、同じアパートの住人ともお友達になり、だんだんこの街での生活に溶け込んできました。

 やっと、この街の主であるルリさんにお会いできました。街の南側にあるその家にはなんどか伺ったのですが、ドアが開きませんでした。不在ということです。

ルリさんは新しく住人となった私を歓迎してくださり、ここを自然にあふれた街にしたいという想いを語ってくれました。

 現在、企業を5店誘致して月20万ほどの収入を得ているそうです。ファッションや小物の店、さっき行ったドラッグストアもそのひとつでした。

 「アナザーズ」は、生活者もいれば冒険者もいる。街中を私のような普段着の人と剣を持った人が歩いている。そんな世界です。


 新生活が始まって10日。この日はパソコンで調べものをしました。

 ようやく、”満”のことを知る意思と覚悟ができました。杉山満は生きているのか、そして、家族に生命保険が支払われているのか、です。

生命保険のことは、実は彼女は知りません。借金の担保のために入ったもので、保険料は私のお金で払っていました。

 ここで接続することの出来る検索サイトは、世界最強と言われている「コムネット」が利用できます。

 日本から遠く離れたコムニア共和国発のサイトで、政治機密から隣の夜御飯まで調べられるそうです。

 もちろん権限別の規制があり、それによって閲覧できる内容が限られます。私たちはかなりの上位権限を持っていて、個人で使用するなら原則どんな情報も閲覧できます。


 記事はあっさりと見つかりました。

「杉山満」は栃木の山の崖下に落ちて亡くなった、警察は事故と事件の両面で調査中という記事でした。

 次に、警視庁のデータベースにアクセスしました。

 膨大なデータから探すため時間がかかりましたが、「杉山満」に関する情報として、以下のように書かれていました。

『杉山満。栃木県××山の崖下から発見される。死亡推定時刻は△日。所持品は松永ファイナンスの名刺、斉田金融の名刺、免許証、etc。借金完済後に逃げ込んだ模様。遺体の頭にコブがあることから、木に頭を強くぶつけたものと考えられる。事故死。』

 最後に、私の妻だった杉山舞子の通帳を確認しました。私は妻の暗証番号を知りませんでしたので、それも調べた上、取引内容を確認しました。

 その結果、すでに5000万円の振込みが口座にありました。


 よかった。生命保険には驚いているかもしれないけど、妻と娘にお金を遺してあげられた。私はそのことに少し安心しました。

 しかしすぐに同時に、自然に大きな声で泣き始めました。嬉しいのか、悲しいのか、すぐには理解できませんでした。

 私は借金で彼女たちを苦しめた。娘たちは学校に行けなくなり、私は仕事を失った。私がいなくなることで、彼女たちは幸せに生きてくれる。その代償は、借金をなくし、経済的余裕を与えることで、しばらくはしのぐことができるはず。夫としての役目は果たした。舞子は、こんな私をどう思うだろうか。


 きっと喜んで…くれない。


 私が舞子なら、許さない。お金だけじゃないんだ。男としての私はそれでいいと思ったけれど、女としての私はそれでは許さなかった。許す私と許さない私が頭の中でケンカしていた。そこで私は気がつきました。涙のわけを。嬉し涙でも、悲し涙でもない。両方だ。そして悔し涙だったんだ。

 妻や娘たちがどう思うかを、男だった頃の私は考えられなかった。それが悔しかった。わかっていても私は「アナザーズ」の契約を結んでいた。でも、知っているのといないのとでは大違いだ。何かしてあげられたかもしれないと悔やんでいる。その想いがあふれ出した涙だったんだ。さらに、私は私自身が死んだ記事を見て、心の中では悲しさがあり、保険があったことで一次的な嬉しさからの涙だったんだ。

 私は涙が枯れて憔悴しきっていてもなお悲しみにくれていた。そんなことが5日ほど続きました。


 悲しみは少しずつ和らいでいきました。

 その間、エリスさんが家に来て髪も顔もボロボロになっている私を介抱してくれた。エリスさんが私に宛てた仕事のメールにまったく返信がなかったため、心配してくれたそうです。

たしかに何日もの間、パソコンは見向きもしませんでした。

 私はエリスさんに、満のことから涙のことまで話すと、エリスさんは、エリスさん自身のことを話しはじめました。

「私も、あなたのように”アナザーズ”の契約をしてRPCになってここにいる。私はあなたと違って、生命保険はもちろん、財産ひとつ遺せなかった。ときどきネットで情報を得ているけど、だいぶ苦労しているみたい。助けてあげたいけど、今の私にはなにもできない。もどかしいけど、それが私が選んだ道なの。」

 エリスさんは静かにものすごいことを言っている。私はエリスさんの話に聞き入りました。

「美鈴、あなたは元々ここを楽園だとは思っていないはず。この先も、どうしようもない孤独感や焦燥感に苛まれることがあります。私がそうだから。以前も言ったけど、それは、家族を捨てた私たちの、せめてものつぐないであり、刑罰。私たちはこれを乗り越えないといけないの。」

 エリスさんは、私をなだめ、諭してくれた。ここへ来たのは自分の意思。ならば、その陰で泣いている人たちの存在を忘れてはいけない。忘れずに、かつ、新しい生活にも希望を見ださなくてはならないのだ。

 エリスさんは予定があったようだけど、結局私が落ち着くまでいてくれた。私はエリスさんが帰るとき、深く感謝の意を伝えました。


「アナザーズ」にやってきて51日が経ちました。

 この頃になると、生活にすっかり慣れてきました。1日は6時間ですが、4日をひとまとめとして活動するようにしています。

 そうすることで、他のPCとの時間調整ができるようになり、交流も深めています。

街中を歩くだけではなく、PCの冒険の手伝いをしたり、管理局からのイベントのお仕事をしたりして毎日を過ごしています。

 冒険はシナリオに沿ってアイテムを探したり、敵を倒したりするものです。他のPCと違い、私は直接ダメージを受けますし、剣をふるい、魔法力を消費すれば体の疲労も蓄積します。

 このときばかりはPCの皆さんをうらやましく思いました。


 エリスさんの言っていたとおり、ひとり部屋にいると孤独感に襲われることがまだあります。これはきっと永遠になくならないと思います。

でも、RPCという絆をエリスさんがくれました。エリスさん以外にも、RPCの仲間を2人見つけて、今では友達関係を築いています。

 こんなかたちで、「アナザーズ」で新たな人生を送っています。


 これで、私の話はひとまずこれでおしまいです。

 私はこれからも、この「アナザーズ」の世界で生きていきます。

 続きはまたいずれ。


 ところで、あなたも「アナザーズ」でお仕事しませんか?

 期間は5年間、とても簡単なお仕事です。

 もし契約していただけるなら、基本報酬のほか、あなたの望む報酬を差し上げます。その代わり…。

 どうにもならない苦しみを抱えているあなた。近く、私たちがあなたをいざないに参ります。

 それでは、またお会いできる日まで、お元気で。

 美鈴でした。

ここまで読んでくださった皆様、おつかれさまでした。そして、ありがとうございました。


「アナザーズ」の世界は今後広がり、深みも増していく予定です。そして「いざなわれる」人もまだまだ候補者がいます。いろんなアイデアが消えては出てくる状態です。


この作品は、いろいろな課題を浮き彫りにしてくれました。感情に走ってはいけない。プロットを作ろう。前後のつじつまを合わせよう。1話の文字数を増やそう。描写をもっと具体的に。課題だらけです。

少しずつ改善していきたいと思いますので、もしよかったら、次回作も見ていただき、ご批評をもらえればと思います。


ご意見、ご感想、リクエスト、質問等、ぜひお寄せください。

かけらでした。

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