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第24話:仮移行 その2

満は「アナザーズ」のキャラクターになるための処置を受けます。

もう前に進むしかありません。

 カプセルはガクンと軽く振動し、内側にあるチューブの1つから液体を放出した。電磁液は、風呂を沸かすかのように、少しずつカプセルの中を満たしていった。俺の体は少し毛深いほうで、脚にも胸にも毛が生えている。その毛に電磁液が触れるたび、くすぐったい感触が伝わってくる。液体に触れて毛がピンと立っている。電子が毛にひっついて直立状態にしているようだ。俺の首から下は完全に浸かった。しかし液体はカプセルに流れ続け、カプセル内の水かさを増していった。カプセルの中は俺が手足をいっぱいに広げても問題ないくらいの大きさがあった。その内部に液体が満たされる。


 エリスは液体を飲めというが、当然はいそうですかと飲めるはずがない。口、鼻、目と、だんだん電磁液に浸され、ついに全身が電磁液に浸される。耳は水の音しか拾わない、目はぼやけて何も見えない。息はどんどん苦しくなる。カプセルの中で溺れている俺にエリスが「早く飲まないと、移行する前に窒息してしまいますよ」と音声で忠告する。エリスの声が聞こえるのを不思議がっている場合ではない。とうとう耐え切れなくなり口を開けてしまった。それでもなお、飲み込むのには一苦労だった。

「んぐぐぐう……がああ……」口や鼻に液体が浸入してくる。喉を必死で動かし、液体を体の中に注ぎこむ。やっと飲んでみると、フルーツの味がして意外に美味だった。そうとわかると、鼻からも、呼吸するかのように電磁液を取り込んでいった。送り込まれた電磁液は、食道から各臓器、神経や血管、脳にいたるまで浸透していくのが認識できた。鼻や口から接種した飲み物が変なところに入り、咳込んだり偏頭痛にかかったりすることがよくあるが、この液体に限ってはそれがまったくなかった。通常は入らないところに液体が浸透し始めていることはハッキリと認識できているのに。

 電磁液を飲み続けてしばらく経ったころ、満は視界が急に開けてきたことを感じた。息苦しさはどんどん和らぎ、視界もだんだん開けていった。

「……ロ……セント」「シン……率九十……セン……」「シンクロ率98パーセント」エリスの声が聞こえはじめた。


「シンクロ率100%」

 俺がカプセルの中でエリスのセリフを聞いた頃には、カプセルの中は液体で満たされていた。水槽の中のいわゆる”ぶくぶく”のように、俺が呼吸するたびに発生する気泡がそのことを認識させた。目が見え、耳が聞こえ、呼吸が出来、言葉も出そうと思えば出せる。気泡がなければ、とても液体で満たされているとは思えなかった。

「いま、シンクロ率が100%になりました。カプセルとあなたの体内に電磁液が行き渡ったことを意味しています。」エリスは端末と顔をこちらに向け、いつのまにか束ねられた長い髪を左肩に寄せて言った。

「いま、あなたの情報を取得しています。電気信号で行っているので少しピリピリしますが、そのまま待っていてください。」

俺は液体とひとつになった。水中であることに何の抵抗もない。カプセルの外でエリスが動いているさまや、電子音が響いているのが聞こえてくる。そのうちに、ガーガーという、何かを書き込んでいるような音が聞こえてきた。エリスを見ると、”あっちを見て”というように隣にあるカプセルを指差した。隣のカプセルを見ると、白く光っている。そこに、少しずつ黒い線が上から這い上がってきている。半分くらいになったとき、それが人間のシルエットだと認識できた。シルエットなので完全にはわからないが、髪が長いことと、フワッとした服のようなものを着ていること、胸のふくらみが認識できた。

「情報取得を完了しました。すでにごらんのように、隣のカプセルにシルエットが表示されました。あれが、これからのあなたです。」

「……あれが、俺なのか……。」シルエットだけでかわいさがにじみ出ていた。あれになる、なる。”なる”という感覚がわからない。わからない感覚は程度の差はあっても例外なく怖い。「顔は見られないのか」俺はおそるおそる聞いた。全部見てしまうと恐怖感が出てしまうので、Noであってほしかった。

「それは、これから行いますので、今はシルエットだけです。」なんだかほっとした。

「なれば、わかることです。」安心感もつかのまだった。

「では、3秒後に仮移行を開始します。」エリスはふたたび俺に背を向けた。いくつかのボタンを押し、いつのまにかできていたレバーを下に倒した。

「うあああっ!」急に強い刺激が襲った。さっきまでの刺激より数倍痛い。全身が痙攣を始め、叫ぶほどの痛みがしばらく続いた。その痛みに慣れる前に、何かに吸い寄せられるような感覚を覚えた。無意識に気がついて足元を見て驚愕した。足が消えている……!……と思ったら、まだそこにあった。しかしもうなんの認識も持てずにいた。見えているのに認識できない。

「こ、これはいった……ぐあああっ! なにが……ああっ! やめ……!」

 刺激と吸い取られる感覚が同時に襲ってきた。体の自由が効かなくなった。体中から何かが吸い取られていく。同じことを全身で感じていた。それと同時に、体の認識が消えゆくのも感じていた。消えるスピードは徐々に増していった。見えているものが認識できなくなる。俺が消えていく。吸い取られていく。痛みに加えて恐怖も襲ってきた。自分が消える! 最後は首から一気に頭の先まで吸い取られた。そのとき、消えゆく意識の中で、俺の体が2つのチューブの1つに吸い込まれたことをおぼろげに感じていた。最後に、残った俺の”意識”が俺の体を離れ、チューブの中へと吸い込まれた。チューブに入る直前にカプセルの中が見えた。俺の体は、まだそこに全身が揃っていた。意識はそこでいったん途切れた。


「……ズ、大丈夫ですか?」

 その声を聞いたとき、まだ俺の意識は朦朧としていた。何も考えられなかった。


仮移行は済んだのでしょうか。

できるだけ細かく描写していこうと思います。


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