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第19話:再調査

「アナザーズ」の契約をし、まずは借金を完済した満は、エリスに履行確認を申し出る。

今回から松永側の動きを追っていきます。

 満を捕まえられる寸前のところで見失った松永と竹原、そして部下たちは、発砲による通報を恐れてその場で散会した。幸い部下も含めて商店街の人ごみに紛れることができた。

 松永は社に戻って社長室に篭った。なぜ弾が壁に、いや黒い穴に吸い込まれたのか。壁を貫通したのではない。文字通り「吸い込まれた」のだ。異常な現象に頭を抱えていた。一つわかっているのは、このことが重大な手がかりであるということだ。

 松永は竹原と連絡を取り、翌朝もう一度袋小路に行くことにした。竹原は昨日の今日かよと渋ったが、松永がなんとか説得した。その後で、”消えた完済人”の情報を洗いなおすことにした。今まで債務者や金の出所にばかり目がいっていたが、今度はその後のこと−見失った後の事−に焦点をあてた。すると、意外な事実につきあたった。竹原には翌日報告することにして、この日は会社で寝泊りした。


 翌朝、松永は竹原と待ち合わせ、ふたりだけであの袋小路に行った。商店街を外れたところにある十字路、三方は他の道に続き、一方は袋小路。辺りを見回すふたり。すると、数秒と経たず、金色に黒の焦げ後がついた銃弾が転がっているのを松永が発見した。周りが灰色、物は金色。見回さなくても目立ちすぎる。ふたりは顔を向き合わせ、あわてて袋小路に駆け込んで銃弾を囲んだ。松永が手をかざすと、伝わってくるほど熱が残っている。

「竹原さん。これはいったい……」松永は絶句した。

 竹原にも訳がわからなかった。竹原は袋小路の塀をじっと見つめた。しかし何も感じなかった。ただの塀だ。

 銃弾を見ると、熱気がまだわずかに残っている。しかし、銃弾からは満を見失ったときの袋小路と同じような感覚を覚えた。

「松永。この銃弾を持って帰れ。指紋の類はつけるな。」竹原はいつも以上に低い声で松永に指示した。松永はただならぬ気配を感じ、手袋をし、慎重にチャック付きの黒い袋に銃弾を入れ、ポケットにしまった。竹原も松永も、銃弾が重大な手がかりであることを認識していた。 松永は、竹原を連れてその場をあとにした。銃は持ってこなかったが、銃弾を所持しているだけで警察と関わることになるのは避けたかった。


 二人は松永ファイナンスに戻った。松永ファイナンスは大きなビルの5階にあり、表向きは普通の金融会社を装っている。宣伝はしていないが、株やFXなどの投資相談も受けている。 オフィスには松永が使用する社長室がある。二人きりで話すには絶好の場所だ。竹原は自身が所属する斉田金融では部長待遇だが、部屋までは持っていない。

 社長室には、社長用のデスクにミーティング用の机があり、6人まで会議できるようになっている。松永はすでに出勤していた部下に、誰も取り次がないように指示した。部屋に備えてある冷蔵庫から冷たい緑茶を出し、こんなのですみません、と詫びつつ紙コップで竹原に出した。二人はまずお茶で喉を潤した。まず竹原が切り出す。

「松永よ、これからどうするんだ?」

「こうなると、杉山本人を呼び出すしかありませんね。」

「家族の債務を引き取って脅すか?」

 満の親類の誰かが借金をしていてしかも滞納しているなら、貸主の債権を買い取って自己の債権とし、それを容赦なく取り立ててやると脅すのだ。言うことを聞けば借金は取り消してやると。

「残念ですが、それは使えません。たしかに満の親類は満に貸すために表の金融に手を出しています。しかし馬鹿正直に元金を含めて滞納することなく返済し続けています。法的に会社的にも問題ない状態です。相手が俺たちに債権を売る理由がありませんし、売られたとしても脅しの材料になりませんよ。」

「なら、他に方法があるのか?」

「最後の一手があるんです。」

「最後の一手? なにがあるってんだ?」

「実は、妙な情報を得たんです。」


松永が竹原に対して敬語を使うのは、序列と、竹原に対する尊敬の念からです。

伏線を少しずつあらわにして、話を進めていきます。

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