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第17話:借金完済

杉山満は「アナザーズ」のキャラになる契約を交わし、ついに履行の時を迎えます。

まずは借金を返します。

 夢を見た。

 俺が普段「アナザーズ」でプレイしているキャラがいる。細面の若い戦士だ。何かのシナリオで敵と戦っているらしい。敵は強面のオークで、槍で対抗してくる。

そこへ、ローブをまとった若い女性が現れた。

肩にかかる長い髪を後ろで縛り、ぱっちりとした瞳、小さい顔、少し膨らんだ胸。16歳くらいだろうか。俺はこの子を知っている。なのになぜだろう。誰なのか思い出せない。

 彼女はオークではなく俺に向かって何か呪文を唱えた。何かの術にかかったらしく、彼女に吸い寄せられる。彼女はローブを脱いで俺を待ち構えていた。ローブの中は…闇だった。俺はそこへ吸い寄せられ、やがて何も見えなくなった。

 ……気がついたら俺は彼女になっていた。そして、目の前には細面の戦士……ではなく、リアルの俺がいた。オークはどこかに消えていた。

「俺をお前に与える。これが最初で最後だ。」そういって、俺は俺を……抱いた。俺は俺に、抱かれた。俺は、俺がなったこの子が何者なのか思い出した。よく知っていた。

 そこで目が覚めた。


 時計は無いから何時かはわからない。いつのまにか布団にくるまって寝ていたらしい。

 ゆうべの肉じゃがが胃の中に残っているためか、朝なのに満腹感がある。そう思っていたらまた眠くなり、二度寝する。

 ふたたび起きると、眠気はなくなっていた。寝室のドアから明かりが漏れている。もうエリスは起きているようだ。わずかな明かりを頼りに部屋を見渡すと、俺の着替えが洗濯された状態で置かれている。当然エリスの仕業だろう。

同じ服を、俺が寝ている間に洗濯してくれたのだ。俺は最低限の身支度を整えて部屋を出て、洗面所で顔を洗い、その足でキッチンに向かった。エリスはすでに起きていて、朝食の用意をしていた。薄い緑色の長袖ブラウスに、水色のロングスカートを履いていた。脚の長いエリスには良く似合う。

「おはようございます。よく眠れましたか。」

「あ、ああ。」

「朝はフレンチトーストと卵焼き、コーヒーです。」

 そういって、フライパンから黄色く焼けたフレンチトーストと、すでに作ってあった卵焼きを皿にのせてテーブルに持ってきてくれた。

 コーヒーは、砂糖なし、コーヒーに牛乳を入れたものだ。俺の朝はこうして始まっていた。

 エリスも席につき、「いただきます」と言ってふたりで朝食を摂り、「ごちそうさま」と言って朝食を終えた。エリスは流し台に向かう前に再度コーヒーを淹れて俺に言った。

「片づけが終わりましたら、契約履行の準備をしますので、少し待っていてください。」


 エリスは一度奥に消えてから、ノートパソコンとデスクトップのディスプレイを持ち出してきて、てきぱきと回線の接続を行っていった。

 ディスプレイはエリス側を向いていて俺は見ることができない。ノートパソコンのキーをカタカタと打ち鳴らす音が聞こえる。

「さて、これから契約を履行します。心の準備はいいですか?」エリスの準備は完了したようだ。

「ああ」俺は即答した。もうここまで来れば、なるようになるしかない。

「まず、あなたの借金とご家族への補償を行います。ディスプレイを見てください」

 エリスはディスプレイを俺の側に向けた。

「ウィンドウを5つ表示しています。これは、関係者の銀行口座です。リアルタイムで状況が表示されるようになっています。まず、お約束の3000万円を、我々の口座からあなたの口座に振り込みます。」

 エリスは2つのウィンドウを拡大表示させた。左側がエリス側、右側が俺の口座だ。エリス側は預金残高にカンマが3つもついている。俺のほうは赤字こそないが、カンマもない。

エリス側口座に「送金 30,020,000」の文字が表示され、同時に、俺の口座に「振込 30,020,000」が表示され、俺の預金残高が急増した。

 余計に振り込まれた2万は振込手数料だそうだ。

「はい。これであなたの口座に約束の全額が振り込まれました。続いて、あなたの口座から送金を行います。」

 あまりあっさり過ぎて拍子抜けしている俺をよそに、エリスは淡々と作業を続ける。

 俺の口座から、松永率いる松永ファイナンスに1700万、竹原率いる斉田金融に500万、舞子に500万の送金が記録された。

 さらに、俺が借りた親類5人へ合計200万、舞子が借りた親類3人へ合計100万も後に続いた。

 エリス側は法人名義のようで一括の送金・振込ができたが、俺は個人名義なので、1回の振込みに対する上限が100万となっている。最初は100万ずつ、最後に端数が送金される。手数料金額も通帳に記載されるので、全部で俺の通帳には70行以上の取引が書き込まれた。

「送金が終わりました。存分に確認してください」エリスは端末を俺の前に寄せた。

約1時間ほどの間、マウスでウィンドウを操作しつつ、ディスプレイとにらめっこした。すべての行を目で確認するのはかなり大変だった。

「……はい。これで、3000万円分の振込と送金を確認していただきましたね。では……」

「ちょ、ちょっ、ちょっと待ってくれ」俺は思わずエリスの作業をいったん止めた。


個人の振込について調べてみましたが、金額については1日または1回の上限があるところがほとんどでした。法人は回数も金額も上限は自分で設定というのがほとんどでした。

個人取引について、1回の上限金額はあっても回数制限が無い銀行があり、今回はそこを基準に考えました。


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