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海で水着回

 慌ただしかった真桐先生のお見合いの件も落ち着き、すでに夏休みの宿題を終えた、8月半ば。


 電子書籍で購入したラブコメマンガをスマホで読みながら、こんな後輩が現実にいたとして、俺のような強面は果たしてイジられるのだろうか……? と、真剣に考えていると、スマホに通知が届いた。


 見ると、久しぶりに朝倉からメッセージが届いたようだった。


『明日暇なら海に行かね?』


 かなり急な話だったが、明日の予定は特にない。


『良いぞ』


 俺が一言返信すると、すぐにメッセージが返ってくる。


『10時に駅前に集合』


 それから間髪入れずに、


『あと、女子を呼ぶのはダメだからな。特に葉咲や冬華ちゃんを誘うのは、絶対になしな!』


 と、続けてメッセージが届いた。


『分かったが、どうしてだ?』


『水着姿の冬華ちゃんと葉咲はめちゃくちゃ見たい、すげー見たい』


 それなら誘えばいいんじゃないかと思ったが、


『だけど、それ以上に。…水着美少女二人を侍らせる友木が見たくないからだ』


 

 次に朝倉から届いたメッセージを見て、俺は自重した。





「っしゃあ、着いた……海だっ!」


 そして翌日。

 電車とバスを乗り継いで、俺たちは海に辿り着いた。

 すでに水着に着替えて海を前にしながら、朝倉はそう言った。

 

 自然に鍛えられた筋肉だ。日々の部活での努力がうかがえる。

 室内スポーツのバレーをしているが、うっすらと日焼け跡が見えるのは、外練もしているからだろう。


「やっぱり、日差しがきついな」


 そう呟いて、太陽の眩しさに目を細めるのは池だった。


 高身長イケメンの池は、何を着ても様になるが、海パン一枚でも様になる。

 運動部に所属をしていないにもかかわらず、意外なほど鍛えられているその身体つきは見事だった。


 近くを通り過ぎた水着ギャルが、そんな池をチラチラ見て噂をしていることからも、こいつのイケメンっぷりが伺える。  


「それにしても、結構人多いっすねー」


 苦笑しつつ言ったのは、甲斐だ。

 筋トレの成果が出てきているのか、中々立派な筋肉をしている。


 少し離れたところから、派手目のギャルが獲物を見る目で甲斐を見ているのに俺は気がついた。

 やはり、甲斐もイケメンだから、こういうところではモテるのだろう。


 この男四人が、本日のメンバーだ。

 俺は朝倉に向かって問いかける。


「それで、海に来たら何をしたら良いんだ? 悪いが、経験がないので全然わからん」


 俺の問いかけに応えたのは、甲斐だった。


「まずは、日焼け止めを塗りましょうか、友木先輩!」


「いや、別にそれはしなくても良いんじゃないか?」


「夏の日差しを舐めない方が良いっす、友木先輩。日焼け止めはこまめに塗っとかないと、マジで痛いっすから」


 真剣な表情で言う甲斐に、


「ま、確かにそうだよな。この間、外練した時酷い目にあったからな」


 と、その時のことを思い出したのか、力なく笑いながら朝倉も同意した。


「俺、日焼け止め持ってきてるんで、使ってください!」


 そう言って甲斐が日焼け止めを差し出してくる。


「それじゃ、有難く使わせてもらう」


 それから俺たちは、甲斐から受け取った日焼け止めを身体に塗り込んでいく。


「すんません、友木先輩。背中に塗るの、手伝ってもらっても良いっすか?」


 甲斐が甘えるような声で俺に問いかける。


「ああ。そのくらい構わない」


 俺はそう言ってから、日焼け止めを手に取ってから、甲斐の背中に塗る。


「さっき見た時も思ったが、温泉に行った時よりも、仕上がっているな。中々良い身体だ」


 俺がそう言うと、甲斐は照れくさかったのか、耳まで真っ赤にして


「友木先輩にそう言ってもらえると……嬉しいっす」


 と呟いた。


「塗り終わったぞ」


「ありがとうございます! ……今度は、俺が先輩の背中に日焼け止めを塗ります」


「そうか。助かる」


 俺は日焼け止めを彼に手渡す。

 それから、俺の背中の隅々まで、丁寧に日焼け止めを塗っていく甲斐。


「やっぱり……先輩、大きいっす」


「おう。……そこまで執拗に塗り込まなくっても良いんじゃないか?」


 俺が問いかけると、


「そ、そっすね。はは、すんません」


 甲斐は答えて、手を止めた。


「助かった、ありがとな」


 俺が甲斐に向かって言うと、


「お役に立てて、光栄っす」


 と、嬉しそうに言った。

 なんて先輩想いの後輩なんだろうかと、俺が感激していると、朝倉から声が掛けられた。


「よし、良い感じのターゲットも見つかったし、そろそろ行くぞ」


「……何をするんだ?」


 朝倉の言葉の意味が分からなかった俺たちを代表して、池がそう問いかけた。


「何って、男たちで夏の海に来たら何するかそんなもん決まってるだろ!?」


 俺は池と甲斐と顔を見合わせて、首を傾げる。

 それを見た朝倉は、大げさに顔を覆って嘆いてみせた。


「かぁ~っ! マジでか、お前ら!? 信じられねぇっ!」


 なんか今日、テンション高いな、朝倉。


「海に来たら、水着のお姉さんをナンパしなくちゃいけないだろうが!? そのために、お前たちを呼んだんだぞ!」


 熱弁する朝倉。

 海に来たらナンパしなくちゃいけないというのは分からないが、そのために池と甲斐という、二人のイケメンを連れてきたのは良くわかる。

 だが、それなら……。


「ナンパをするのに池と甲斐を呼んだのは、女子の食いつきが変わりそうだとわかるんだが。俺みたいな強面がいたら、女子を怖がらせるばかりでナンパになんてならないと思うぞ」


 俺が言うと、朝倉はニヤリと笑みを浮かべた。


「いや、その点は抜かりない」


 そう言ってから、朝倉は海パンのポケットからサングラスを取り出した。

 そして、それを俺にかけた。


「こうしてサングラスをかけ、髪の毛を適当に遊ばせて……」


 それから、俺の髪の毛をいじくる朝倉。

 そして満足そうに頷いてから、笑顔で告げる。


「ほら、やっぱな! こうすれば、水着ギャルが好みそうなオラついたマッチョ系パリピにしか見えない!」


 ……果たしてそれは、誉め言葉なのだろうか?

 俺は普通に疑問に思った。


「ていうか、サングラスを着けても、強面は強面だろ? ビビらせるだけだと思うぞ」


 朝倉は俺の言葉に肩を竦めた。

 本当に今日の朝倉はテンションが高い。


「普段サングラスを着けていたら、確かに怖さは変わらないけど、今いるのは海だぞ」


「確かに。海でなら、場の雰囲気的にサングラス着用の怖さっていうのは薄れるな」


 朝倉の言葉を聞いた池も、同意を示した


「いつもと違う雰囲気の先輩も、素敵っす」


 それから、甲斐がそう言って、俺を褒めてくれた。


 どうやら、場の雰囲気も相まって、強面も少しは軽減されている……ようだ。

 だからと言って、本当に怖がられないのだろうか?

 そんな風に心配していると……、

 

「しかし朝倉。俺はナンパにあまり興味がないぞ」


 やる気に満ち溢れる朝倉に、唐突に池が言った。


「……え?」


 池の言葉を聞いて、一瞬で真顔になった朝倉。


「あー、俺も。別に興味ないっすね」


 その朝倉に、甲斐も続けて言う。


「ていうか俺は……冬華に怒られるから」


 無表情を浮かべる朝倉に、申し訳ないが俺もそう言った。

 俺がナンパをしてもきっと、俺と女子の二人にトラウマが植え付けられてしまうだけだろうし、出来ればご遠慮願いたい。

 

 

 そんな俺たちの言葉を聞いて、朝倉は膝を折り、その場に蹲った。

 そこまでショックだったのか。そう思いつつ彼を見守る。

 それからしばらくして、朝倉は震える声を振り絞って言う。


「折角の高校二年の夏なんだ。部活ばかりじゃなく、池や友木みたいに……可愛い女の子とイチャイチャして過ごしてみたいんだっ!」


 澄んだ瞳をこちらに向けてから、朝倉は叫ぶ。

 

 その切実な表情と声を聞かされて断れるほど、俺は冷酷になれない。

 俺たち三人は互いに頷きあってから、蹲る朝倉に手を差し伸べたのだった。





 そして、朝倉と共に女子大生をナンパをした結果――。




「あれー、先輩? 私という超絶美少女な彼女がいるのに、ナンパとか、するわけないですよねー?」




「ねぇ、優児君。何度も言っているよね? 冬華ちゃんに飽きちゃったなら、私に声をかけてって?」




 ……どうしてか、修羅場っぽくなった。 


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