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5、告白

 俺が妹キャラ・池冬華と出会った翌日。

 

 それは、いつも通りの日常だった。

 池の根回しにより、このクラスの居心地の悪さはこれまでの学校生活の中でもマシな方だが、それでもまだ、周囲が俺に怯えているのが分かる。

 俺に進んで話しかけようとするのは、池ただ一人だけ。


 そう、これが俺のいつも通りの日常なのだが。

 ポケットの中に突っ込んだスマホが振動し、池冬華からの連絡があったことを告げた。

 スマホの画面で彼女からのメッセージを確認した瞬間――


『今日の昼休み、体育館裏で二人で会えませんか? 相談したいことがあるんです』


 俺のいつも通りの日常、というものがお亡くなりになられた。


 美少女からのお誘い、俺にとっては縁遠いものだ。

 ……だが、冷静に考えれば、彼女が俺に相談することなど、池に関することだとすぐに分かる。

 某可愛い妹のラノベ的に言えば、これは人生相談、ということになるのだろうか。


『分かった、会えるぞ。ただ、体育館裏はだめだ。俺が下級生をシメていると勘違いされるから』


 俺が返信すると、間髪入れずにまた俺のスマホがメッセージを受信した。


『何ですか、それ笑。やっぱり先輩面白いですね~。それじゃ、屋上でお待ちしてますね』


『屋上は鍵がかかっていると思うぞ』


 この学校の屋上は、漫画やアニメのお決まりのように、一般生徒に対して開放はされてはいない。

 新入生である彼女は、そこら辺のことをまだわかっていないのだろうと思っていたが……。


『大丈夫ですよー』


 と、返信がきた。

 大丈夫とは、どういうことだろうか?

 鍵でも借りてくるのだろうか……分からない。

 しかし、もし屋上に行けるとすれば、体育館裏よりも目立たないだろう。


『分かった』


 俺は一言だけ送ったのだった。



 そして、昼休み。


 俺は基本的に一人で飯を食う。

 たまに、池と一緒に生徒会室で食べることもあるが、今日は誘われることもなかったため、誰にも怪しまれず、声をかけられることもなく、屋上へと向かう。


 階段を昇り、屋上の扉のドアノブを掴む。

 期待していなかったが、扉は難なく開いて、屋上に出ることができたので、少し驚いた。


「あ、どもです、先輩!」


 そして、一足早く来ていた妹に、声をかけられた。


「おう。……屋上の鍵、かかってただろ? 先生に借りたのか?」


「いえ、昨日校内を散策している時に気づいたのですが、屋上の鍵が壊れてたんですよ」


「……そうだったのか、知らなかったな」


 2,3年は屋上に入れないのが共通認識なわけで、気づけなかったのは無理もないだろう。

 ただ、先生や事務員の方々はしっかりと設備点検等をしていただきたい。


「屋上は風が気持ちいですねー」


 そんなことを思っている俺に、彼女は風に揺れる髪の毛を押さえつけながら言った。


「そうだな。天気も良いし、確かに気持ちがいい」


 俺が答えると、「ですよねー」と彼女は応じた。


 ……改めて考えるとすごいな。俺、今女子と普通にしゃべっているぞ!

 そして教師すらビビる俺の強面を見ても普通に接してくれるこいつもすごい!


「早速だけど、相談っていうのは何だったんだ?」


 俺が問いかけると、彼女は照れくさそうにはにかんだ笑みを浮かべつつ、


「実は、相談っていうのは嘘だったんですよー」


 と。

 彼女はそう言った。


「嘘? ……用もないのにわざわざ人気のないところに呼んだのか?」


「用がないとお呼びしちゃだめですか?」


 上目遣いにこちらを覗き込みながら、首を傾げた。

 あざといと思ったが、その仕草はとても可愛らしかった。


「いや、そういうわけじゃないが。俺と一緒に居ても楽しくないだろ?」


「そんなー、楽しいですよ。先輩、面白いですし!」


 俺に向かって、悪戯な笑顔を彼女は浮かべる。

 俺はそんな風に笑顔を向けられる経験が少ないため、なぜか動揺する。

 そのまま気まずそうに無言でいる俺に、彼女は続ける。


「でもまー、用がないってわけでも、ないんですよ?」


「……そうなのか? それじゃ、本当の用ってのは、一体何なんだ?」


「やー、いきなりそれを聞かれると、恥ずいというかー、照れるというかー」


 言いながら、視線を伏せながら頬を赤く染めつつ、頭を掻いている。

 恥ずかしい? 照れる?

 一体どんな用件なんだろうか、気になる……。


 無言のままの俺の視線が気になったのか。

 彼女は意を決したように、視線をまっすぐに俺へと向けた。

 そして、大きく深呼吸を3度繰り返してから、ゆっくりと口を開いた。



「先輩っ。私と恋人になってくれませんか?」


「は?」


「もう一度言わせたいんですか? 意地悪な先輩ですね。……私と、恋人になってくれませんか?」



 口元に笑みを湛え、潤んだ瞳で俺は見つめられる。

 すぐに返事をすることが出来ない。

 ただの友人キャラである俺が、こんなイベントに遭遇したことなんて、これまでの人生でなかったのだから。



 ただ、すぐに俺はこの告白は何かがおかしい、と感じた。

 出会ったばかりの美少女に、好意を告げられる。

 物語の主人公――そう、例えば池ならば何もおかしくない。

 むしろ自然なことだと断言できる。



 ならば、俺はどうだ?

 突然美少女に告白をされて、それが自然だと言えるのか?

 

 ……その問いかけに対する答えは決まっている。

 


 友人キャラの俺がモテるわけないだろ?

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