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17、日焼け

「うー、あっついですねー」


 照りつける太陽に目を細めながら、堪えたように呻く冬華。


「確かに、暑いな。こんな中で試合をする選手はすごいな」


「そうですねー。ていうか、こんなに日差しが強いと日焼けしちゃいそうで怖いですよ。……あとで日焼け止め塗りなおしておかないと」


 はぁ、とため息を吐いてから、冬華は自らの腕をさすりつつ呟いた。

 

 今日は休日だった。

 俺と冬華は、葉咲の応援のために、市営の運動公園に来ていた。

 ここでテニスの大会があり、俺たちは試合が行われるテニスコート付近を目指して歩いていた。

 

 それにしても、葉咲に声をかけられたときは驚いたが、改めて考えてみれば、冬華との仲直りのきっかけになれば、とでも思っていたのだろう。

 

 どちらかというと、俺には冬華の気持ちが良くわからなかった。

 どうしてあんなにあっさり、応援に来ると言ったのだろうか? それは、未だに分からなかった。

 ただ、文句は言っても、言われた通り来るあたり、案外冬華も仲直りをしたいと思っているのかもしれない。


「……あ、そうだ! 先輩的には色白の女の子と、小麦色に日焼けした女の子って、どっちが好きですか?」 

 閃いたっ、とでも言いたげに、楽しそうな様子で問いかけた冬華。

 

「どっちでも良い。本人の好きにするのが一番だ」


 俺の答えに、冬華はつまらなさそうな表情となった。

 

「……それじゃ、質問を変えるんですけど。小麦色に日焼けした私を見てみたいって思いますか?」


 その問いかけに、俺は日焼けした冬華を思い浮かべる。


「似合うかどうかは分からないけど、見てはみたいな」


「なんですか、その微妙な答え! 見たいなら見たいって言ってくださいよ、そしたら日焼け頑張ってみるのにー!」


 不満気に言う冬華。

 もしかしたら、日焼けをするのにちょっと興味はあるものの、中々踏ん切りがつかないのかもしれない。

 俺が見たいと言えば、それをある種の言い訳に、日焼けに踏ん切りがつくのだろう。


 しかし……。


「冬華は色白で綺麗な肌をしているから、日焼けをするのはなんだかもったいないと思う」


 その言葉を聞き、俺の視線に気が付いた冬華は、ぱっと両腕を後ろに回した。

 そして、顔を真っ赤にして、涙を浮かべて俺に抗議する。


「な、何言ってんですか!? いっつも先輩は私をそういう風に見ていたんですか? ……て、てかそれ、セクハラですから、チョーキモイですから!」

 

 一気呵成に言い終えた冬華。

 俺としては褒めたつもりだったが、確かにセクハラと受け取られても仕方ないような言葉だったと反省する。


「悪い、冬華。不快にさせてしまったな」


 そして、自分のコミュニケーション能力の低さを改めて思い知り、凹む。

 内心落ち込んでいる俺を見て、冬華はこほんと咳ばらいを一つした。


「……別に、そこまで不快ではないです。あと、やっぱりキモくもないです。……だって、私が可愛すぎて、先輩の視線を釘付けにするのがいけないんですから、先輩は欲望の赴くまま、私の綺麗な肌だけを見続けていればいいんですよ。私が許してあげますから、遠慮なんてしないでください」


 と、照れ臭そうに頬を赤くしたまま、そっぽを向いて冬華は答えた。

 俺が凹んでいたから、言い過ぎたと思いこんなフォローをしてくれたのだろう。

 ありがたいことだと俺は思った。


「そうか。じろじろ見たりはしないから、安心してくれ」


「……だから、ホントに嫌ではないんですってば」


 俺の言葉に、冬華は小さく応える。

 分かってる、冬華の気遣いは、俺もちゃんと理解している。

 

「お、来たな二人とも!」


 そんなやりとりをしていると、いつの間にか目的地に辿り着いていたようた。

 俺たちに声をかけてきたのは、池だった。


「池も来ていたのか」


「マジ? いつ家出たのか気が付かなかったんだけど。影うっすー、チョーじわるんですけどー」


 冬華は、会ってすぐからかうように池に向かって言った。


「冬華は優児のことばかり考えているからな、俺なんて家にいてもいなくても分からないのは仕方ないか」


 お返しのように池が言うと、冬華は顔を真っ赤にしてから、池を睨みつけて言った。


「は? キモ、セクハラ。今の超セクハラ。二度と話しかけないでキモイから。ていうか優児先輩の前でそういうこと言うとか、ホントキモイ、ありえないから」


 池は肩を竦めてから、俺に向かって言う。


「可愛げのない妹ですまないな」


「俺には結構気を使ってくれたりするけどな」


「そう! クソ兄貴と優児先輩の扱いが、同じわけないじゃん! ねー、センパイ♡」


 いや、冬華さっき俺にも似たようなこと言ってたよな?

 という言葉を俺は呑み込む。


 しかし、以前まではまるきり拒絶をしていたのに、いつの間にかこうして冗談を言い合える仲になっていたのか。

 俺は嬉しくなると同時に、結局俺が何かをするまでもなく、二人の仲は良くなったんだなと、情けなくなった。


 冬華と葉咲の関係も、俺の出る幕もなく、あっさりと修復されるかもしれないな。


「どうしたんですか、先輩? ちょっぴり顔が暗いですけど?」


「仲良くなったな、と思ってな」


 俺の言葉に、池と冬華は驚きを浮かべて、互いに顔を見合わせる。

 それから、優しい笑みを浮かべて、冬華は言った。


「先輩のおかげですから」


「ま、そういうことだ。ありがとな、優児」


 池も、冬華に続いて言った。

 ……心当たりが全くなかった。

 一体俺は何をしたというのだろうか?


 ピンとこない俺は、しばし思案する。

 

 結局答えは分からない。

 どういうことか聞こうと思い、口を開こうとしたのだが。


「それで、葉咲先輩ってどこにいんのー?」


 冬華が池に向かって尋ねていた。

 この話の流れでは、俺の質問はしにくいな。

 また、改めて聞くことにしよう。


「今、コートで試合しているのが夏奈だぞ」


 池が冬華の問いに答え、コートを指さした。

 その先を見ると、女子の試合が行われているところだった。


 確かに、そこには葉咲夏奈がいた。

 だが、そこにいたのは、俺が知るホンワカした雰囲気の葉咲ではなかった。


 真剣な表情でボールを追いかけ、強気に試合を進める彼女は、まるで別人のようだった。

 長いラリーを制した彼女は、ガッツポーズをして好戦的な声を上げた。



 普段見慣れない葉咲のその姿を見て、俺はカッコいいと思い。

 視線を逸らすことができず、試合に魅入られるのだった――。 


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