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13、勉強会(上)

 そして、ファミレスに到着した俺たち。

 俺の顔にビビる店員さんにボックス席に案内された。


「それじゃ、先輩と私はこっち側に座りましょっか!」


 冬華にぐいぐいと押され、俺は奥の席に座らされた。


「それで、アニキは両隣の勉強を見られるように、真ん中に座って、朝倉先輩は優児先輩の前、葉咲先輩は通路側に座りましょ」


「それが良いな」


 朝倉は冬華の言葉の通り、俺の正面に座った。


「んじゃ、俺は真ん中だな」


「私は、こっちかぁ」


 池に続いて葉咲も座る。

 その時の彼女は、どこか残念そうにしていた。

 冬華の正面に座りたかったのかもしれないな。


 全員が着席したのを、冬華は満足気に眺めてから、頷いた。

 何か一仕事終えた感を出してるけど、これからが勉強会の本番だぞ。


「ドリンクバー以外に、何か食べ物欲しい奴、いるー?」


 朝倉がテーブル上の呼び出しボタンに手を伸ばしながら問いかける。


 全員が首を振る。

 それを見て、朝倉は呼び出しボタンで店員を呼び出し、ドリンクバーを人数分注文した。


「そしたら、先に飲み物取って来ます。あ、優児先輩の分も取ってきますね」


 冬華は立ち上がり、俺に向かってそう言った。


「悪いな、頼んだ」


「はい、頼まれましたっ」


 冬華はご機嫌な様子でドリンクバーのコーナーに向かった。


「あ、それじゃ私は春馬と朝倉君の分、取ってこよっか?」


 葉咲は、二人に向かって問いかけた。


「サンキュー、俺コーラで!」


「俺はウーロン茶を頼む」


 朝倉と池が答える。


「うん、それじゃちょっと待っててね」


 と言って、冬華の後を追って行った。


「……上手くいってるみたいだな」


 男子だけになったテーブルで、池がしみじみと呟いた。


「なんのことだ?」


「冬華との関係に決まっているだろ?」


「今の流れでそれ以外に何があるんだよ」


 当然のように言った池と、苦笑する朝倉。

 ああ、そうかと俺は思った。


 二人とも、俺と冬華は本物の恋人同士だと思っているのだから、こんな反応にもなるか。


「ああ、おかげ様でな」


「冬華はわがままで生意気だから、優児を困らせてばかりだと思っていたんだが、まさか自分から飲み物を取りに行くほどとはな」


「ガチで羨ましい……」


 二人の言葉に、俺も返事をしようと思ったのだが、丁度冬華が席に戻ってくるのが見えた。

 彼女はグラスを一つずつ両手に持って、片方を俺の方に差し出した。


「どうぞ、先輩。いつものやつです」


「ありがとう、助かる」


 俺はそう答えて、受け取る。

 早速一口飲むが、それは紛れもなくブラックコーヒーだった。

 グラスを机に置くと、ニヤニヤ笑いを浮かべた池が言う。


「そういえば冬華は、優児に何を飲みたいか聞いていなかったな」


「彼氏の好みは把握しているってわけか……超健気だ」


 朝倉が、感激したように冬華を見た。


「やー、好きな人の好きなものは何でも知っておきたい乙女心みたいな? そんな感じなんですよー♡」


 カップルアピールをここぞとばかりにする冬華。 


「へー、友木君コーヒー好きなんだね。私も覚えておこっ」


 いつの間にか戻ってきていた葉咲は、池と朝倉の前にそれぞれグラスを置いていった。


「……ただのクラスメイトの優児先輩の好みなんか覚えて、葉咲先輩はどうするつもりなんですかぁ?」


 割と刺々しい言い方の冬華に、


「私が代わりに飲み物取ってくること、あるかもしれないと思っただけだよ。心配しなくても大丈夫だよ、冬華ちゃん。素敵な彼氏を取ろうだなんて、思っていないから」


 少し寂しそうな声音で、葉咲は苦笑を浮かべつつ言った。

 そうなのだろう。

 葉咲が仲良くなりたいと思っているのは、俺じゃなくて冬華なのだから。 


 冬華は疑わしそうに数秒葉咲を見ていたが、その後に大きく息を吐いてから、


「そういうことなら、別に良いんですけどね。……それじゃ、勉強会を始めましょう! 分からないことがあったら、教えてもらうのでよろしくお願いしますね♡」


「俺に分かる範囲で頼む」


 俺の答えに、冬華は「えー、もっと頼もしいこと言ってくださいよー」と不服そうに唇を尖らせて言うのだった。



 それから、1時間ほど俺たちは各々勉強を進めていた。

 とはいえ、池は葉咲と朝倉に教えてばかりで、ほとんど自分の勉強ができていなさそうだったが。


 ちなみに、冬華も分からないことがあり2度ほど俺に質問をしてきたが、何とか答えることができる問題だった。


「……それにしても、先輩って結構頭良いんですね」


 2度目の質問に答えていると、冬華が感心したように言った。


「優児は去年の学年末テストで7位を取った秀才だからな」


 そして何故か自慢気に言う池。


「え、7位! すごいじゃないですか、先輩! ……アニキがドヤ顔なのは意味わかんないけど」


 至極当然のツッコミを入れた後、


「それにしても、優児先輩は頭も良かったなんて……素敵です。私、惚れなおしちゃいました♡」


 俺を上目遣いに覗き込みながら、冬華が言った。


 そんな俺たちを見て、池は笑顔で頷き、葉咲は曖昧に笑う。


 そして――。


「今更だけど……。一番最初にイチャイチャ禁止って言ったじゃんか……」


 と朝倉が頭を抱えながら、絶望を孕んだ声で呟いていた。


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