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6、告白?

 そして、昼休み。

 

 俺は手紙に書かれていた通り、体育館裏に向かおうとして……。


「優児!」


 池に、呼び止められた。

 どうしたのだろう、そう思って立ち止まる。


 俺の傍に歩み寄ってきた池が、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべてから、


「大丈夫だとは思うんだが、もしも、万が一。面倒なことになったら……その時は、すぐに俺に連絡をしてくれ」


 と言った。


「おう、そうさせてもらう」


 心配をしてくれているのだろう。

 その心遣いが嬉しい。


「それじゃ、行ってくる」


 俺はそう言ってから、背を向けると、


「ああ」


 池の力強い言葉が、耳に届いた。



「急に呼び出しちゃってごめんね」


 体育館裏に着いた俺を待っていたのは、葉咲夏奈だった。


 いつになく真剣な表情を浮かべながらそう言った彼女に、俺は無言で頷き、先を促した。


 ……のだが。

 

 彼女はそれきり何も言わなくなった。

 思いつめたような表情に、もしや俺は告白でもされるのではないだろうか……と、一瞬だけ考えたが、バカな妄想だとすぐに否定する。


 しばらく続いた静寂を打ち破ったのは――

 















「ごめんなさいっ! ……お友達から始めてください!」

















 懸命な表情で、葉咲はそう言った。




 俺は驚きのあまり、動揺を隠せなかった。


 俺を呼びだした人物が葉咲であること自体驚いた。

 そして、その呼び出した理由が、告白もしていない俺にお断りの言葉を告げるため、というのが想定外というか……一言で言うと意味不明だったからだ。


「……は?」


 俺は呆然としたまま、一言。

 すると、葉咲は怯えたように、瞼を伏せた。


「……葉咲」


「は、はい……」


 俺の呼びかけに、力なく応じる葉咲。

 そんな彼女に、俺は直球で尋ねかける。


「なんで俺は今、葉咲に振られたんだ?」


 葉咲は俺の言葉を聞いて、


「え?」


 と呟き、首を傾げた。


「は?」


 その反応の意味が分からなくて、俺も思わず低く呻く。


 互いに釈然としない様子で、首を傾げていると……、葉咲がぼそぼそと呟き始めた。


「振られた? ……え? 私に友木君がってこと? 私はただ、これまでのことを謝って、お友達からやり直してもらおうと……」


 そこで、何かに気が付いたように、ハッとした表情を浮かべてから、


「……え、あれ? もしかして、今私……え、ええ!? 嘘!?」


 これまで見たことないくらい慌てふためいていた。


「あの……葉咲?」


「違うの、違うから! 別にそういう意味で謝ったわけじゃなくって、私、結構友木君にこれまで嫌な感じで接してたでしょ? だから、それを謝ろうとして、それで……それでっ! とにかく、私は告白されてもいないのに男の子を振るような自意識過剰じゃないよ!」


 半泣き状態の葉咲が、そうまくしたてる。

 別に振られたわけではないのか?

 いや、それにしても……。


「葉咲が俺に謝ることなんかあったか?」


 なぜこのタイミングで俺に謝罪をするのかが、俺には分からなかった。

 

「い、いや。えっと……冬華ちゃんとのことを詮索したり、突っかかっていって、すぐに逃げ出したり、結構失礼なことをしちゃったでしょ?」


「ああ、そういうことか」


 睨んだり、俺と冬華に無理難題を吹っ掛けたりと、葉咲も一応、悪いとは思っていたんだな。


「それで、『お友達から始めてください』っていうのは、どういう意味なんだ?」


「う、ええっと……言葉の通り、何だけど」


 酷く怯えたように、葉咲はそう言った。


「なんで、俺と友達になりたいって思うんだ? そこも分からない」


 俺が問いかけると、不自然に視線を泳がせる葉咲。

 この反応、何か言い訳でも考えているのかもしれない。


「ホントは、ずっとお友達になりたいって思ってて……」


「いや、それは嘘だろ。しょっちゅう俺のことを、真っ赤な顔で睨んだりしてたの、流石に気づいている。葉咲は俺のことを良く思っていないだろう?」


 俺がそう指摘すると、彼女は顔を真っ赤にした。

 図星を突かれて、恥ずかしかったのだろう。 


「え、えぇ!? 気がついてたの!!?? ……って、いうか! 別に、睨んでないよ! ……真っ赤な顔はしてたのかもしれないけど」


 もじもじとした様子で、葉咲は言った。


「だったら、なんで俺を見てたんだ?」


「それは……そのっ」


 迷いを浮かべる葉咲。

 しかし、数秒考えたのち、やけっぱちになったように葉咲は告げる。















「睨んでいたわけじゃなくて! 友木君みたいなイケメン男子を見ていたら……照れくさくなっていただけだからっ!」












 


 ……俺はその言葉に、驚きを隠せなかった。













 ……嘘が下手、というか。

 雑すぎるっ!

 

 普段からイケメン界の頂点である池と楽しそうに過ごしている葉咲が、俺のような極悪人面を見て照れくさくなるわけがない。


 何故こいつは急に、俺のことをおだててくるんだ……?


 

 と、考えてから、一つの可能性が思い浮かんだ。


 葉咲が俺と関わるメリットとは何か?

 ……おそらくそれは、『冬華の恋人』としての利用価値だ。


 チラチラと俺の様子を伺う葉咲を見る。

 おそらく、彼女は今、俺にウソがばれていないかどうか、気が気でないのだろう。

 ……あえてツッコミはしないまま、彼女に尋ねる。


「なぁ、葉咲。俺に謝る前に、冬華にも謝ったのか?」


 俺の言葉に、葉咲は気まずそうな表情を浮かべた。

 そして視線を俯かせたまま……、


「冬華ちゃんには、私すっごく避けられてて。全然、話しかけられないんだよね……」


 と、自嘲するように、彼女は力なく笑った。



 ――なるほど、やはりそうか。

 葉咲が俺に接触した理由。

 それが、分かった気がした。



 これまでのことを謝罪し、俺に友人となってくれと言ったこと。

 あまり好きではなかった俺を、下手くそな嘘まで吐いて無理矢理おだてたこと。



 これらは、とある目的を達成するために、俺を利用したいがための方便だろう。


 

「葉咲は、冬華にも謝りたいのか?」


 俺の問いかけに、彼女はゆっくりと、無言のまま首肯した。


 やはり、そうだ。

 彼女が俺と接触した目的。



 それは――池冬華との仲直りに、違いないのだろう。



「あっ! そうだ!」



 そこで、葉咲は思いついたように手を叩いた。

 それから、言葉を続ける。



「もしも、友木君さえ良かったら、なんだけど――」



 学校のアイドルにして、この世界の主人公である池春馬の幼馴染、葉咲夏奈。


 天真爛漫で可愛らしい表の顔と。

 強かで計算高い裏の顔を併せ持つだろう彼女は――。


 

「私と友達になって、冬華ちゃんとの仲直りを手伝ってくれたら。……すっごく、嬉しいです」



 

 健気な表情を浮かべて、上目遣いで俺に対して告げたのだった。



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[良い点] 勘違い系のいい所はあまり重い雰囲気にならないところですよね! [一言] マジで面白いです
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