1、友人キャラの俺がモテるわけないだろ?
俺が中学を卒業するまでの15年間の人生は、紛れもなく最悪だった。
生まれつきの目の悪さのせいで、怖がられ、嫌われ、目の敵にされ疎まれる。
そのせいもあり、他人とのかかわりが薄かった俺は、コミュニケーション能力も乏しく、独りで過ごすことが多かった。
……だが。
中学を卒業してからの高校生活は、そう捨てたもんじゃない。
俺は今、確かにそう思っている。
俺のことを避け、嫌う者は今でも多い。
だが、それでも俺に理解を示してくれる人もいる。
俺の行動を見て考えを改めた、クラスメイトの朝倉善人。
殴り合って理解を深めた、後輩の甲斐烈火。
外見で判断せずに、何かと気にかけてくれる真桐千秋先生。
『ニセモノ』の恋人、という関係を超え、俺を信頼してくれる池冬華。
そして……この世界の主人公であり、俺を友人と思ってくれる池春馬。
俺は、彼ら彼女らのおかげで、少しはマシな『青春』という奴が送れているのだと思う。
……それでも。
やはり、多くの人々は俺のことを認めてはくれない。
その筆頭を上げるとすれば……池の幼馴染である葉咲夏奈だろう。
彼女は、ほぼ誰とでも分け隔てなく接し(残念ながら俺は除く)、天真爛漫な笑顔で数多くの男子生徒を虜にする、アイドル級に可愛らしい女子だ。
その上、テニスの腕前は全国トップクラス。
学力は県下トップクラスの進学校で、並みの成績を維持している。
そういうわけで、葉咲夏奈はめっぽうモテる。
彼女が池春馬に恋心を抱いているのは周知の事実だが、それでも告白をする者は後を絶たない。
……誰からも好かれる葉咲夏奈に嫌われているというのは、中々皮肉が効いているのではないかと、俺は苦笑してしまう。
そう。
誰からも嫌われる俺と。
誰からも好かれる彼女。
俺と、葉咲夏奈の関係が変わってしまったのは、間違いなく。
あの日の出来事が、きっかけだったのだろう――。
☆
とある日。
俺は、自らの靴箱に入っていた手紙によって呼び出されて、体育館裏に呼び出された。
怖いもの知らずな誰かの悪戯か、腕自慢のバカかどちらかと思ったが……その考えが間違えていたことに、俺はすぐに気づいた。
「急に呼び出しちゃってごめんね」
呼び出された俺の前にいたのは、真剣な表情を見せる――葉咲夏奈だった。
彼女はそれきり何も言わなくなった。
思いつめたような表情に、もしや俺は告白でもされるのではないだろうか……と、一瞬だけ考えた。
が、すぐにそれはありえないと思いなおした。
なぜなら、何度も言うことではないのだが。
――友人キャラの俺がモテるわけがないのだ。
互いに何も言いださない時間が過ぎ、静寂が辺りを支配する。
無言のままでいる彼女の、栗色のショートカットが風に流されふわりと揺れた。
髪の毛を手で押さえてから、彼女は俺をまっすぐに見つめてきた。
それから、意を決したように……。
葉咲夏奈は、ゆっくりと口を開いた。
「ごめんなさいっ! ……お友達から始めてください!」
その言葉に、俺は何も答えることができなかった。
友人キャラの俺がモテるわけがないとはいえ。
告白もしていないのにお断りをされるのは、流石に想定外だった――。






4コマKINGSぱれっとコミックスさんより7月20日発売!