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3、女教師と幼馴染

 翌日。

 いつものように登校する。

 

 新しいクラスの連中とワイワイおしゃべりをしていた奴らが、俺が教室に入ると同時にしんと静まり返った。

 気まず……。


 そんなことを思いつつ、別に俺は悪いことをやっていないのだからそのまま堂々と自席に向かう。


「よう、おはよう」


 着席すると、池が俺に声をかけてきた。


「おう、おはよう」


 俺も答える。


 周囲の人間の喧騒が、少しずつ戻っていった。

 珍しい。


 俺がいればおしゃべりなんて、恐れ多くてできませんというのが、これまでの普通だったのに。

 始業時間まで残り数分だが、クラス替えが起こった直後だ。

 だから、クラスの連中も気分が緩んでいる……のだろうか?


「……昨日、優児は別に不良じゃないってみんなには説明したんだが。やっぱりすぐに受け入れられないみたいだな」


 池が少しだけ寂しそうに呟いた。


「相変わらず、おせっかいな奴だな」


「俺は、お前が悪い奴じゃないってみんなに分かってもらいたかっただけなんだ。事実、一年の2学期以降、お前は特に素行不良だったわけでもないから、俺の言葉を信じてくれたしな。……だけど、優児にとっては迷惑だったか?」


 気遣うような視線をこちらに向ける池。


「……好きにしろ」


 と、ぶっきらぼうに答える俺だが、内心はめちゃくちゃ嬉しかった。

 自分のために骨を折ってくれる友人。

 主人公の池にとっては、当然の行為だと思う。


 だが、俺にはこれまでそんな友人が一人もいなかった。だから、たまらなく嬉しくなるのだ。

 そして、実際にクラスの連中の態度も、俺を受け入れるように軟化している。

 スゲーな、こいつ。

 やっぱり主人公に相応しいと思う。

 

「ああ、好きにするよ」


 爽やかイケメンスマイルを浮かべた池。

 そして、タイミングを見計らったようにチャイムが流れ担任の教師が教室に入ってきた。


「おう、お前ら席に着けー。出席をとるぞー」


「んじゃな」


 池はそのまま、自席へと戻っていった。



 放課後、本日も何事もなく授業が終わり、俺は席を立って帰ろうとしたのだが。


「すまん優児。この後時間があったら、少しだけ手を貸してくれないか? 印刷室から新入生向けの資料を、生徒会室に運ばないといけないんだが手が足りなくてな」


 池が俺に向かって頭を下げる。

 こいつは人望があるため、一年の時に生徒会選挙に勝ち残り、生徒会長をしている。


「ん? おう、生徒会の手伝いか。別に少しくらいなら良いぜ」


「いつも悪いな、サンキュー。今度、何か奢るわ」


「ああ、期待しとく」


 そういうわけで、池と一緒に資料を運ぶことにした。

 一度生徒会室にカバンを置いてから、ということになり、教室棟から生徒会室のある管理棟の二階に移動する。


「ちょっと待ってくれ、今から鍵を開けるから……あ、開いてる」


 カバンから鍵を取り出し、扉をあけようとした池だったが、どうやらすでに開いていたようだ。


「締め忘れか?」


「いや、多分これは……」


 そう呟いてから扉を開けると、そこには一人の女性がいた。


「お疲れ様です、真桐まきり先生」


「ええ、お疲れ様。池君。それと……、また手伝いに来てくれたのかしら、友木君?」


 俺に向かって、静かに言うのは生徒会の顧問をしている真桐千秋まきりちあき先生。

 去年からこの学校に赴任してきた若い先生で、かなり美人だ。


 全校男子の憧れではあるみたいだが、真桐先生は非常に厳しく、表立ってチヤホヤされることもなく、割と恐れられている。


「ええ、暇なもんで」


 しかし、俺はこの先生を慕っている。

 美人だからという理由ではない。


「そう、いつもありがとう。助かるわ」


 真桐先生は、優し気に目を細めて、そう言った。

 

 この人は、俺の見た目がどんなに怖くても、怯えたりはしないし、目の敵にすることもない。

 良くも悪くも見た目で人を判断しないのだ。

 ちゃんと内面を見てくれる、俺がこれまで出会えなかった先生なのだ。


「それじゃ、池君。あとは任せるわ。私は活動日誌を取りに来ただけだったから」


 そう言って、生徒会の日報を手にした真桐先生は生徒会室を出ていった。


「良かったな」


 肘を突いて、からかうように言ってくる池。


「うっせーよ」


 俺も池の肩を軽く殴り返す。


「いってーな、このやろー!」


 池は羨ましくなるくらい爽やかに笑ってから言った。


「うし、それじゃ早速資料運び手伝ってくれ、友木」


 


「あれ、春馬じゃん! 生徒会?」


 印刷室に向かう道中、明るい声が掛けられた。


「ああ、新入生用の資料を運ばなくちゃいけないからな」


「へー、お疲れ様!」


 華やかな笑顔を浮かべる美少女は、池の幼馴染の葉咲夏奈はすきかな

 池の幼馴染だけあって、というべきか。彼女の能力はかなり高い。

 アイドル級のルックスと誰もが見惚れる笑顔で数多くの男子生徒を魅了するだけでなく、運動神経も抜群。

 テニススクールに所属していて、全国でも有名なプレイヤーらしい。


「夏奈は今から帰って、またテニスか?」


「うん、そだよー。一人で生徒会のお仕事をする、人望のない春馬を手伝ってあげられなくってごめんね~」


 にやりと笑いながら、冗談っぽく池に向かって言う葉咲。

 流石は幼馴染キャラ。

 そんじょそこらの女子生徒なら、緊張をして顔を真っ赤にして噛みまくりの言葉しか発することができずに挙動不審になるところなのに、堂々とした態度だ。


「気にするなよ、優児が手伝ってくれている」


 池がそう言うと、


「……優児って、もしかして友木君?」


 恐る恐る呟いた葉咲。

 どうやら彼女は池とのおしゃべりに夢中で、俺の存在を見逃していたらしい。


 気まずさを堪えながら、池の背後から俺は葉咲の視界に入るように、姿を現せた。


「ひゃ……と、友木君! ご、ごごごめん! 春馬が邪魔で、友木君のこと気づかなくって!」


 慌てて、挙動不審になる葉咲。

 これが俺と接する、普通の女子の反応だ。


 無闇に怯えさせて申し訳ない。

 いやホント、顔が怖くてごめんな?


「……気にすんな」


「ひゃ、ひゃい!」


 顔を真っ赤にして、噛みまくりで答える葉咲。

 

「……印刷室、先に入ってるから」


「いや、俺も行くから。それじゃな、夏奈。テニス頑張れよな」


 葉咲に別れの言葉を告げてから、俺の後を追ってくる池。


「あ、うん。春馬も生徒会の仕事頑張ってね。……と、友木君も!」


 一生懸命に恐怖を堪え、葉咲が言う。


 こうして声をかけてくれるだけありがたい。

 怯えられた後ガン無視をされて避けられるなんて、日常茶飯事なのだから。


 俺は無言のまま、頷いて返答した。


 すると、真っ赤な顔のままホッと一息を吐いて、胸を撫でおろす葉咲。


 そ、そんなに俺と話すの緊張してたんですか……と。

 見た目に反してメンタルの弱い俺は、少しショックを受けてしまうのだった。

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