19、ラスボス攻略春馬②
「それって……」
池の言葉に、俺は動揺する。
「ニセモノの恋人同士だったんだろ?」
責めるわけでもなく、池は淡々とそう問いかけてくる。
まさか、冬華が池に話していたとは、思わなかった。
「そう、だ」
俺は、頷く。
それから、俺は頭を下げる。
「ずっと黙ってて……だまし続けていて。悪かった」
頭を下げている俺に、池の表情は見えない。
池は、溜め息を吐いてから、
「怒っていない……わけでもない」
と、硬い声音で言う。
俺は、頭を下げたまま、彼の言葉を聞く。
「冬華から、事情は聞いた。秘密だから、他の人に教えたくなかったのも……理解はできる。それでも、俺には言ってほしかった。万が一何かあった時には、フォローだってできただろうし」
池は深呼吸をしてから、続けて言う。
「それに、俺は……優児と冬華が付き合っているって聞いて、素直に嬉しかったから。別れたって聞いた時には、二人の心配もしたし、俺自身ショックだった。俺は、外野に過ぎなかったとしても……二人のことを大切に思っているから。やっぱり、事情は知りたかった」
それから、池は頭を下げたままの俺の肩を叩いた。
「顔を上げてくれ、優児。俺は別に、謝ってほしいわけじゃない。怒ってるというのも、何も話してくれなかった優児や冬華に対してというよりも、全く気付かなかった自分の能天気さに感じてるものだし、な。……ただ、一つ聞きたいことがあるんだ」
池は真っ直ぐな眼差しで俺を見つめてから、口を開く。
「優児にとって、冬華は……何なんだ?」
真っ直ぐに池を見つめ返しながら、俺は答える。
「俺にとって冬華は……これまでも、これからも。大切な相手だ」
「それは、後輩としてか? それとも……」
池の言葉に、俺は思案する。
それは、冬華とニセモノの恋人関係を解消してから考え続けていたことだ。
その答えを見つける前に、廊下から話し声が聞こえてくる。
朝倉をはじめとした、同室の男子たちの声だ。
「戻ってきたようだな。……この話はもう、終わりにしようか」
その言葉の後に、部屋に朝倉達が入ってくる。
「お帰り。スマブラ大会はどうだった?」
同室の男子たちに、池は微笑みを浮かべて問いかける。
「聞いてくれよ池――」
彼らは皆一様に、楽しそうに池に結果を語り始めた。
池の言葉。
俺にとって、冬華は何なのか……。
竜宮にも問われた、自分自身の気持ち。
俺はまだそれと、向き合えないままでいた――。






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