18、三日目②
電車での移動を終え、大阪城にたどり着いた。
大阪城と言えば桜が有名らしいが、今の季節、咲いているわけはなく、普通に周辺と城内を見て回る。
一通り見て回ってから、今度は難波に移動。
「記念撮影しとこ!」
道頓堀、グリコの前でみんなで例のポーズを決めて写真撮影。
「友木お前……顔怖すぎない!?」
撮った写真を見て、朝倉が驚愕を浮かべた。
「写真とか苦手だった?」
「気づかなくってごめん……」
木下と山上が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや、そうじゃない」
俺はそう言ってから説明をしようと口を開きかけ、
「照れただけだよね、優児君は?」
夏奈がフォローの言葉を口にした。
俺は「ああ」と苦笑しつつ、頷いた。
「わかるんだ、愛の力だねー」
山上の言葉に、木下も「尊いですねー」と揶揄うように言う。
いじられたのが恥ずかしかったのか、夏奈は池に話題を振った。
「てゆうか、春馬も分かってたでしょ?」
話を振られた池は、弱弱しく苦笑を浮かべてから、
「ああ、俺も分かってたよ」
と呟いた。
「友木の感情を読み取れなかった俺が、悪い気がしてきた……!」
なぜか悔しがる朝倉。
だが俺は、池のその浮かない表情が気になった。
「どうかしたか?」
「……いや」
俺の言葉に、池は首を横に振ってから、続けて言う。
「昼ごはん、たこ焼きとお好み焼き、どちらが良いか悩ましくてな」
「そんなのどっちもで決まりじゃね!?」
「私らはシェアしよっか」
「そうだねー」
池の冗談っぽく言った言葉に、朝倉や木下と山上が即座に反応をした。
その様子を見て、俺は池を追及することができなかった。
☆
お好み焼きとたこ焼きで空腹を満たした後、俺たちは海遊館へ向かった。
到着後、チケットを購入して入場。
大きな水槽の前で記念に撮影をしてから、館内を見て回る。
「美味そうだな……。寿司食いたくなってきた」
「はい。絶対言うと思ったー!」
水槽で泳ぐ魚を見ながら朝倉は言った。
そして、山上がそれはもう嬉しそうに突っ込み、煽りまくっていた。
「お約束すぎない?」
「期待を裏切らないって感じだな」
二人の様子を、呆れた表情で見守る木下と池。
楽しく水槽を見て回り、深海魚水槽が現れた。
グロテスクな見た目の魚が多いな、と思いながら見ていると、
「深海魚って、優児君みたいだよね」
唐突に、夏奈にディスられた。
「……俺は、人間だ」
俺の強面が、とうとう「グロテスク」だと呼ばれる域に到達したのかと思いつつも、気力を振り絞って何とか反論する。
「知ってるよー」
無邪気に笑いながら、夏奈は言う。
それから「あ」と呟いた彼女は、続けて言う。
「そういう意味じゃなくてね。深海魚って、結構怖い見た目をしてるけど、実は食べてみたら美味しかったりするんだって。……それって、周囲から怖がられていたけど、本当はすっごく素敵な優児君と、そっくりな気がしたの」
「……そういう意味なら、悪い気はしない」
俺は苦笑しながら、夏奈に向かって答えた。
彼女は、俺の表情を覗き込んできた。
「――それに。ちゃんと見てみたら、結構かわいい顔してると思わない?」
「それは深海魚のことだよな?」
「さて、どっちでしょう?」
楽しそうに俺の顔を覗き込みながら、夏奈は言う。
俺はため息を吐いてから、水槽の中を泳ぐ深海魚へ目を凝らす。
「……普通にグロいけどな」
俺の呟きに、夏奈は頬を膨らませるのだった。
☆
海遊館を心行くまで堪能した俺たちは、定刻通り宿にたどり着いた。
夕飯を食べ、風呂も浴びてから、俺は部屋でのんびりとしていた。
同室の連中は、椅子に座っている池以外、他の部屋に遊びに行っていた。
どうやら連中は、クラスで誰が一番スマブラが強いかを決めているらしい。
スマホの充電をしようとカバンの中の充電器を探す俺に、池が声を掛けてきた。
「優児。少し話がしたいんだが……今、良いか?」
池の言葉に、俺は頷く。
夏奈から池には声を掛けてくれていたらしいので、明日の自由行動時の話でもするのだろうか、と気楽に考えていた俺に対し、池は真剣な表情を浮かべていた。
一体、何の話だろうか?
そう思っていた俺に対し、池は口を開いた。
「……冬華から聞いた」
かつての『ニセモノ』の恋人の名前を口にした池は、驚愕する俺をよそに、言葉を続ける。
「優児と冬華が、本当はどんな関係だったのかを……」
 






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