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57、不審


「わー、遅くなってすみません、優児先輩っ! 待っちゃいましたよね??」


 正門付近に、冬華が到着した。

 俺を見て、彼女は申し訳なさそうにそう言った。


「いや、さっきまで真桐先生と話をしていたから、気にするな」


 ちなみに、その真桐先生はというと、千之丞さんと遭遇エンカウントした後、悲しそうな表情してから、うな垂れる実父に冷たい視線を向けて、校外に叩き出しに行っている。

 そのため、この場にはもういなかった。


「真桐先生と? ……何を話してたんですか?」


「劇、見てくれてたみたいで。面白かったって」


「そうですかー……」


 冬華は苦笑を浮かべて、そう答えた。

 どうしたんだろう、と思っていると、


「確かに、凄く面白かったです。……私、許さないとかなんとか、余計なお世話言ってて――。いやー痛かったですよね、すみませんでした」


 と、冬華は俺に向かって頭を下げる。


「気にするな。冬華は、俺の心配をしてくれていただけだろ」


「それは……まぁ。そうかもですね」


「じゃあ、何も謝ることはない」


 俺の言葉に、冬華は寂しそうに言う。


「先輩のクラスの皆さんは、とっても素敵な人たちですね。……これからきっと、先輩に対して怖がったりって人は、どんどんいなくなって――」


「冬華……?」


 彼女の様子が、どこか普段と違ったように見えて、俺は声をかける。

 すると、


「……私以外からも、強面イジリとかされちゃうようになるんでしょうねー」


 にやり、と笑ってそう言った。

 どうやら、揶揄う前振りだったようだ。


「そういうのは、冬華だけで間に合ってるんだけどな」


「おやおや、それは私を口説いてるということですか?」


 俺の答えに、彼女は揶揄うようにそう言ったが。

 どうしてか、やはりどこか寂しそうに笑うっていた。



 それから、冬華と文化祭の出し物を見て回る。


 まずは、文化祭と言えば定番のお化け屋敷。


「わー、先輩こわ~い」と冬華が棒読みで言いつつ、俺の腕にしがみついてくる。

 全体を見ると、お化け屋敷はチープな出来であり、冬華も全く怖がっていない。

 しかし、そのチープさが独特な雰囲気を生み出しており、実のところ、俺は割と怖かった。

 ……のだが、それ以上に。


「きゃー、せんぱ~い」



「……怨」

「……滅せよ」


 冬華が楽しそうに叫んでは、俺に密着をしてくる様子を見て小言で呟く幽霊役男子たちの、俺を妬むような視線が怖かった――。



「お腹すきませんか? なんか買って食べましょーよ」


「そうだな」


 冬華と文化祭のパンフレットを見て、食べ物系の出し物を探す。


「あ、タコ焼き食べたいです!」


「……そこは竹取先輩がやってるから」


「じゃあ、違うところにしましょうか!」


 俺の一言で前言を速やかに撤回した冬華。

 竹取先輩の人望に、俺はにっこりと笑みがこぼれそうになる。


「焼きそばはどうだ?」


「男の子なチョイスですねー、良いですよ」


 焼きそばに男女差があるのかは分からないが、冬華に異論はないようだ。


「あ、チーズハッドグもあるー、食べてみた―い」


 チーズハッドグと言えば、ちょっと前に流行した、ウインナーの代わりにチーズを入れたアメリカンドッグみたいなものだったはずだ。


「じゃあ、それも食べるか」


 俺が言うと、「食べきれなかったら、優児先輩食べてもらっても良いですか?」と冬華はあざとく言った。


「……ちゃんと食べられる量を頼みなさい」


 諭すような俺の言葉に、「じゃあ、逆に。優児先輩が買ったものを私がつまみ食いしますねー」と調子良く言った。


「……まぁ、それで良いか」


 俺は呆れつつも、冬華の横顔を見ながら、そう言った。



 腹ごなしも済まし、その後も冬華と文化祭を回った。


 祭りの雰囲気にあてられているのか、はたまたそれ以外の理由かは分からないが、普段のように怖がられることが、少なかったように思う。


 俺は、スマホをとりだして現在の時刻を確認する。文化祭も、終わりに近づいていた。


「そろそろ、ステージで有志のバンド演奏があるころだな」


「誰か知り合いが出るんですか?」


 俺の言葉に、冬華は首を傾げて問いかける。


「生徒会メンバーが演奏するんだ。……観に行かないか?」


 俺の言葉に、「うーん」と考え込む様子をみせてから、


「アニキの演奏なんてまったく興味ないですが……そうですね、行きましょうか、先輩と一緒なら、私はいつでもどこでも楽しいですよっ?」


 と、あざといセリフ付きで応えたのだった。


「それは……光栄だな」


 俺は苦笑しつつ答え、そして冬華と二人で講堂へと向かった。


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