書籍3巻発売記念番外編:例のラブコメ
今回は文化祭編はお休み、書籍版最新第3巻発売記念のSSの掲載です(*´ω`*)!
このまま読んでも楽しんでもらえると思いますが、このお話の前にどんなやり取りがあったか知りたい人は、書籍第3巻をチェックしてくれると、もっと楽しめると思います(*´ω`*)
引き続き本編を楽しみたい人は、次のお話に進んでね(∀`*ゞ)エヘヘ
「友木君。そういえば、読んでみたわよ」
夏休みのとある日。真桐先生が唐突にそう言った。
「……何のことですか?」
俺の言葉に、真桐先生はスマホの画面を向けながら、
「この漫画のことよ」
と答えた。そこに表示されていたのは、『なんでここにも先生が?』の電子書籍だった。
――背中に、冷や汗が滲んだのが分かった。
「……すみませんでした」
「なぜ唐突に謝るのかしら……?」
身内の不始末を思い出し、頭を下げる俺に、戸惑う真桐先生。
「久しぶりに漫画を読んでみたけれど、とても楽しめたわ。……ちょっと、エッチな内容だったけれど」
セクハラ案件で訴訟もあり得ると考えていた俺に、真桐先生は意外にもそう言った。
『なんでここにも先生が?』は、確かにサービスの多いラブコメだが、内容としては生徒想いだけど不器用な先生が、学生主人公と時に互いにフォローし合い、時に叱咤激励し、教師と生徒としても、男女としても関係を深めていくという内容だ。
サービスシーンばかりが話題に上がりがちだが、ラブコメとしても非常に魅力的な作品であり、真桐先生はその魅力に気づいたのだろう。
俺のことを容姿で判断せずに、内面を見てくれたのと同様。
真桐先生はちょっとHなラブコメのストーリー部分を、ちゃんと見ていてくれたのだろう。
「ありがとうございます……」
「なぜ唐突に感謝をするのかしら……?」
感極まった俺の言葉に、真桐先生はまたしても戸惑っていた。
「というわけで、今日は私のおすすめの漫画を持ってきたの」
真桐先生は持っていた紙袋を俺に渡した。
中を見ると、『GT(極道ティーチャー)』のコミックスだった。極道一家の跡取り娘が不良学校の先生となり、様々な問題を破天荒な言動で解決する、何度も映像化されている超人気作だ。
「これ、ドラマの再放送は見ていたんですけど、漫画を読んだことはなかったんです。夏休み中に、読んでみます」
「ええ。……読み終わったら、是非感想を聞かせて頂戴」
☆
後日。
「GT読みました、ありがとうございました」
真桐先生にGT全巻入り紙袋を返し、俺はそう言った。
「そう、どうだったかしら?」
真桐先生は紙袋を受け取り、ソワソワした様子で俺に問いかける。
「やっぱり、主人公が大暴れして問題を解決するところはスカッとしますね」
「ええ、そうよね。……それ以外はどうだったかしら?」
かなりぐいぐい聞いてくる真桐先生に、「それなら……」と考えてから口を開こうとして、
「い、いえ。やっぱり良いわ! また今度、ゆっくり話しましょう!」
そう言って、真桐先生はどうしてか顔を赤くして、その場から立ち去った。
彼女の背中を見ながら、さらなる感想を求められたときに、口が滑らずに済んで良かったと思った。
もしも『教師と生徒の恋愛って、ドキドキしますよね』と言っていたら――。
きっと、セクハラ発言で、嫌われてしまっていただろうしな。