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34、後方彼女面

 選挙が終わり、数日が経過していた。


 生徒会のメンバーは、池が声をかけ、既に固まっていた。

 副会長と書記は前期から引き続き竜宮と鈴木。

 そして会計には、一年生立候補者の黒田。同じく一年立候補者の白井も、庶務を担当することになった。

 新しい体制でスタートを切ったばかりの生徒会だったが、誰もが不安を抱くことはなかった。

 

 何故なら、完璧超人の池が、引き続き生徒会長を任されたからだ。

 ……とはいいつつ、池も疲れればちょっとした失敗をすることもあると、俺はそんな当たり前のことを

最近知った。

 まさか俺を生徒会に誘うとは……。


 彼が無理をしないように、俺も陰から支えよう。

 そんな風に考える俺はというと、選管副会長とかいう厄介ごとから解放されて、いつも通りの日々を過ごしていた。


 いや。

 いつも通りとは言えなかったかもしれない。

 俺が選管を終えたことの影響は、個人的にとても大きいものだった。




「先輩、寄り道しましょっか?」


 放課後、冬華と共に下校中のこと。

 隣を歩く彼女が、楽しそうにそう言ってくる。

 

「ご機嫌だな」


「そりゃそうですよ! 選管とかいうめんどーなのが終わって、放課後フリーになってるんだから、楽しまなくっちゃですよ!」


「選挙が終わってから、毎日そう言ってるな」


 俺が呆れたように言うと、


「ゆうじ先輩は、可愛い彼女と放課後デートするのが嫌なんですか?」


 冬華はいつもの調子で、あざとさ全開で上目遣いで言った。


「……それで、どこに行くんだ?」


 俺は説得を早々に諦める。


「ゲームセンター行って、今日こそリベンジですよ!」


「連敗記録を更新するだけだろうがな……」


 フッ…と俺が嗤うと、


「マジで先輩はもうちょっと手加減覚えるべきだと思うんですよ。普通に引きますからね?」


 真顔でそう告げる冬華。

 ……今日は少しだけ接待プレイで頑張ってみよう、そう思うのだった。


 そんなやり取りをしていると、背後から肩を叩かれた。

 振り返るとそこには、同じ選管だった二年の男子がいた。

 スポーツウェアを着ているし、恐らくは部活動中だろう。


「おっす、友木。今から帰り?」


 気安い調子で話しかけられる。

 後ろにいた男子生徒が二人、蒼い顔をして震えていた。


「ああ、帰りだ。部活、頑張れ」


 俺はそっけなく答えた。

 そっけなさ過ぎて、いつも通りのコミュ障っぽい返事をしてしまった。

 隣で聞いていた冬華が、ニヤけた笑みを浮かべていた。


「ああ、サンキュー。友木は、……放課後デート楽しんでこいよ。じゃな!」


 爽やかな笑みを浮かべた彼に、


「……ああ」


 と、否定するわけにもいかず、俺は苦笑を浮かべつつ返答した。

 男子生徒は後輩を連れて、外周を走るためだろう、校外へと向かう。


「ちょっと先輩、友木さんみたいな極悪非道なヤンキーといつの間に仲良くなったんすか?」


「マジ強面過ぎてちびりそうだったんすけど……」


 俺の前を過ぎ去って、早々に後輩二人が言う。

 ……聞こえてるんだよなぁ、と思っていると、


「あいつ怖いの顔だけで、成績含めて普通に良いやつだから。お前らも怖がる必要ないぞ」


 彼は笑顔を浮かべつつ、二人の後輩にそう言った。

 

「……そういや、俺のクラスの選管だった奴も、良い人って言ってたような……」


「それはそうとして、ちびりそうなんすけど……」


「それは普通に催しているだけだから、お前は便所にさっさといけよ……」


 といったコントをしながら、走る彼らの背中は見えなくなった。

  

「……先輩は、どんどん色んな人に認められますね」


 優しい声音が、耳に届いた。


「お陰様で。……誤解している人間はまだまだ多そうだけどな」


 俺はそう応えつつ、冬華に視線を向ける。

 そして、彼女の表情を見て、俺は驚いた。


 優し気に笑ってはいるのに、どことなく寂しそうな表情を受かべる冬華。

 どうして、そんな表情を浮かべるのか。俺にはその理由が想像できなかった。


 そんな俺の視線に気づいたのか、冬華はハッとした表情を浮かべてから、一つ咳ばらいをして、


「応援していたインディーズバンドがメジャーデビュー決まったら、きっとこんな気持ちになるんですね……」


 涙を拭う仕草を見せながら、冬華はお道化て言った。


「その後方彼女面はやめてくれ」


「いやいや、実際彼女ですし? 先輩を育てたのは実質私と言って過言ではないんですけど?」


 揶揄うように言う冬華が、ギュッと俺の手を握り締める。

 それから、挑戦的に俺を上目遣いで見つつ、


「つまり、先輩のことを一番近くで応援しているのは、私ってことですから」


 と、力強く言った。


 実際、そうなのだろう。

 俺はそう思いつつも、やはり気恥ずかしかった。

 いつもならここで、『ニセモノ』の彼女だけどな、と茶化すのだが……それをしない。


 なんだかんだで対人スキルが上がった今の俺なら、ここからユーモアにあふれる切り返しができるのではないか?

 いや、出来ずとも、挑戦しなければ成長はないと思い、


「これからも応援よろしく!」


 と、微妙にテンションを上げ、バンドのボーカル(あくまで俺のイメージ)っぽく答えた。

 俺の反応を見て、「えぇ……」とドンびく冬華を見て。


 ちょっと友人が増えたからって、コミュ障が調子に乗るもんじゃないな、と肝に銘じる俺だった。

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[良い点] 更新ありがとうございます❗ 第二巻発売おめでとうございます‼️ [気になる点] 優児は結局生徒会入らないの? 優児は普通に優秀だけど。 冬華を立派に育てたし。(逆じゃないよ)
[一言] 二巻も買います! 作者様・・・十二分に気を付けているとは思いますが、体調、崩さぬように筆頑張って下さいm(__)m
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