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30、選挙管理委員会

 選挙活動が開始され、立候補者の活動が日に日に活発になっていく中、選挙管理委員も忙しくなっていった。


 俺も副委員長という責任ある立場だったため、誰よりも委員としての仕事に打ち込んだ。

 初めのうちは冬華を介して、他の委員とのやり取りをしていたのだが、それでは効率が悪いということで、今では何とか直接やり取りができるようになっていた。


「友木先輩、この書類の決裁お願いします」


 一年の男子が選挙当日のスケジュール案決裁を俺に回す。

 不備がないか確認し、問題が見つからなかったため俺は自分のハンコを押す。

 その後、竹取先輩の机の上の決裁箱に置く。


「友木君、明日の校内放送のスピーチ原稿、立候補者から提出があったけど、これでGOサイン出して大丈夫?」


 二年女子の一人が俺に数枚の原稿用紙を手渡す。

 内容を確認し、黒田の過激な思想の表現を一部訂正するように該当箇所に付箋を貼り、返した。


「副委員長、池先輩の写真を使った選挙ポスターがあちこちで盗まれる被害が出ている件の対処法はどうしましょう!?」


 慌てた様子の一年女子が、俺に向かって言う。


「冬華が『春の木漏れ日会(池のファンクラブ)』に見回りの強化を要請し、対応してくれるようだ。しばらくは様子を見ておこう」


「会員・非会員問わず抜け駆けを絶対に許さない鉄の組織なので、彼ら・彼女らに任せていたら安心ですね!」


 一年女子が安堵の表情を見せ……彼ら?

 いや、言い間違いだろう。そう思い俺は仕事に意識を戻す。


「優児、決裁も確認したし、あたし超暇なんだが。なんかすることあるか?」


 本来各委員に指示を出すはずの竹取委員長が、隣の委員長席から俺に向かって欠伸をしながら問いかける。 


「自販機でコーヒー買ってきてもらって良いっすか?」


 俺はポケットから小銭を取り出して、竹取先輩にそう言った。


「おう」


 竹取先輩はそう言って立ち上がると、


「竹取先輩、僕はお茶、お願いします!」


「こっちは炭酸で!」


「私はミルクティーを。……急いでください!」


 そして続々と竹取先輩に小銭を渡す委員たち。

 彼らは自分の仕事が忙しいのだろう、竹取先輩に一言告げてから、すぐに自席へと戻る。

 竹取先輩は各人のオーダーをメモしてから、部屋を出て行く。


 そして、10数分後。


「待たせたな、お前ら!」


 そう言って、オーダー通り購入した飲み物を各人に配る。

 それから最後に、俺の机の上にコーヒーを置き、彼女自身も委員長席へと座る。


 エナジードリンクの蓋を開け、それを一口飲んでふぅと一息ついてから、



「……あたしの立場低すぎじゃね?」



 と、呆然と呟いた。


「なぁ、優児。そう思わないか? 何故委員長であるあたしが委員たちにパシリ扱いを受けているんだ?」


「律義に全員の飲み物買ってから言うところが、竹取先輩の良いところっすよね」


 俺の言葉を聞いていたのか、


「そうそう。なんだかんだで買ってきてくれますよね」


「しかも、結構な人数から注文を受けて、それをしっかり把握してるのって、地味にすごいっすよね」


「なかなかできることじゃないよ」


 一年の伊藤と佐藤と後藤が、竹取先輩に向かってそう言った。

 竹取先輩は「はぁ、調子良いなー、お前ら」と言いつつも、どこか照れくさそうにしていた。


 ……この人チョロいな、とみんな思ったことだろう。


「ていうか、優児。あたしのことは置いといて、みんなから頼られすぎじゃないか? あたしのところに相談に来る委員、一人としていないんだが」


 不満そうにそう言った竹取先輩に答えるのは、


「それも仕方ないですよ。優児先輩に相談したら、基本解決してくれますし。基本真面目で面倒見が良いから、一回打ち解けたら皆頼りにしちゃうんですよねー」


 竹取先輩の机上に大量の決裁文書を持ってきた、冬華だった。


「冬華も大概優秀で、問題もすぐに解決するから。この部屋にいる間、ジュースを買って、ハンコを押すだけのマシーンと化すのが、最近の悩みだ。……部下が優秀すぎるのも考え物だな」


 しみじみと竹取先輩はそう呟いた。

 

「教師とのやり取りはしっかりやってくれてるわけですし、この部屋にいる時は飲み物係をしてくれるだけで十分ですよ!」


 冬華の言葉に、


「それは励ましているつもりなのか……!?」


 と竹取先輩は驚愕を浮かべるのだった。

 


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