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24、挨拶

 俺が副委員長を引き受けることを宣言したために起こった周囲のどよめき。

 竹取先輩は「ぱんっ!」と手を叩き、自らに視線を集中させた。

 それから、気持ちいいくらいの笑顔を浮かべてから、快活に言った。


「それじゃ、副委員長と書記も決まったし。ざっくりとした今後のスケジュールの共有をするから、メモを取っとけよー」


 それから、ホワイトボードに要点を書きながら、しばらくの間のスケジュールを簡単に説明し始めた。

 俺の副委員長に納得していない者も多くいただろうが、一度それを置いて、メモをするのに集中しているようだった。

 

「さて、と。今話したうち、立候補の受付日と選挙の投票日については、各自明日のHRで告示しておいてくれよ。立候補者がいたら、候補者届の交付と、記載方法の指示をするように、頼んだぞ!」


 そう言ってから、続けて、


「ほんじゃ、解散! また呼び出すと思うが、そん時はよろしくなー」


 竹取先輩は本日の解散を指示した。

 すると、他の委員の連中は筆記具類を急いでカバンに詰め、それから席を立ってパソコン室から出て行った。


「私たちも、帰りましょ?」


 冬華の言葉に、「おう」と応えて、俺も席を立つのだが。


「優児と冬華は少し残って、あたしの手伝いをしてくれないか?」

 

 出口付近で待ち構えていた竹取先輩に阻まれてしまった。

 

「そんなに遅くならないですよね?」


 冬華が問いかけると、


「ああ。掲示板に告示書を貼りに行くから、職員室に鍵を借りに行くだけだ」


 それだけなら別に手伝いは不要なのでは、と思っていると。

 俺の表情を見て察したのだろう。


「ちなみに、選挙管理委員の役員が決まったから、職員室でその挨拶をするのがメインだ」


 悪戯っぽく、彼女は言った。


「そういうことなら、問題ないっす」


 俺の言葉に、冬華も頷いた。


「よし。それじゃ、今から行くか」


 竹取先輩はそう言ってから、パソコン室を出る。

 俺と冬華も、その後をついて歩いた。


 そして、しばらく歩き、職員室前に到着。

 竹取先輩はノックをしてから、扉を開いた。


「失礼しまーす」


 と、やる気なく言ってから、彼女は部屋に足を踏み入れる。

 俺と冬華も、同じように「失礼します」と挨拶を口にし、彼女の後を追った。


 教職員は、俺が職員室に入ったことに驚いたのか、ぎょっとした表情でこちらに視線を向けてきた。

 しかし、すぐに何か納得したような表情を浮かべて、自分の仕事に戻っていた。

 ……きっと、真桐先生がすでに俺が選管に所属していることを、他の先生に告げていたのだろう。だから、不審がられることもほとんどなく、すんなりとこうして職員室に入れたのだろう。


 それから迷うことなく、とある先生の前で立ち止まった竹取先輩が言う。


「こんちわー、真桐先生。掲示板の鍵借りに来たのと、選管役員が決まったので、挨拶に来ましたー」


「お疲れ様、竹取さん。それに……友木君と池さんも、お疲れ様」


 竹取先輩に話しかけられた真桐先生が、キリッとした表情でそう言った。

 

「あたしが委員長で、優児が副委員長。んで、冬華が書記。この三人がメインになって、選管動きますんで」


「あなたたちが役員なら、私も安心だわ。大変でしょうけど、これからよろしくお願いね。……それと、竹取さんは先生に対して少し砕けすぎよ。職員室なんだから気をつけなさい」


 柔和な笑みを浮かべて俺と冬華に挨拶をしてから、竹取先輩の適当な挨拶に、苦言を呈した真桐先生。


「はーい、気をつけまーす」


 反省の色が全く見えない竹取先輩の態度に溜め息を吐いた真桐先生に、


「こちらこそ、よろしくお願いしまーす」


「うす」


 俺と冬華は一言応じた。


「二人とも、選挙管理委員の役員は、不安かしら?」


「慣れないことなんで、不安はありますけど……ま、大丈夫だと思います」


 笑顔を浮かべて応えた冬華。

 彼女のことだから、本当なのだろう。

 実際、彼女はそう苦戦しないだろうと、俺も思う。


「頼もしいわ。……友木君は、どうかしら?」


「俺は……。やっぱり、不安すね。主に人間関係の面で」


 あまり受け入れられている雰囲気ではないから、かなりやりにくい。

 選挙管理委員という組織では、コミュニケーションをとる場面も多いだろうし、冬華がフォローをすると言ってくれてはいるが、正直不安な気持ちは強い。

 そう考えていると、竹取先輩が神妙な顔で頷いてから、口を開いた。




 

「優児は不安よな。竹取 動きます。」





「竹取先輩はちょっと黙っててもらっていいすか?」


 不安が増すだけなんで。


「……た、確かに竹取さんはいい加減で空気を読まないところがあるけど」


 竹取先輩の発言を聞いた真桐先生が、ややたじろぎつつも、口を開く。


「頼りになる3年生よ。困ったことがあったら、積極的に相談をすると良いわ。……私も、もちろんあなたたちの力になるのだし。不安ばかり感じなくても、きっと大丈夫よ」


 優しい声音で、彼女はそう言った。

 竹取先輩のフォローと、俺への配慮を同時にする。

 やはり、素面の時の真桐先生は素晴らしい人格者だ。酔っている時はポンコツだし、何ならたまに酔っていない時もポンコツなのがたまに瑕だが。 


「うす。頼りにしてます、真桐先生。それに、冬華と……一応、竹取先輩も」


 俺の言葉に、真桐先生はにこりと笑い、冬華は気恥ずかしそうに頬を染めつつ頷いた。


「もしかして優児、あたしのこと先輩扱いしてないのか……?」


 深刻そうな表情で呟く竹取先輩に、俺は心中で頷くのだった。

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