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18、友人キャラと選挙管理委員長

 紅葉ちゃんたちの大会も終わった週明け。

 テストの返却がされはじめ、今のところ赤点を回避している朝倉にほっとしていた。


 そして、あっという間にHRの時間となった。

 

「生徒会選挙が近づいている。明後日までに選挙管理委員を各クラスから一人選出する必要があるから、やる気のあるやつは先生のところに期日までに来てくれよー。ちなみに、誰も来なければくじ引きで決めるからな」


 と、担任教師がそのように告知した。

 あまり積極的に募集をしないのは、内心に加点される生徒会選挙と比べ、評価されづらいため、誰もやりたがらないからだろう。


 その言葉の後に、HRは終わり、それぞれ部活やバイト、もしくはそのまま帰宅という風に解散となった。


「てか、誰もやんないよね、選管とかさー」

「うん、メリットないのにめんどいだけだし」

「だよなー。くじで当たらなければ良いんだけどなー」


 木下、山上、朝倉が気怠そうに会話している声が耳に届いた。

 周囲の声を聞いてみれば、誰もが近しい人間とそのように話していた。

 この様子だと、選管に名乗り出る人間は、このクラスにはいなさそうだな。


「お疲れ、優児」


 そんな風に考えていると、池から声をかけられた。


「おう、お疲れ。今から生徒会か?」


 俺が声をかけると、池は苦笑を浮かべて首を横に振った。


「いいや、生徒会の仕事は、この間の土日で引継事項までまとめて、終わってる」


「ああ、そうか」


 もう次期生徒会を決める選挙が始まろうとしているのだった。


「池は、また選挙に立候補するのか?」


 俺の言葉に、池は「どう思う?」と逆に問いかけてきた。


「分からん。もう一年挑戦しそうだとも思うし、あっさり次に引き継ぎそうな気もするし」


 俺が言うと、池は様になる笑みを浮かべつつ、答えた。


「自分でどうしたいのかまだ決めかねててな」


 それから、「ただ」と言ってから、


「優児が立候補するのなら、応援演説は俺に任せて欲しいとは思っているけどな。それで、当選した時は俺を副会長にしてくれ」


 と、バカみたいな冗談を言った。


「そんなことするわけないだろ?」


 俺が呆れつつ答えると、


「ま、その気になったら言ってくれよ。楽しいと、俺は思うから」


 池は優しく笑いながら言った。


「それじゃ俺は、久しぶりにクラスの連中と寄り道をして帰る。優児もどうだ……と言いたいところだが、冬華と一緒に帰るんだろう?」


 生徒会で放課後の予定が詰まっていたため、これまでそう簡単に放課後に遊ぶということが出来ていなかった池は、この機に羽を伸ばすつもりらしい。


「ああ、悪いな」


「いや、構わないさ。冬華をよろしくな」


 それから「じゃあな」と続け、池はクラスメイト達と合流し、教室を出て行った。

 俺もそろそろ帰りたいのだが……。

 いつも冬華がこの教室にまで迎えに来てくれるのだが、今日はまだだった。

 少し遅いな、と思いどうしたのだろうかとメッセージを送ってみる。

 すぐに既読が付くかと思いきや、そんなことはなかった。


 それから、もしかしたら選管の押し付け合いがあって、HRが長引いているのかもしれないと思った。

 ……多分、そうなんだろう。

 そう思い、しばらく教室で待っていようかと席に座り、スマホで漫画を読みつつ時間を潰そうとしたところで。


「お、いたいた、友木!」


 出入り口付近から、声が掛けられた。

 そちらを見ると、ひょっこりと竹取先輩が顔を出していた。


「どうしたんすか?」


 呼ばれるがまま彼女に近寄ると、


「今からちょっと話があるんだ。ついてきてくれるか?」


 と、どこかソワソワした様子で、彼女は言った。

 スマホを見て、冬華からの既読が付かないことを確認する。

 まだしばらくは時間がかかりそうだな。


「良いすよ」


 俺は竹取先輩にそう応えてから、冬華に『教室から少し離れるから、気づいたらまた連絡をくれ』とメッセージを送る。


「おう、サンキュー。それじゃ、あたしについてきてくれ」


 彼女はそう言って廊下を歩き始めた。

 俺は荷物を持って、その後ろを歩く。


 しばらく歩くと、生徒会室へたどり着いた。


「おう、入ってくれ」


 と彼女に言われるまま、俺は部屋に足を踏み入れた。

 すると、背後でガチャリと鍵を閉める音が聞こえた。


「……なんで鍵を閉めるんすか?」


 俺の問いに、竹取先輩は熱に浮かされたように頬を朱に染め、答える。


「これからの話は……誰にも聞かれたくないからな」


「それって、どういう意味すか?」


 意味深に言う彼女に尋ねると、俺の言葉に応えないまま彼女は言った。





「春馬と田中と甲斐と朝倉の四人を相手に、ホ〇ハーレムを形成してくれないか?」




「は?」



 唐突に告げられたその一言にどういった意味が込められているのかがわからなかった俺は、ただ一言そう返したのだが。

 ……彼女は、次々と訳の分からないことを言ってきた。

 その度、お断りの言葉を告げるのだが――









「どうして! 春馬と田中と甲斐と朝倉からの好意を一身に受け、ホ○ハーレムを作らないんだ!? あいつらの好意にはとっくに気づいているくせに……どうしてみんなと付き合わないんだ!? 冬華のことがあるのもわかるが、あたしは……あたしは!」


 ガチなトーンで叫ぶ竹取先輩の醜態にドン引きする俺をよそに、彼女は大きく息を吸ってから、宣言した。


「優児っっっっっつ!!! あたしは、あんたの総受けが見たいんだぁぁぁあーーーーーーー!!!!!」


 声を枯らして宣言した彼女は、鋭い視線を俺に向けていた。

 俺は、彼女の視線を真っ向から受け止めつつ、返答する。


「あ、そういうの無理なんで」





「……本当に、無理なのか?」


 竹取先輩は、上目遣いに俺に問う。

 なんともしつこい人だった。

 そもそも、意味が分からない。

 

 なぜ彼女は男の俺と、男の池たちをくっつけようとするのか。

 別に同性愛に偏見を持ってはいないが、自分自身がそう言った趣味嗜好を持ち合わせているわけではないのだ。

 そう言ったことを押し付けられるのは、正直迷惑だった。


「無理っす」


 俺の言葉に、がっくりと肩を落とす竹取先輩。

 彼女は、それから、弱々しく呟いた。


「それなら。……せめて、選挙管理委員を一緒にしてくれないか?」


 滅茶苦茶な要求から一転。

 急に現実的な頼みをしてきた竹取先輩。


「はぁ、そのくらいなら別に良いっすけど」


「お、マジか! それなら、この用紙に所属クラスと名前を書いてもらって、拇印を押してもらっても良いか?」


「まぁ、そのくらいなら」


 それから、用意された「選挙管理委員申し込み」の用紙に所属クラスと名前を書き、拇印を押した。


「サンキュー」


 と、俺からその用紙を受け取った竹取さんは、うな垂れていた先ほどの様子とうってかわり、とても元気そうだった。


 ま、選管に入るくらいだったら別に……ん?


 ……。

 …………。


「え、俺選管に入るんすか?」


 正気に戻った俺は、竹取先輩にそう問いかけた。

 彼女は満足げに頷く。


「ああ。選挙管理委員長として、優秀な人材が欲しかったわけだ。それじゃあ後輩君、これからよろしくな?」


 そして、邪悪な笑みを浮かべつつ彼女は答えた。


「……委員長なんすね、竹取先輩。ていうか、こんなん無効っすよ」


「何を言っている? あたしは、あんたに選管に入れと勧め、あんたは自分の意志でこれを選挙管理委員長であるあたしに提出した。この一連の流れのどこをとったら、無効という話になるのか、教えてくれよ」


 ドヤ顔で後輩である俺を詰める竹取先輩を見て、ろくな大人にならないだろうな……と、確信する俺。


「最初から普通に頼んでくれたら、もうちょっとマシだったんすけどね」


 俺がため息交じりにそう吐き捨てると、


「ま、この作戦の肝は、あんたがホ〇ハーレム√を選んでも、あたしとしては何ら問題なかった、というところだな」


 薄い胸を張る竹取先輩を見つつ。

 あ、この人既にろくな人間じゃないのかも……と、察してしまう俺だった。

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