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16、応援


 そして、無事にテスト期間を終了した。


「おっしゃー、ようやく終わった!」


 万全の状態で朝倉のサポートを行い、やれるだけのことはやった。

 朝倉もグロッキン―な様子だったが、弱音を吐くことは一度もなかった。

 それだけの想いがあったのだろう。


 だからこそ、朝倉はいま解放感に満ちた表情を浮かべていた。


「お疲れ。手ごたえはどうだ?」


 俺はそう声をかけていた。

 色濃い隈ができた目元にしわを寄せて笑顔を浮かべつつ、朝倉は答える。


「ボチボチってところだ。全く歯が立たないテストはなかった。……ありがとう、友木や池のおかげだ」


 朝倉はそう言って俺に握手を求めてきた。

 俺はその手を握りつつ、


「こういうのはもう勘弁だからな」


 と言う。


「ああ、これからは気を付ける」


 朝倉は申し訳なさそうに苦笑しつつ、そう応えた。

 それから、俺に向かって言う。


「テスト結果も気になるけど。まずは、明日行われる、茜たちの試合だ。俺は、コーチとして大会に参加するんだけどさ、良かったら友木も応援に来てくれないか?」


「ああ、もちろんだ。紅葉ちゃんの悩みも聞いた手前、気になるからな」


「ありがとう、みんな喜ぶ」


 俺の言葉に、朝倉は微笑んだ。

 彼女らが試合で結果を残せるか、間近で応援をしたいと思う。



 そして、大会当日。


「おー、なんかスポーツの大会って雰囲気がしますね」


「まさしくスポーツの大会だからな」


「えー、ちょっと先輩、その塩対応は私的にNGなんですけどー?」


 冬華と一緒に、会場へとやってきた。

 朝倉はコーチとして、既に来ているようだ。

 夏奈と甲斐については、それぞれ部活とテニススクールで来られないようだった。

 池も、生徒会選挙が近いということで、忙しいらしい。

 みんな残念がっていたが、仕方がないだろう。


「紅葉ちゃんたち、コートで準備運動してますね」


 会場となる体育館に入り、観覧席である二階からコートを見ると、隅の方で試合を観ながら準備運動をしている紅葉ちゃんたちがいた。

 そこには、もちろん朝倉もいる。


「まだ試合前みたいだし、ちょっと声を掛けに行ってみますか?」


「そうだな」


 俺たちは下の会場に降り、朝倉たちが待機している場所へと向かう。

 そして、すぐに合流できた。

 普段は和やかに笑い合う彼女たちだが、初めての試合に緊張しているのだろうか、表情が強張っていた。


「やっほー、みんな。応援に来たよー」


 そんな彼女たちに冬華が声をかけると、


「あ、冬華ちゃん!」

「わー、嬉しいです!」

「めっちゃ活躍するから、見ててね!」


 ホッとしたような表情を浮かべてから、口々に応答する。

 それを横目に見つつ、俺は朝倉に声をかける。


「よう、朝倉」


「……友木か。応援に来てくれて、ありがとうな」


 俺の言葉に、妙な間が開く朝倉。

 どうしたのだろうかと思いつつ、話をする。


「みんなの調子はどうだ? 少し、緊張しているみたいだが」


「き、緊張なんかしてないって! 自分でする普段の試合の方が、まだまだ緊張するから!」


 間髪入れずに答えた朝倉に、俺は疑惑の視線を向ける。


「……別に朝倉のことは言っていないが」


「しまった、誘導尋問か!?」


 頭を抱える朝倉。

 試合に出る小学生よりも、よっぽど緊張をしている様子だった。


「あんまり切羽詰まった様子をみせたら、みんな不安になるだろ。リラックスしとけ」


 俺は、朝倉の肩にポンと手を置き、そう言った。

 朝倉は苦笑しつつ、


「自分でやるよりも、よっぽど緊張するわ。……そうだな、あんま不甲斐ないとこみせてたらダメだよな」


 そう言って、頭を振ってから深呼吸をした。

 普段通り、とまではいかなくとも、先ほどまでの緊張はもうなさそうだった。


 それから、一言断りを入れてから、一人で試合を眺める紅葉ちゃんのところへ俺は向かった。


「よう、調子はどうだ?」


 俺に気づいた紅葉ちゃんは、チラリとこちらを一瞥してから、


「私はいつも通りですよ。……みんなは、ちょっと浮足立ってるみたいだけど」


 冬華と話をしているみんなへと視線を向けると、確かに普段よりもなお口数多く話をしているように見えた。

 緊張を紛らわすために、そうしているのだろう。


「今の皆を、チームの司令塔として支えられそうか?」


「……頑張ります」


 俯きつつ言った紅葉ちゃん。

 いつも通り、とは言っていたものの、彼女もどうやら


「頑張るのは大切だけど、気を使いすぎることもないと思うぞ」


「ありのままの自分で、チームメイトとぶつかるのも……良いかもな」


「覚えておきます」


 そう会話をしていると、コートの方でひときわ大きく笛が鳴った。 

 どうやら、試合が終了したらしい。


「よしみんな、準備をしておくぞ」


 朝倉の言葉に反応して、紅葉ちゃんが立つ。

 その背に、俺は声をかける。


「応援してる」


「うん、頑張ってきます」


 どこか嬉しそうに、彼女は俺にそう言って、コートへと向かっていった。

 彼女の背中を見送ってから、俺は冬華に声をかける。


「それじゃ、冬華。俺たちは二階で応援をしておくか」


「そうですね」


 二人でコートから出ようとした時、


「あ、二人とも、ちょっと待ってくれ!」


 小学生たちに指示を出し終えた朝倉から声をかけられた。 


「どうした?」


「ほんの今さっき、大会運営の人に確認したんだけど、二人だけだしベンチで見学してても良いってよ。給水とかで手伝ってもらいたいし、良かったらコートの近くで見ててくれないか?」


 朝倉にそう説明をされた。

 思いっきり部外者だが、公式戦というわけでもないし、大会の規模が大きいわけでもないから、そこらへん緩いのかもしれない。

 

「それなら、折角だし近くで応援しましょっか」


 冬華の言葉に、俺も頷く。


「ありがとな、二人とも!」


 朝倉にそう言われてから、ベンチへと腰を掛ける。

 

 それからコートを使ったアップが終わった後、とうとう試合が開始される。

 初試合で苦い思いをしないよう、勝てますように、と俺は心中で祈るのだった。



  しかし、現実はそう甘くはなかった。

 2セット先取の試合で、紅葉ちゃんたちは10点差をつけられて、相手チームに1セット目を先取されたのだった――。


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