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7、最大の謎


「ちょっと待て冬華。まずは朝倉の言い分を聞こう」


 俺はスマホを操作する冬華を制しつつ言う。


「……そうですね、何か勘違いかもしれませんし、一応理由を聞いておきましょうか」


 それから冬華は満面に笑みを浮かべながら、


「それで、ロリコン先輩。一体これはどういうことなんですか?」


「冬華ちゃん、絶対勘違いって思ってないでしょ!?」


 朝倉は大げさに嘆きつつ言った。

「そんなことないですよ~」と笑う冬華だが、絶対そんなことあると俺は睨んでいる。


「というか、二人とも、この子達に見覚えがあるんじゃ無いか?」


 それから朝倉は逆に問いかけてくる。

 

「その子達、朝倉先輩が夏休みにナンパした子たちですよね?」


 俺も彼女の言葉に頷いた。

 すると、朝倉は焦った様子で言う。


「――いや、あれは別にナンパじゃないからっ!」


「「絶対嘘っ!!」」


 そして、朝倉の言葉を否定する言葉が耳に届く。

 その言葉を告げたのは、朝倉の両腕に絡みついている二人の女の子だ。


「ナンパだよね、あれは!」


「うん、絶対そう! 善人くん、嘘はだめ!」


 恨めしそうに睨まれる朝倉は、「あれは、誤解でっ……。勘弁してくれよー」と肩を落としている。

 そんな朝倉の様子を見た冬華が再びスマホを操作しようとしたのに気が付いた朝倉は、


「悪い、二人とも。この後、みんなの練習を見ないといけないから、事情の説明は後にさせてくれ」


「「練習?」」


 俺と冬華は、朝倉の言葉を聞いて、同時に呟いた――。



 体育館のフロアとシューズの擦れる音が、不規則に耳に届く。

 ボールが床や壁にぶつかる振動、そして6人の女児が声を上げながら「練習」に励んでいた。

 ……ちなみに、全員がブルマを履いているわけではなく、先ほどの女の子二人を含めた三人だけがブルマ姿だ。

 残りの三人は、ハーフパンツを履いている。

 そのことにホッとしそうになったが、過半数がブルマを履いているというのは冷静に考えたらアウトではないだろうか……?


「朝倉先輩、バレーのコーチをしてたんですね」


「あの子たちに頼まれて、時間がある時は見に来てるってだけだから、正式なコーチってわけではないんだけどね」


 冬華の言葉に、朝倉が答える。

 

「そもそも、なんで朝倉が練習を見ることになったんだ?」


 小学生たちの練習風景をなんとなく眺めながら、俺は問いかけた。


「……ビーチバレーを一緒にしたことがあってな。その時にあの子たちがバレーに興味を持ったみたいで、経験者の友達二人を誘って、6人で室内バレーの活動をすることにしたみたいなんだけど、指導者がいないから、きっかけを作った俺に声が掛けられた、って感じだ」


「そういうことだったのか。でも、自分の部活もあるのにコーチもするのは大変だろ?」


「基本的に時間のある時に見ているだけだから、意外と負担は少ないんだよな。むしろ、初心者に基礎を教えるのは、自分にとっても基礎を見返すきっかけになって、いい経験になってんだよ」


 それから朝倉は、良い笑顔を浮かべつつ、続けて口を開く。


「それに何より。これで結構楽しいからな」


 朝倉が穏やかに笑いながら言う。

 ……勝手に彼の心配をしていたわけだが、杞憂だったのかもな。

 そう思っていると、


「それって、小学生にチヤホヤされるのは楽しいってことですか?」


 冬華が引き気味に問いかけていた。


「断じて違う! 冬華ちゃん俺にちょっと厳しくない!?」


 嘆く朝倉に、「えへへ」と笑ってごまかして見せる冬華。

 誤魔化し方が適当だな……と、俺はのんきにそう思っていた。


「にしても、今日はみんな集中力に掛けるな……」


 朝倉は練習を続ける少女たちに向かって告げる。


「みんな、いったん集合して!」


 その言葉を聞いて、「はいっ!」と元気よく、礼儀正しく返事をして速やかに集合をする女の子たち。

 朝倉の前で一列に並んだ彼女たちを眺めてから、


「今日はいつもより集中力がかけているようだけど、みんな学校で何かあったのか?」


 と、かなりストレートに問いかけた。

 その問いかけに、女の子たちは互いに顔を合わせる。

 それから、一人のブルマを履いた女の子がびしっと朝倉を指さしつつ、言った。


「善人くんがギャルを連れ込んでるから気になっちゃうんだよ! 菫ちゃんもそう思うよね!?」


あかねの言う通りです」


 メガネをかけたハーフパンツの菫ちゃんが同意の言葉を告げると、他の女の子もうんうんと頷いた。

 ギャルと言われた冬華は、俺の腕を引きつつみんなの前に立ち、堂々と宣言する。


「みなさん、初めまして、冬華って言います! 冬華ちゃんって呼んでくれて良いからね!」


 それから続けて、


「みんな、朝倉先輩に可愛い彼女が出来たのかって、心配しなくても大丈夫だよ。私はこのカレピッピの付き添いで来ただけだから! 私は朝倉先輩にとって、ただの知り合いです☆」


 冬華に紹介された俺は無言で頬を掻く。

 すると、女の子たちは一人を残して朝倉の後ろにサッと隠れた。

 ……あの子以外、朝倉は既に攻略済みということなんだろうな。


「善人くんが連れてきた人だから悪い人ではないのはわかるけど……練習しているところを睨まれると、怖いですよっ!」


 一番背の高い女の子が俺を指さしつつ言った。

 ……俺の強面が彼女らのパフォーマンスを著しく落としていた……のか?

 慣れたものとはいえ、やっぱり普通に傷つく俺。


「いや、モモ。これは睨んでるわけではないんだ」


「そうそう、そんなに怯えなくても大丈夫だからね! このお兄さん、顔は怖いし怒らせるとやっぱりこわいし、自分の中で勘違いしたことが事実だと思っている節のある、意思疎通の難しい超絶コミュ障だけど、いい人だから!」


 冬華がここぞとばかりにフォローをして……いや、これフォローか?

 ……フォローじゃないな。


「それって良い人なの……?」


 女の子たちが揃って困惑の表情を浮かべていた。

 多分俺も同じような表情をしていた。



「良い人だよ、友木は」



 冬華の言葉に、戸惑っていた女の子たちに向かって、朝倉は力強く断言をした。

 ロリコン疑惑があったとしても……やっぱり朝倉は、良い奴だ。

 

「この二人に練習のアシスタントをしてもらうために、連れてきたんだ。はじめは慣れないかもしれないけどさ、気にせず、いつも通り練習に臨もう!」


「善人くんがそう言うんだったら、心配はいらないよね。そうだよね、みんな?」


 朝倉の言葉に、茜ちゃんが答える。


「うん!」

「冬華ちゃんが彼女じゃなかったら、私は大丈夫だし!」

「友木くんも良い人って信じるよ!」


 次々に明るい声で返事が聞こえた。

 おお、なんていうチームワークの良さ。

 俺は感激するのだが、その中にまだ浮かない表情をしている子がいることに気が付いた。


 朝倉の後ろに隠れなかった女の子は、どこか冷めた表情で手にしたバレーボールを弄んでいた。


 仲良しバレーボールクラブだとばかり思っていたが、そう簡単な話ではないのかもしれない。

 見れば、朝倉も彼女のことを心配そうに見ていた。


「それじゃあ、練習再開しなくっちゃ!」


 しかし、一人の女の子の声に反応し、「よし、それじゃ練習の続きだ!」と応えてから、指示を出していくのだった。



「それじゃ、今日の練習は終わり」


「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」


 それから、二時間ほどしてから練習が終わった。

 朝倉は女の子たちにクールダウンの指示をしてから、今度は俺たちに向かって言った。


「二人とも、今日は手伝ってくれてありがとう」


 俺と冬華は、ボール拾いなどの雑用を手伝わされていた。

 勝手に後をついてきていた負い目もあったので、特に文句はなかった。


「気にするな」


 俺が言葉を返すと、

 

「これで、二人が心配するようなことは無いって、分かってくれただろ?」


 朝倉はどこか照れくさそうにそう言った。

 

 俺と冬華は、互いに顔を合わせ、そしてゆっくりと頷きあう。

 その俺たちの様子を見て朝倉は微笑んだ。


 朝倉はただ、厚意でバレーの練習を手伝っているだけなのだ。

 なんも、やましいところはない。 


 ……ただ一つ、



「「やっぱ、ブルマーの理由は分からなかったんだが(ですけど)……?」」



 俺と冬華が同時に問いかけた、この最大の謎を除いて――。


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