3、友人キャラと(ポンコツ)女教師
とある日、俺は普段よりも早く学校に来ていた。
教室に向かって廊下を歩いていたところ、
「あっ……」
偶然、真桐先生と会った。
彼女は気まずそうに、俺の顔を見て呟いていた。
……その気まずそうな理由はだいたい分かっていた。
「おはようございます」
俺は彼女に向かって挨拶をする。
「おはようございます、友木君」
彼女はあいさつを返してから、しばし逡巡し、それからもう一度口を開いた。
「……友木君、少し場所を移しても良いかしら?」
☆
俺は生徒指導室に連れられた。
真桐先生は一度職員室に寄ってから生徒指導室に来るようだったが……指導を受けるようなことは全く心当たりがなかった。
コンコン
部屋の扉がノックされた。
俺が「はい」と答えると、扉が開かれ、クリップボードを手にした真桐先生が入室した。
それから彼女は目の前の椅子に腰かける
何故か一人悶えていた彼女の言葉を待っていたが、彼女は覚悟を決めたように、こちらを見据えてきた。
「体育祭でのことなんだけど……改めて、ごめんなさい」
真桐先生はそう言って、頭を下げた。
「体育祭でのこと」と言われると、思い当たるのはたった一つだけ。
さっきから気まずそうにしていたのは、親ばかのことなのだろう。
察した俺は、
「気にしないでください、俺にとっては楽しい思い出なんで」
と、軽い調子で答える。
すると、その答えを聞いた真桐先生は顔を真っ赤にして、キッとこちらを睨みつけて口を開こうとし、何も言わないまま視線を泳がせ口を引き結ぶ。
それから、不満そうに頬を膨らませつつ、
「なんだか、最近の友木君は妙に意地悪だわ」
と、唇を尖らせ、恨みがましそうな視線を向けつつ、彼女は呟いた。
その様子は、なんだか歳不相応に幼く見えて、可愛らしかった。
そう思いつつ彼女の様子を見ていたが、俺が何も答えないのを見て、コホンとひとつ咳ばらいをした。
「実は今日は、渡したいものがあったの」
「渡したいもの?」
「ええ。……これよ」
そう言って真桐先生は、クリップボードから封筒を取り出し、それを机の上に置いた。
「封筒? ……中を見ても良いっすか?」
「ええ、もちろん」
俺は封筒を手に取ってから、中に入っていたものを取り出して見る。
「写真?」
見れば、中には体育祭の写真が入っていた。
100メートル走、リレー、綱引き等々。
さまざまな種目に参加する俺の写真だった。
「……これ、どうしたんですか?」
真桐先生がこんな写真を撮る時間も動機もない。
一体誰がこの写真を?
「私たちから離れたあと、本当におとなしく父が帰ったか不安で。……問い詰めたら、やっぱり帰っていなかったらしいの」
それから彼女は視線を逸らしながら、気まずそうに言う。
「その後、友木くんの写真を撮りまくっていたらしいの」
「なるほど、俺の父っていうキャラ作りを徹底したというわけっすね」
「義、義父……!?」
俺のつぶやきに、真桐先生は顔を赤らめて、動揺していた。
「いや、真桐先生の働きっぷりを見たかったけれど、体育祭を見に来る大義名分がなかった千之丞さんは、唯一の生徒の知り合いである俺の父親だと嘘を吐いて、学校に侵入したわけっすよね?」
俺の言葉に、真桐先生が絶句し、それから「なるほど」と難しい表情をして呟いた。
「まぁ……そんな感じよ」
真桐先生は割と適当な感じでそう応えた。
なんだその反応は……?
やはり、身内の頭のおかしな行動を改めて突き付けられ、恥ずかしがっている、のだろうか……。
「まぁ、父の話はもうどうでも良くて。この写真、折角撮ったのだから、友木君にも渡そうと思って、持ってきたのよ」
それから、俺が競技の後にクラスメイト達と話している写真を手に取り、それを眺めながら、真桐先生は言う。
「良く撮れていると思うわ。写真に写っている友木君は……とても、楽しそう」
その言葉を聞きつつ、俺は写真を捲っていく。
しかし、言うほどいい写真だろうか?
写っている俺は、なぜこんなにも怒っているのかと突っ込みたくなるくらいに怖い顔をしてい……顔が怖いのは元々だった。
そんな気づきたくない事実を再確認し、少々凹みながらも写真を眺めつつ、最後の一枚を確認したところ。
俺の口元は、僅かに綻んだ。
「確かに、これは良い写真っすね」
「そうでしょう?」
俺の呟きに答えつつ、手元を覗き込んできた真桐先生。
そして、彼女は、
「……えっ!? え、え!!? ……ど、どうしてこれが混ざって……っ!?」
俺が眺めていた写真を確認し、真桐先生はわかりやすく動揺した。
その写真とは、呆れた表情の俺と、顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに俯く、真桐先生のツーショット写真だった。
おそらくこれは、千之丞さんが真桐先生に怒られた直後の様子だ。彼は俺たちの前から大人しく去ったと思っていたのだが、どうやら懲りずにこの写真を撮っていたのだろう。
娘に怒られたばかりの父親とは思えぬ厚かましさ。
千之丞さんのその図太いメンタルは、一体どこで購入できるのだろうか。
「ち、違うの友木くん、これは……」
目を回し、狼狽する真桐先生。
確かに、身内の恥をさらした後の様子を激写されたこの写真は恥ずかしいものだろう。
「そんなに、恥ずかしがらなくても良いじゃ無いっすか」
「そ、それは、つまり……?」
俺の言葉を聞いて、真桐先生は頬を朱色に染めたまま、真意を確かめる様に、恐る恐る俺の表情を伺う真桐先生。
「真桐先生に隙が多いことはもうわかってるんで、今更取り繕わないでも良いっすよ。教師としての真桐先生のことは、今もちゃんと尊敬してるんで」
「……は?」
俺の言葉を聞いた真桐先生は、かなり不満気に一言発した。
……え、今真桐先生の機嫌を損ねる要素あったか、と思いつつ発言を振り返ってみると、普通に失礼なことを言っていたかもしれない、と反省をする。
「……すんません、調子に乗っていました」
俺の言葉に、真桐先生はジロジロと俺を見てから、大きなため息を吐いた。
「そうね、先生を揶揄うのはやめなさい」
ツンとした態度で真桐先生は言う。
流石に、距離感を間違えたか、と反省している俺に、彼女は続けて言う。
「……そういうのは、勤務時間外だけで十分よ」
「うす、すみま……いや、真桐先生。それだと、時間外は生意気なことを言っても良いように聞こえるんすけど」
俺の言葉を聞いて、真桐先生はクスリと笑ってから立ち上がる。
そして、優しく微笑みながら、彼女は言う。
「ええ、その通りよ。醜態を見せすぎた友木君に、今更取り繕っても仕方ないでしょ?」
彼女のストレートなその言葉に、俺は咄嗟に何も答えることが出来ずに狼狽えていると、
「ふふ」と、真桐先生が笑い声をあげた。
「ごめんなさい、揶揄いすぎたみたいね。でも、これでおあいこよ?」
悪戯っぽく、彼女は言った。
「さて、それじゃあもうこの部屋も締めるわ。友木君も、そろそろ教室に入っておかないと、HRはもうすぐよ?」
いつもの真桐先生のように、凛とした表情で言った。
……どうやら、揶揄われてしまったらしい。
実はポンコツな真桐先生とは言え、彼女は立派な大人なのだから、俺のようなガキに今更何を言われても、分かりやすく動揺することはないのかもな、と思いつつ立ち上がり、彼女の後ろをついて歩いていると……気が付いた。
真桐先生の耳が、真っ赤に染まっている。
あの余裕のある大人っぽい態度は、ただの照れ隠しだったのだろう。
そう考えると、やっぱり、真桐先生は隙が多いな、と思う。
……そういうところも含めて、俺はきっと真桐先生のことを尊敬しているんだろうなと、手元の封筒から写真を覗き見ながら、そう考えるのだった。
ここまで読んでくれて、ありがとっ(≧◇≦)
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